ツーソン周辺 (ミサイル、サボテン、天文台)

6月15日。ツーソンには2連泊なので、この日は全部ツーソンから行って帰ってこられる範囲のところに行く。タイタンミサイル博物館、サワロ国立公園、キットピーク天文台の3ヶ所をめぐる。キットピーク天文台は夜の観望会を申し込んであるので、帰りは夜遅くになる。

まずはでかける前に朝食。ここだけは、モーテルではなくて立派なホテルなので、朝食も簡易朝食でなく、ちゃんとしたビュッフェ形式の朝食。といっても、たいしてものを取るわけでもないのだが。紅茶を頼んだら、こんなにたくさんの種類のティーバッグが箱に入って出てきた。

Breakfast Tea Bags

タイタンミサイル博物館

まずは、タイタンミサイル博物館 (Titan Missile Museum)。冷戦時代のICBM (Inter Continental Ballistic Missile: 大陸間弾道ミサイル) の地下サイロ式の発射施設がこの付近に多数配備されていたうちのひとつを保存して博物館にしてあるもの。ツーソンからは、I10から分岐しているI19を南下する。30 km余り行ったところにあるSahuaritaという街で、I19を降りてほどないところにある。敷地に入って駐車場に車を入れると、まずはHF帯用と思われる大きなディスコーンアンテナが目に入る。博物館の建物自体は倉庫のような質素なもの。そして、その脇には金網で囲まれたエリアがある。

Discone AntennaTitan Missile MuseumTitan Missile Museum

施設の見学は全てガイド付きのツアーになっている。1時間ツアーの代金$9.50を払う。実は、この日は割りとスケジュールに余裕があるので、朝それほど早く出発しなかったのだが。でかける前に博物館のwebサイトを見ていると、この1時間のツアーで見学できるコントロール室とミサイルサイロの地下2階フロア以外に、クルー居室と、ミサイルサイロの地下7階も見せてくれるツアーが、毎月第1、第3土曜の朝9:30からだけ実施されていて、偶然にもこの日がちょうどその日で、それも朝から行こうとはしていたのだが、もう間に合わなさそうだった。のんびり朝食をとってないでもう少し早く出かけることにしていたか、もっと前にwebを見て気がついていればよかったのだが。

ともあれ1時間ツアーに参加するのだが、出発までまだ時間がしばらくある。ところで、デイパックを背負って行っていたが、カメラとボトル入りの水はいいが、それ以外の荷物の持ち込みは禁止ということで、一旦車に置きに戻る。あとは、受付の前にある少しばかりの展示と土産物を見て過ごす。

展示エリアのど真ん中には、ミサイルの先端部が鎮座している。

Missile Head

展示を見ると、スタートレック・ネクスト・ジェネレーションのジョーディの写真が。これも事前調査不足だが、映画 “STAR TREK: FIRST CONTACT” に出てくるミサイルサイロのシーンは、ここで撮影されたということである。映画にでてきた場所を訪れるのが今回の旅行のテーマだったが、これは勘定に入っていなかった。うれしい予想外といえる。実は、ラピッドシティの近くに、ミニットマンミサイルの似たような博物館があって、そちらに行くことも検討していたが、こちらにしてよかった。

STAR TREK: FIRST CONTACT

暗号コードの保管されていた赤い金庫つきのキャビネット。

Red Safe

ミサイルに搭載されていた誘導装置の一部。

IMU

時間が来ると、参加者が全員集められて、まず教室のようなところに入って、説明のビデオを見せられる。その後、いよいよ施設の見学に行くのだが、身長5フィート何インチだか以上の人は安全のためにヘルメットをかぶるようにと指示される。狭いので背の高い人は頭をぶつけてしまう場所があるのだろう。自分は該当しないのでかぶらず。

Helmets

地下の施設には、建物の中から別のドアを通って入る前に見た金網で囲われた屋外のエリアに出て、そこにある階段を降りて入る。

Access PortalStairs

内部に入るところは分厚いドア (カンヌキの太さにも注目) が二重ドアになっている。

Doors

コントロールセンターに入ると、参加者の中から一人選ばれて、制御卓の前に座らされ、実際にミサイル発射のキーを回す役目を仰せつかる。警報音が鳴り響いて、ミサイル発射シーケンスのシミュレーションが行われる。

