2018年7月 のアーカイブ

Celestron EdgeHD800ファーストライト

前の記事に書いたような経緯で、7月11日にまず鏡筒とTアダプタが届き、7月13日に少し晴れ間が出て火星が見えたので、AVX赤道儀を組み立ててEdgeHD800を載せ、ファーストライト。しかし晴れ間が続かず、眼視の後ASI290MCで撮影しようと準備していると曇ってきて見えなくなってしまった。下の写真はせっかく準備したのに火星が写っていないの図。

EdgeHD 800 + Advanced VX

7月16日に再度火星が見えて、今度は急いで撮影の準備をして、無事撮影できた。下は鏡筒の先の空に見える火星と、モニタ画面に写っている火星の図。

EdgeHD 800 + Advanced VX w/ Mars

しかし、この日はあまりうまい撮れ具合ではなかったので、記事のタイトルはファーストライトとなっているが、ここに載せるのはその次に撮影できた7月19日のものにしておく。

Mars
Mars 2018/07/19 22:54 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed.  Duration=180s, Shutter=15ms, Gain=320 (53%), 50% of 4,783frames

火星はかねてからの砂嵐で眼視ではほんのかすかにしか模様がわからない程度だが、多少砂嵐が晴れてきたのか、機材がよくなったせいか、画像処理後の画像はそこそこ模様が細かいところまでわかるようになった。砂嵐はもっときれいに晴れてほしいところだが、これで大接近が撮影できるようになって以前に比べるとかなり進歩した。

掲載している画像は、互いに比べたりできるように、基本的には同じ条件で撮ったものは同じ大きさにトリミングするようにしているが、望遠鏡の焦点距離が長くなったために、撮影される画像も大きくなったので、トリミングするサイズも大きくしたが、そのままdot-to-dotのサイズで載せるとちょっと大きすぎてアラも目立つので、文中の画像では半分に縮小したものにした。

長い間、NexStar 5SE + EOS 60Dで撮っていてその間はずっと変わらなかったのだが、ここ最近になって、カメラがASI290MCに変わり、ADCを挿入してバローの拡大率が変わり、鏡筒が変わり、で画像の大きさがバラバラになってしまった。ちょうど火星の大接近で近づいてきながら見かけの大きさが変化する様子を比較する、みたいなことがやりにくくなってしまった (それぞれ正しい倍率で変換すればいいのだが)。機材の変遷を見てみると、

  • NexStar 5SE + 8-24mm Zoom Eyepiece (8mm) + EOS 60D
  • NexStar 5SE + 3x Barlow + ASI290MC
  • NexStar 5SE + 3x Barlow + UV/IR cut filter + ASI290MC
  • NexStar 5SE + 3x Barlow + ADC + UV/IR cut filter + ASI290MC
  • EdgeHD 800 + 3x Barlow + ADC + UV/IR cut filter + ASI290MC

今後、火星が離れて小さくなっていく間は、機材の構成は変えないようにして大きさの比較ができるようにするか。

ファーストライトはいきなりの惑星の拡大撮影をしたが、セカンド撮影のこの日は実は惑星の撮影の前に、直焦点の撮影もしてみた。焦点距離1,250mmのNexStar 5SEではAPS-Cサイズのカメラで月 (や太陽) がちょうど画面いっぱいに少し余裕を持っておさまるので具合がよかったのだが、今度のは2,032mmもあるので、APS-Cサイズのカメラでは思いっきりはみ出てしまう。たまたま半月少し前だったので、縦位置にするとぴったりおさまるという結果になった。

Moon
Moon 2018/07/19 20:18 Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10) prime focus, ISO400, 1/30sec, Photoshop CC

ここで、セット価格で安く購入できた0.7xレデューサの登場。遅れて納品と言われていたレデューサも、この時点で既に届いていた。これでNexStar 5SEに比べて1.6倍になった焦点距離を0.7倍にして、合計で元の1.12倍となって、これまでとあまり変わらなくなる。今度は横位置で撮っても大丈夫だ。いつもは月の画像はそこから一辺が元の短辺より少し短い正方形にセンタリングしながらトリミングしていたが、こちらは余裕がほとんどなく、特にスーパームーンなど月が大きく見えているときは、ほとんどトリミングする余地がないか、もしかしたらはみ出てしまうかもしれない。ここではトリミングせずにそのまま載せておく。

Moon
Moon 2018/07/19 20:31 Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), 0.7x Reducer Lens, prime focus, ISO400, 1/60sec, Photoshop CC

