国立天文台VERA石垣島観測局



石垣島には、到着した日に訪れた105cm光学反射望遠鏡のある天文台とは別に、国立天文台の日本各地に置かれた電波望遠鏡の集合体で構成される、VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry) というシステムの観測局として電波望遠鏡が一基設置されている。場所は、天文台とはまた別の場所で、市街地からは天文台より少し遠いところにある。こちらは電波望遠鏡なので夜でないと星が見られないということもないので、出発日の朝に空港に行く前の時間を利用して見に行くことにした。行くのは電波望遠鏡の本体の威容を眺めるためだから、昼間でないとよく見えないかと思ったら、夜はライトアップされていて、それはそれできれいなのだそうだが、結局時間の都合上、出発日の朝のうちにレンタカーを借りてトンボ帰りしてきた。

単に外からアンテナを眺められるだけだろうと思って行ったのだが、見学は自由にできます。中でパンフレットを用意してあります。と門のところに書いてある。ちなみにアンテナ施設を囲っている塀の門のところの両側には沖縄ならではのシーサーが乗っていた。

行ったときは、ちょうどアンテナが真上を向いた状態で、何も観測していない様子だった。ひととおり周りから写真を撮ったあと、アンテナの奥の方にある小さな建物におずおずと入ると、確かにパンフレットが置いてあったりポスターが貼ってあったりするが、中に入るとすぐ観測用の制御機器が置かれた部屋だった。中に人がふたりいて、ちょうど担当者が交代 (長期的な意味で) するところなので引継ぎをしているところだという。アンテナも調整中で真上を向いた状態になっていたということだ。特に決まった見学用のプログラムがあるわけではないようで、用意されたパンフレットを手渡されて、たまたまそこにいた人が色々と説明してくれた。一人対一人なので、話もこちらのレベルに合わせてくれる。

この電波望遠鏡は、VLBIのひとつをになうアンテナだということは知っていたが、さて、それで一体何を観測しているかというと、簡単に言うと、このシステムで銀河系にあるたくさんの星の位置をひとつひとつ精密に測定して、銀河系の立体地図をつくる作業をしているのだということは、恥ずかしながら行って説明を聞いて初めて知った。

備え付けの来客簿を見ると、見学者はまあ来るときはある程度来るが、毎日毎日来るというほどではなさそうだ。しかし、地元の高校生などを招待して、観測を体験してもらうようなことなども行われているそうだ。

たまたま調整中で観測をしていなかったたらだが、じゃあちょっとアンテナを動かしてあげましょうか、といって、コントロール用のパソコンの画面にコマンドを打ち込み、最後のエンターキーを押させてくれた。ちょうど観測室の方を向いてできるだけ水平に近い角度を向くようにセットして動かしたので、窓から大きなアンテナのディッシュがこちらを向くのが見えた。動いているところは、ビデオカメラは必要ないと思ってしまったまま置いてきてしまったなあと思ったが、考えてみればCX1の動画機能で撮っておけばよかった。真上を向いているときは結構離れているが、横を向くとディッシュがかなり自分に近づいて更に迫力がある。

横にしないとディッシュの内側が見えなかったのだが、そんなわけで動かしてもらえたので、2種類の状態が見られて幸運だった。ディッシュのフチのところを見ると、少し本体から離して電線が張ってあるが、これは避雷用のもの。ディッシュ中心の焦点部分にある受信部の丸い覆いの周りに、細かいギザギザの形状をしたものが一周しているが、これも何か電気的なものかと思ったら、こちらはよく考えてると見たことがあるものと同じ形状をしている通り、鳥除けだとのこと。鳥が巣をつくって糞をしたりすると、腐食の原因になるので、近寄らないように設置されているそうだ。

ちなみにこのアンテナは三菱電機製。この手のものは昔は富士山レーダーにはじまって、野辺山の電波望遠鏡や、ハワイのすばる望遠鏡など、みんな三菱の独壇場らしい。

眺めて帰ってくるだけのつもりが、色々と話を聞いたので、予定よりずいぶん時間を費やしてしまった。それから帰ってレンタカーを返して空港に送ってもらわないといけないのだが、時間に余裕をみておいてよかった。お礼を言って観測室を出た後、向きの変わった後のアンテナの写真をまたひととおり撮って、帰途についた。