Control Center

映画で見たことのある、24時間式の時計。

Local Time

この時計は変な時間を差しているようだが、「Zタイム」すなわちグリニッジ標準時を示している。

Z Time

部屋の隅には巨大なコイル状のものがあるが、これは部屋全体をバネで浮かせて、ミサイルの発射の際の振動や、敵から攻撃を受けたときの振動を受けないようにするもの。

Big Spring

次に、ミサイルサイロの方に向かう。通路の脇には、こんな宇宙服のような防護服がぶらさがっている。タイタンII型ミサイルに使われている燃料は毒性の強いものだったために、こういうものが必要だったということだ。

Fueling Suits

そもそも、今回このミサイル博物館に行くことになるまで、こういったICBMに使われるロケットは、指令を受けたらすぐに発射できるために、全部固体燃料ロケットなのだと思っていた。通常の液体燃料ロケットではケロシンを使うものでも酸化剤には液体酸素、水素燃料のものでは液体水素と液体酸素が使われ、いずれも極低温に保つ必要があり、常時待機するわけにはいかない。ところが、このタイタンII型ミサイルでは、液体燃料ロケットで即応性を持たせるために、毒性には目をつぶって常温で取り扱える燃料を使うことによって、即時発射ができるようにしていた。

コントロールセンターのある部分とミサイルを発射するサイロそのものとは十分距離がとられていて、その間が通路でつながっている。通路の部分も全部ダンパーで保持されている。通路の端の部分はズレを吸収するように、ケーブルがたるませてある。

CablewayCable

ミサイルのところまで到達すると、ミサイルの側の壁のドアが開けてあってミサイルが見えている。

Titan II MissileTitan II Missile

上の方と、下の方。

Titan II MissileTitan II Missile

1時間ツアーでは、内部の見学はこれまで。もと来た階段に戻って地上に出る。ここでガイドツアーは解散で、後は金網に囲われたエリアの屋外施設や展示物を見る。

地上にあるアンテナ。根元のところを見るとフタがついているのがわかるが、敵から攻撃のあったときに壊れないように、地中に格納されるようになっている。

Pop-up Antennae

ミサイルを上から見たところ。見学できるように、上部ドアの半分は透明な窓に交換してある。

Titan II MissileTitan II Missile

危険状態を示す3色のランプと、サイレン。

Siren

サイロの周囲4辺に、侵入者検知装置が設置されている。今なら赤外線ビームを使うところだろうが、これはレーダー電波のアンテナ。少し形が変わっているが、ホーンリフレクタアンテナが使われている。これを各辺の両側で対向させて、その間に電波を飛ばしてその変動を感知するようになっている。

Radar Surveillance System

周囲には、他にも関連するもので大きなものが展示されている。まずは、先端部がもうひとつ。

Missile Head

1段目のエンジン (2連) と、2段目のエンジン。

Stage-1 Engine Stage-2 Engine

方向修正用の小型ロケットモーター。

Vernier Motor

各自適宜屋外見学を終えたら、また建物の中を通って、帰る。

ちなみに、ツーソンにあるデビスモンサン空軍基地 (Davis Monthan Air Force Base) の近くにあるピマ航空宇宙博物館 (Pima Air & Space Museum) はここと同じ団体が運営している。更に、デビスモンサン空軍基地には、俗称ボーンヤード (Boneyard) と呼ばれる Aerospace Maintenance and Regeneration Group という施設 (いわゆる飛行機の墓場) があって、数えきれないほど多くの使わなくなった航空機がぎっしり並べて置かれている。このボーンヤードも、スケジュールは限定されいるが、ピマ航空宇宙博物館から見学バスが出て見学できるらしい。私は、翌日ツーソンを離れる際に、その脇の道を走りながら、金網越しにだけ眺めた。

