日食当日

上海滞在3日目の7月22日、いよいよ皆既日食当日である。前日から雨の予報だったが、朝起きてみると以外にも空は明るい。雲はかかっているものの、どんよりというほどでもなく、うっすらと空が見えるところもある。運がよければ太陽も見えるなと思いながら機材をまとめてホテルを出て、予定した浜江大道に向かう。

どのくらいの人がそこに日食を見に来て場所を占拠するか予想がつかないが、まあ部分食の始まる1時間前くらいに行って、予定の場所が陣取れなかったら、その付近か、第二候補の場所に行くつもりだったが、行ってみると、まだ朝早いこともあってかなり閑散としていた。予定していた岸沿いのベンチの列の、予定していた場所からかなり離れたところに三脚を持った人がいたが、それ以外は特に装備を持って見に来ているというほどの人はいなく、私の予定していたまさにそのベンチの隣のベンチに、若い女性3人組がいて日食を見るのを待っているようだったが、私の予定のベンチは空いていたので、そこに荷物を降ろしてしばし待つ。もう少ししてから、結構気合の入ってそうな西洋人とその奥さんらしき2人組が、その向こう側に陣取った。

部分食開始の時間が近づくと三脚を立ててカメラをセットした。まだ欠けていない太陽が雲間から見えたときに、テレコン+フィルタでの撮影のためし撮りもした。しかし、薄く雲がかかっているためカメラを向けるのが難しい。カメラが本体のズームレンズだけのときは、広角にして目標を見つけてから徐々にズームしていけばいい。しかし、テレコンはそもそもズーム最大より更に望遠をとるためのものなので、本体のズームは最遠にするのを前提にできている。本体のズームを引くと、節穴からのぞいているような画面になってしまい、広い範囲が見えるようになるわけではない。そこで、太陽にカメラを向けるためには、天体望遠鏡で太陽を観測するときにも使うワザだが、地面にうつるレンズの鏡筒の影がちょうど正面になって円形に落ちるようにする。ビデオカメラの場合はカメラ本体の陰が邪魔になってそれほどきっちりとはいかないが、それでも影の形を見ればまあだいたいわかる。しかし、今回は薄曇りなので地面に影が見えない。目線を頼りになんとかカメラを向けるしかなかった。それでも、太陽がある程度の明るさで見えて入ればフィルタをかけても見えるが、雲が薄くかかって明るさが衰えてしまうと、フィルタを使うと暗くて見えなくなってしまう。かといって、フィルタをはずすと、例の絞りの故障のせいで明るすぎて画面が全部真っ白になって何もわからなくなる。まあ、仕方がないが、日食になってからできるだけ雲が切れてくれるのを願いながらカメラをセットしておく。

やがて、部分食開始の時刻となるが、やはり太陽は雲に隠れたまま。時々、雲の薄いところからぼんやりと顔を出す程度。できるだけ明るくなったところを見計らって、欠け始めた太陽の撮影を試みるが、なかなか太陽をうまく捉えることができない。結局、日食の間、テレコン付きのHV10の方では全く太陽を撮影することができなかった。もうひとつの三脚に、ワイコンはないもののズーム最広角にしてセットしていた、HC3の方は雲の切れ目が明るくなっている様子を高層ビル群とともに撮影していたが、微妙に雲がかかっているときにズームしてみると、雲がフィルタの役割を果たして、カメラにフィルタなしで、欠けた太陽の形状を撮影することができた。今回の中で太陽が撮影できたのはこの1回だけだった。最初からテレコンでの撮影をあきらめて、このようなチャンスばかりを狙っていればもう少し撮れたのかもしれないが。隣にいた女性たちが手持ちのデジカメで撮っていた方が、よっぽどよく撮れているようだった。太陽が明るく見えているときも、デジカメに日食メガネをかざして、そこそこに撮れていた。

しかし、時間が進むにつれ、雲は厚くなってきて、太陽がもっと深く欠けた状態はもはや見ることができなくなった。太陽が欠けているせいではなく、どんよりとした雨雲のせいで周りが暗くなってきた。皆既食10分くらい前になると、とうとう雨が降り出した。それもかなり強い雨だ。もちろん雲の隙間などもう望むべくもない。2つの三脚に載せたカメラも、雨ざらしにするわけにいかないので、HC3を三脚からはずして手持ちにして傘をさしながら撮影し、HV10の方はもう片付けてしまった。

いよいよ皆既日食が近づいて周りが暗くなりはじめると、目の前のAURORAビルの壁面のディスプレイが点灯した。本来、昼間には点灯しないものだと思うが、日食で暗くなるのにあわせてわざわざ点灯させたものと思われる。他のビルはもともと周りが明るくてわからなかった室内の明かりが目立って見えるようになって夜景らしくなってきた。

太陽は見えないが、皆既食になるとまわりはみるみるうちに暗くなっていき、ビルの明かりと、上空の雲の照り返しがあるので、もちろん真っ暗闇というわけにはいかないが、夜と同じになった。皆既日食では、頭上の空は真っ暗になっても、遠くの方はその場所では皆既日食になっていないせいもあって地平線のあたりだけ夕暮れのようにぼんやり明るく見えるものなのだが、今回は空が雲で覆われているため、遠くも暗くて、空全体が夜と同じに見えた。

雲のせいで太陽が見られなければ、単にまわりが暗くなるだけで、もちろん昼間に世間が急に暗くなるという現象自体は珍しいものだが、その瞬間だけ切り取って見たら、単に夜景と違いないのではないかと思ったが、よく考えてみると、先ほどのビル壁面のディスプレイと、恐らく暗くなると自動的に点灯する街灯を除いて、普段の夜景なら見られる色とりどりの照明が見られない。実に地味な夜景である。この日常の夜景との差異は、都会での皆既日食ならではだったと言えるかもしれない。

雨の降る中、5分間の夜が終わると、また空は急速に明るくなってきて、皆既日食終了である。もはや、空の状況からして戻っていく部分食も太陽が少しでも見られる様子はなさそうなので、雨足が弱まっている間をみはからって撤収である。自分も荷物もみんな雨でぬれてびっしょりであるが、仕方ないのでそのまま片付けてその場を後にすることにした。

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