ISSの月面通過を望遠鏡で初撮影

これまで、ISSの月面通過ISSの日面通過を1回ずつ撮影したが、いずれもビデオカメラにテレコンバージョンレンズを付けての撮影だった。月面通過のときは機材の運搬と設営撤収の問題で、日面通過のときは自宅だったので運搬は問題ないが太陽フィルタの問題で望遠鏡は使えなかった。

今回、比較的近所で月面通過があって、電車で乗り換えなしで行った先の駅前で撮影できそうなこと、前回の様に撮影後大急ぎで撤収して終電に乗らなくてはならないわけではない時刻に見られること、で、電車移動で望遠鏡を運んで一眼レフの直焦点で撮影してみることにした。できればバックアップでビデオカメラのセットも持って行って同時に撮影したかったが、今回は望遠鏡の電車移動が初めてということで、あまり荷物を増やさないように望遠鏡と一眼レフだけにした。

望遠鏡の運搬等に関しては別記事にするとして、目的地に到着。平日夜の駅前の通路で望遠鏡を設営してスタンバイしているが、特に通行人は興味を持つような人もいなかった。幸運なことに月はきれいに見えていた (でないとISS通過も撮影できない) ので、興味がある人がいたらISS通過の撮影が終わったら月を見せてあげればいいかと思っていたが、全然誰も寄って来ることがなかった。

ISS月面通過撮影風景

それはともかく、つつがなく準備も終えて、試し撮り。普通に月を撮るときは、そんなに極端にはシャッター速度は短くしないので、ISOもそれほど上げないが、ISS撮影の場合はISSの動きを止めないといけないので、できるだけ短いシャッターを切る必要がある。ISOを常用の最大で3200にして、試し撮り。このくらいの月齢では1/500か1/1000で適正露出ぽいが、1/2000でもまあ少し暗いぐらいなので、ISSの動き優先で1/2000にセット。

また、ビデオの場合は少しぐらい長く回してもどうということはないので10秒以上手前から回していたが、静止画の連続撮影だと画像ファイルが膨大になってしまうので、通過予定時刻の前後合計5~6秒ぐらいのつもりでレリーズを押し続けることにする。連続撮影は、内蔵のバッファにおさまる間は機械的速度の許す限り高速に撮り続けられるのだが、RAWで撮るとデータ量が多いのですぐにバッファがいっぱいになってしまい、そこから後は低速になってしまう。通過時刻の1秒間くらいをピタリ狙い撃ちすればバッファの範囲でおさまるかもしれないが、通過が予報時刻とズレることもあるし、自分の押し時間がズレることもあるだろうから、先述のように余裕を持って撮る。すると、肝心なところで低速になってしまったりしたら困るので、RAWはあきらめてJPEGのみで撮影する。これだと、バッファに頼らなくても最高速でずっと撮り続けられる。ちなみにEOS 60Dの連写速度は1秒間に5.3コマ。ビデオで撮影した場合には、1秒60フィールド撮れているので、それに比べると相当さびしい感じがするが、その代わりに解像度の高い画像に期待である。

さて、時間が来ていよいよ本番。ただ、レリーズを時間の間押し続けるだけ。結果、少し出遅れたか、多少軌道の予報とのズレがあったのか、撮り始めて1秒くらいのところから3コマ分、ISSの姿が写っていた。月が欠けていることと、連続撮影速度を考えるとそんなところだろう。写っていた3コマを比較暗合成したのが下の写真。

ISSの月面通過ISSの月面通過 2014/10/03 19:45 Canon EOS 60D, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10) 直接焦点, ISO3200, 1/2000sec×3コマを比較暗合成

画面下中央少し右寄りから、左上に向かって進み、3つ目の機影は雲の海の暗い部分の端付近にかかっていて少し見づらい。今回の撮影場所は予報の中心線のきっちり真上というわけではなかったが、もう少し真ん中寄りを通過するつもりだったのだが、結果としては予想より中央からはずれている。機影のみかけの大きさは、前回の月面通過と日面通過で、ISSとの距離の違いによって結構違ったのがわかるが、今回は前回の月面通過のときとあまり違わないくらいの距離だったので、やはりあまり大きく写っていない。

更にもうひとつ、月が半月近いということは、太陽が真横方向にあるということで、太陽電池パネルはそちらに面積がめいっぱいになるような角度に動かされているはずである。従ってこちらからはバネルがあまり広がって見えない状態になっているのも、機影があまり大きく見えない要因のひとつである。

わかりやすいように真ん中のコマをdot-to-dotで拡大したのが下の写真だが、期待したほどにはくっきりと写っておらず少々残念だ。これならむしろドット数は少ないものの、太陽面通過のときのH字型に写っている形の方がISSぽく見える。もっとピントをきっちり合わせないといけないのだろうか。あるいはこの鏡筒ではこのくらいにしか写らないのか。クレーターなどを見てもこれだけ拡大してみるとかなり甘い画像になってしまっているが、月の画像として見る場合には枚数を撮ってRegistaxするといった方法をとることができるが、ISSの場合はそうはいかない。

ISS拡大

まあ、さほどくっきりしていないとはいえ、よく見ればおおまかな部分はわかる。左右両端のごにゃっとした部分が太陽電池パネルで、中央部分に太く見えるのは放熱パネルの部分だろう。中央から細く飛び出しているところが与圧モジュールの部分だろう。

今後は、この前の日面通過のときくらいの距離で、太陽電池パネルもこちらに向かって開いているようなときに望遠鏡で撮影してみたい。

  1. NexStar 5SEの運搬 | 世事不可强求
  2. ISSの日面通過を望遠鏡で初撮影 | 世事不可强求

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