サワロ国立公園

ピマ航空宇宙博物館をじっくり見に行っているほどの時間はないが、キットピーク天文台は夜の観望会に申し込んであるので、夕方から行けばよく、その間のつなぎということで、サワロ国立公園 (Saguaro National Park) を見に行った。サワロ国立公園はツーソンの東側と西側に2つの別々のエリアがあるが、行ったのはミサイル博物館からツーソンに戻ってきて、ツーソンから南西方向にあるキットピークに向かう前に寄りやすい、西側のエリア。サワロ国立公園のサワロとは、アメリカやメキシコの砂漠地帯のサボテンといえば思い浮かぶハシラサボテンの一種のこと。

ミサイル博物館から、元来たI19を戻ってきて、ツーソン中心部に着く少し手前で、キットピークに向かうAZ86に入る。少しして、そのまままっすぐ行かずに北西方向に折れると、ツーソン山脈の裾野の地域に入る。すると道の両脇にはサワロサボテンがだんだん増えてくる。サワロ国立公園のエリアに入る手前の南側の地域は、Tucson Mountain Country Park となっている。その中に、まずはオールド・ツーソン・スタジオ (Old  Tucson Studios)  という、西部劇の撮影に使われたオープンセットをテーマパークにしたものがある。ここではあまり時間を費やすつもりがないので、とりあえず表まで行って入口の写真だけ撮ってきた。

Old Tucson Old Tucson

次に、アリゾナ・ソノラ砂漠博物館 (Arizona-Sonora Desert Museum) というのがあるが、こちらも入口だけ見てパス。

Arizona-Sonora Desert Museum

更に進むと、サワロ国立公園の領域に入るが、ここは特にゲートはない。少し進むとビジターセンターがあり、ここに立ち寄って入場料を払う。タダ見しようと思えばいくらでもできそうだ。入場料を払おうとすると、他に国立公園に行く予定はあるかと尋ねられた。えーっと、あと行くのはホワイトサンズ、と答える。国立公園共通パスがあって、たくさん回るにはお得なのだが、$80もするので、たくさんの国立公園を回るのでないとお得ではない。まあ、1年間有効なので、アメリカに住んでいるなら1年間であちらこちら行けばいいのだが。今回の旅行だけでは最初からイエローストーン、デビルズタワーと含めていたとしても、バラバラの方が得。ということで、単独の入場料$10を払う。

更に車を進めると、道路が未舗装路になっているループ状になった道があるのでそちらに入ってぐるっと回ることにする。その途中に、徒歩で行くトレイルがあるので車を停めて少し歩いてみる。

Saguaro National Park

車から見ていると大きなサワロサボテンが目に付くばかりだが、様々な種類のサボテン類が生えている。

Saguaro National ParkSaguaro National ParkSaguaro National ParkSaguaro National ParkSaguaro National ParkSaguaro National Park

やけにうるさい音がすると思ったらセミ。

Saguaro National Park

他にも色々。多くのサワロサボテンの先端部分が、花が咲いて散った跡のようになっている。もう少し早い時期に着ていれば、みんな鮮やかな色の花をつけていたのだろうか。

Saguaro National ParkSaguaro National ParkSaguaro National ParkIMG_6666

例によって、鳥の名前は不明。

Saguaro National Park

しかし、真昼間に来るのではなかった。どこにも日陰はないし、周囲は乾燥した地面だし、もう灼熱地獄である。他に人もあまりおらず、こんなところで倒れたりしたら助けてもらえないかもしれないので、トレイルを少し行ったところで、早々に引き返した。

もう少し行くと、今度は車のままループ道路から少し外れて少し眺めのいい場所に行けるところがある。眼下の斜面にサワロサボテンが林立しているのが壮観だ。遠くで竜巻が発生しているのが見える。

Tornado

ついでに今乗っている車の写真を撮っておく。車を借りたフェニックスはアリゾナ州なのにカリフォルニアナンバー。返却予定地がロサンゼルスだから、逆に向こうから来てアリゾナで乗り捨てになった車を割り当てたりするのだろうかと思ったりする。

PASSATPASSAT

この後、ループ道路をほぼ一周したところで、元の道には戻らず、まっすく南下する道を走ってAZ86に達し、キットピーク方向に向かう。

キットピーク天文台

国立公園の中では食事するところがなかったので、朝を食べてからここまで食事なしだった。キットピークに向かう道も何もないので、途中の店に寄ってスニッカーズ的なものを買って食べておく。

それから、夜の観望会は、事前に日本からネットで申し込んであったのだが、当日開催されるかどうかの確認の電話があることになっていたが、当然受けられないので、こちらから電話して確認しておく。

AZ86を走っていると、途中で検問所があった。こちらの走っている方向は特に何もなく、減速して通過するだけだったが、反対方向側は、全員止められてチェックを受けているようだった。こちら側方向も何もないわけではなく、道路脇に多数の小型カメラが設置してあって、こちらの車を狙っていた。

キットピークのあるクウィンラン山の麓まで来ると、AZ86から折れて山を登っていく道に入る。下からもう4m望遠鏡のドームや、太陽望遠鏡の構造物が見える。道が山に上がっていくと、山をぐるっと回り込むため、離れていたときは見えていなかった側のドーム群が見えてくる。

Kitt PeakKitt Peak

そして山頂にあるキットピーク天文台 (Kitt Peak National Observatory) に到着。

Kitt Peak National Observatory

この建物がビジターセンター。ビジターセンターにも専用の望遠鏡ドームが付設されている。

Visitor Center

観望会の集合時刻にはまだだいぶ早いが、もう結構午後遅い時間だからか、見学の人はほとんどおらず、中の売店も閉まっている。次の写真は他所の科学館的なところでも見かける、重力井戸を説明する募金箱。

Gravity Well

中の展示をひととおり眺めた後、観望会の集合時間までの間に、ビジターセンターから歩いて行ける範囲の望遠鏡ドームを眺めに行く。何か案内用のパンフレットとか地図とかがないかと思ったが、特に見当たらなかったので適当に行ってみる。

Warner & Swasey Observatory

Warner & Swasey Observatory

NOAO Public Outreach Telescope。平らな屋根がスライドする珍しい建物。

NOAO Public Outreach Telescope

0.9m SARA Telescope。

0.9m SARA Telescope

乾燥地域なので山火事が起きやすいらしい。トホノオーダム (Tohono O’odham) とは地元の先住民の部族の名前。

Fire Danger

そして、キットピーク天文台で最大のマイヨール4メートル望遠鏡。下から見上げているせいだけでなく、本当に地面からドームまでの高さがずいぶんあるのだが、これは、地面からの熱で空気が乱れるのをできるだけ避けるためという思想での設計だとのこと。

Mayall 4m Telescope

マイヨール望遠鏡の近くから眺めたソノラ砂漠。と、キットピークの他の望遠鏡群。マイヨール望遠鏡は敷地の一番端の方にあるので、ほぼ残り全体を見渡せる。

Sonoran DesertKitt Peak National Observatory

真下から見上げたドーム。

Mayall 4m Telescope

入口は開いていて勝手に中に入っても構わない感じなので入ってみると、案内図が壁にかかっていたりして。

Mayall 4m Telescope

中に入ってエレベータに乗って上に上がると、更に階段を登るようにという素っ気ない指示がある。

Mayall 4m Telescope

階段を登って上の階に行くと、また同じような指示が。アドベンチャーゲームでもやらされてるかのような。

Mayall 4m Telescope

まずは前半に書いてあるギャラリーに。外から見てもドームのすぐ下の部分に窓になっている部分が見えるのだが、建物を一周するギャラリーになっている。周囲の眺望を楽しめるし、内側の壁には色々展示してある。

Mayall 4m Telescope

一周してきてから、指示の後半にあったように更に階段を登ると、望遠鏡の見られるフロアに出る。「氷に注意」とは一体…?

Mayall 4m Telescope

望遠鏡を見学できるのは、このガラス張りになって仕切られた小さな部屋からのみ。ガラスに近づいて望遠鏡全体を眺める。

Mayall 4m TelescopeMayall 4m Telescope

ここまで、誰も係員とか案内とかもなく、他に見学者もおらず、まるでひとりで勝手に忍び込んで見ているようだったが、こんな施設がそんなふうに自由に見られるようになっているというのは驚きだ。しかも、こんなに大きな望遠鏡の実物を直接目にするのも初めてだ。たぶん、それまでに見たことのある一番大きなものは、石垣島の105cm望遠鏡「むりかぶし」のはずだ。昔ハワイ島のマウナケア山頂に行ったときは、すばる望遠鏡のドームは外から見たが、当時は中の見学はできなかったので見ていない。

この天文台で一番立派な望遠鏡は見学できたし、集合時間が近づいてくるので、ビジターセンターの方に戻る。日時計は、夏至が近いので球の影は目盛りの一番端の線上にある (少しはみ出ている)。

Sundial

さて、これからがいよいよ観望会。望遠鏡を見に行っている間にずいぶん人が集まっている。2~30人くらいか。土産物の売店も開いている。この時点ではまだ外は明るくて太陽もまだ沈んでいない。まず最初は食事。サンドイッチと果物とオレオとチョコレートバーみたいなものが入った箱と、水のPETボトルが配られて、皆、外のテーブルなどで適当に食べる。食事をしている最中に、すぐそばまで名前のわからない青い鳥が飛んできた。

Blue Bird

食事が終わると、私が先に見に行った望遠鏡ドームのうち、マイヨール望遠鏡ではなくビジターセンターに近いものの付近に行って、色々な説明を聞きながら日没を待つ。その間に撮ったVLBA (Very Long Baseline Array) の電波望遠鏡。VLBAは、この翌々日に行くVLA (Very Large Array) のようにひとところにアンテナを並べるのではなく、遠く離れた場所に設置された複数の電波望遠鏡を合成して巨大な電波望遠鏡とするものである。石垣島と小笠原で見学したのと同様のものだ。

VLBA

やがて太陽が地平線 (といっても少し山の高さが少しあるが) まで来て日没。全く雲に遮られない、きれいな日没だった。

Sunset

その後、太陽の沈んだ後の空の色の変化、向きによる色の違いなどの話を聞きながら、だんだん暗くなっていく。

Kitt Peak National Observatory

一旦、ビジターセンターの室内に戻り、星座早見盤とキーホルダー型の赤色LEDライトを渡される。星座早見盤は裏表で北天と南天とに別れた、日本ではあまりお目にかからないタイプのものだった。といっても、私自身子供の頃にそういうタイプを使った覚えがあるので、日本でも全くないというわけではないと思うが。売店で売っている星座早見盤も、そのタイプのものが多かった。しかし、後で他の天文台に行ったときにはそうでもなかったようなので、たまたまここだけそうなのかもしれない。ちなみに、この星座早見盤は観望会が終わったら返す。キーホルダー型のライトの方はおみやげに持ち帰っていい。キットピークの絵が入っていて、LEDライトの他に小さなコンパスがついていて、端の方はホイッスルになっているが、説明の人いわく、LEDライト以外は役に立たないと。(笑)

LED Light

そのうちに外がすっかり暗くなっているので、いよいよ皆で外に出て星を見る。この観望会の対象は一般の人なので、内容はそんなに難しい話はない。最初は肉眼での観察。まあ、ビッグディッパー (Big Dipper: 北斗七星) はあそこで、あれがポラリス (Polaris: 北極星) 的な話。で、こちらの青い星は? というと、スパイカ! あらっ? と思ったが、スピカ (Spica) は英語ではスパイカと発音するようだ。日本式の発音に慣れていると結構違和感がある。北斗七星の柄のところのミザール (Mizar) も、マイザー、と言っていた。望遠鏡を買ってまだしばらくの頃の記事に書いたことがあるが、英語の天文用語も慣れないとなかなか大変だ。そういえば、月の明暗境界線のことをterminatorと言うが、アメリカ人でも一般の人には天文用語としてのこの言葉はやはりそれほど馴染みがなく、シュワルツェネッガーの出てくる映画を思い浮かべる方が先のようだ。

星座早見盤と見比べながら、説明が黄道 (ecliptic) に沿って星座をたどっていき、てんびん座 (Libra)、さそり座 (Scorpius) と来ると、隣に立っていた親子が、さそり座が見当たらない様子だ。裏面に行かないといけないのがわからなかったので教えてあげた。アメリカは国土が広いので、星座早見盤に対応緯度範囲の違うものが用意されている。経度方向は場所に応じてタイムゾーンが違うから基本的には1時間以内の誤差に目をつむれば問題はないが、サマータイムのときはどうするのかとか、そういったところをあまり詳しく観察しなかったが、よく見ておけばよかった。アリゾナはサマータイムがないので、そのことを気にかけずに済んだわけだが。

日没からまだあまり時間の経たないうちなので、人工衛星が結構見えた。私の自宅からだとISSのような非常に明るいものしか見えないが、ここでは名の知らない小さな衛星がいくつも見えた。

肉眼の観察が終わると、次は双眼鏡が配られる。たぶん口径50 mmだったと思う、立派な双眼鏡だ。これで、双眼鏡で楽しめる二重星や、双眼鏡の視野で同時に見られる散開星団M6とM7、明るい球状星団のω星団などを案内してくれる。

そして、最後は望遠鏡での観望。望遠鏡はひとりずつしか見られないので時間がかかるので、3つのグループに分かれて、それぞれ違う望遠鏡のところに行く。私の入ったグループは結構離れたところにあるドームなので車に乗せてもらって移動。ドームの中の照明は目が暗順応したままになるように赤色。

Meade LX200 EMCMeade LX200 EMC

望遠鏡はMEADEの16インチ (40 cm) のLX200だった。石垣島の105 cmを見に行ったときは雨で実際に星は覗けなかったし、いくらか参加したことのある観望会などでは、せいぜい20 cm以下くらいしかお目にかかったことがないので、これだけ口径の大きい望遠鏡を覗くのは初めてである。見せてくれたものは、月、アルビレオ (二重星)、M13 (球状星団)、M57 (惑星状星雲)、M51 (子持ち銀河)。きれいに各種類の天体を取り揃えて見せてくれたという感じだ。自宅の望遠鏡では普段では写真に撮らないとわからないような星雲も眼視でよく見えるのに感動する。そして、一番最後まで出し惜しみしていたのが土星。くっきり、しっかり見える。像が全然揺らがないのに感心した。まるで写真を見ているようだった。実は、昼間マイヨール望遠鏡のドームに向かって歩いているときは、日除けのために被っていた帽子を飛ばされてしまったくらいの強風が吹いていて、こんなに風が強くては天体観測には不適じゃないかと思ったのだが、夜になると風はすっかり止んでいた。

これで観望会は終了。さすがにそこらへんのボランティアの無料の観望会とは違って、非常に内容が充実していたと感じた。立派な天文台のプログラムだからか、料金を取っているからか。

さて、帰りが問題である。皆が車のヘッドライトを点灯して山を下って行くと、光害となって本来の天文台の業務の観測の妨げになる。そこで、ヘッドライトは点灯せずに、スモールランプだけで下山する。これは、ハワイ島ですばる望遠鏡に行ったときも、ツアーの車が同じようにしていた。周囲が真っ暗だと、スモールの明かりで照らされているだけでも結構ものが見える。とはいえ、ヘッドライトを点灯せずに山道をみんながバラバラに下山すると危ないので、全員車に乗って準備ができたら、先導されて一斉につらなって下りる。車によっては、スモールだけにできない人は、ヘッドライトに覆いをつけてくれて、麓まで下りたらはずすようにする。私のレンタカーも、ぱっと見たところオフとオートとオンのポジションしかなく、よくわからなかったのでそうしてもらった。後でよく考えたら、ヘッドライトはオフのままでハザードランプのスイッチをオンにすればよかった。思い出してみるとハワイ島でもツアーの車は点滅していた。麓に下りてから見ると、ライトの覆いは使い古しの厚紙製の書類フォルダをテープで貼りつけたものだった。

そして、AZ86に戻って、ツーソンに向けて帰る。行きに通った検問所は帰りはしっかり止められて質問される (というか、全員もれなくチェックされている)。この後、旅行中には他でも何ヶ所か検問にあうが、最初の質問は必ず、USシチズンか? だ。パスボートをすぐに出せるところに持っていてよかった。連続して通るので、君も天文台で星を見てきたのか、とも。まあ、毎夜この質問が繰り返されているのだろう。

ホテルに到着するともう夜遅い。翌日はまた長距離走るので、なるべく遅くならないうちに寝る。

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