せっかくしっかりした赤道儀に載せるようになったのだから、月・惑星だけでなく、長時間露光が必要な天体の撮影も試したいところで、まあ追い追いやっていこう。

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Celestron EdgeHD800 購入

EdgeHD800

やっと話の順番が回ってきたが、新しい鏡筒、Celestron EdgeH800を購入した。これは今から2週間ほど前の話。

まず話は戻るが、AVX赤道儀が届いてからは、とりあえずNexStar 5SEのC5鏡筒を外して載せて試しに使っていたが、春先の天候の悪い時期でなかなか使う機会も少なく、月や惑星を見るだけならわざわざ赤道儀に載せないでNexStar SE架台のままでいいので、それほど稼働していなかった。

梅雨が早めに開けると、今年はちょうど惑星のシーズンとなり、少し前の記事に書いた通り、昨夏に買ってあったASI290MCが稼働しはじめた。ここではまだNexStar 5SEで経緯台自動追尾で使っている。しかし、これまでEOS 60DとCelestronズームアイピース使用の拡大撮影で撮っていたよりも少しいい画像が撮れるようになって、これで鏡筒がいいものならもっとよく撮れるのになぁと思うようになってきた。だんだん火星大接近の時期も近づき、ぜひそれまでに手に入れたかった。

実は、もちろんAVX赤道儀購入時には先々大きな鏡筒を買って載せるつもりでいたし、次に買うとしたら値段的にも大きさ的にもこの鏡筒のつもりでいた。もし赤道儀とセットで安く売っていれば一緒に購入したのだが、通常価格では赤道儀とのセット品は、単純に別々に買った場合の合計と同じ値段だったので、まずはキャッシュバックキャンペーンで赤道儀だけ買って、鏡筒はまた別のセールのときに買おうかと思っていた。買うならトラブルがあったときの相談に直接店舗にも行けるしセレストロンの代理店のシュミットでと思っていたが、EdgeHD800はAVXの場合と同じように品切れ状態で、こちらの方が長く品切れ状態が続いていた。そんなわけでセールがあっても対象品にならない。入荷連絡メールの登録もしていたが、一向に連絡はこないという状態が続いていた (現在も在庫切れのまま)。

さて、それでも入手できないかと、USのAmazonから直接買ったらどうかとか思ったが、送料を勘定に入れるとむしろ高くなってしまいそう、などと調べているうちに、KYOEIにEdgeHD800鏡筒に専用レデューサとTアダプタのセットで、どういうわけか鏡筒のみの値段より更に安い値段が出ていた。写真を撮るのにどのみちTアダプタは絶対必要なので買うはずだったし、レデューサは単品では結構な値段がするので、鏡筒を買ったとしてどうしたものかとは思っていたが、これ込みで鏡筒のみの価格より安くなるのだから、これはとてもお買い得。ただし、この時点で7月の頭だったが、7月中旬入荷予定となっていた。

更に探していると、名古屋のショップ、スコーピオでも同様のセットが同じ価格で出ていた。こちらは入荷予定とはなっていなくて、即注文できそうだった。それで、意を決してこちらで注文。注文してみると、帰ってきたメールの返事で、鏡筒はすぐに納品できるがレデューサのみ遅れて納品となるという。まずは惑星撮影に使えればいいので全然問題ない。

ここまでの経緯を長々と書いてしまったので、使用感などはまた後の記事で。

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Celestron CG-5/AVX/CGEM極軸望遠鏡

極軸望遠鏡

AVX赤道儀が届く前に、PowerTank Lithiumと一緒に注文したものがもうひとつ。AVX赤道儀用の極軸望遠鏡。セレストロンの他の赤道儀CG-5やCGEMとも共通らしい。AVXには自動導入の機能の中にポーラーアライメントといって、極軸望遠鏡を使わずに極軸の向きを合わせる機能があって、北極星の見えない南向きのベランダででも極軸を合わせられるのだが、そうはいっても北極星の見える場所では極軸望遠鏡で極軸を合わせられた方がいいだろうと、あまり値段が高くないこともあり、購入しておいた。

極軸望遠鏡の取り付け(1)

極軸望遠鏡を取り付けるには、まず北極側のフタを外す。このフタはプラスチックの弾力ではまっているだけで、押さえる力が弱くてすぐに外れてしまうのでなくさないように気をつけないと。

極軸望遠鏡の取り付け(2)

中を赤緯軸が貫通しているので、赤緯軸の向きによっては穴がふさがっている。赤緯軸を回転させて赤緯軸にあいている穴が極軸を通して見えるようにする。

極軸望遠鏡の取り付け(3)

次にお尻側。

極軸望遠鏡の取り付け(4)

こちらのキャップはネジ込み式になっているのを外す。

極軸望遠鏡の取り付け(5)

中にある取り付け口に極軸望遠鏡をネジ込む。

極軸望遠鏡の取り付け(6)

完成。

装着したままキャップは閉められるので、使用のたびに付け外しする必要はない。

北極側から覗いてみると、極軸望遠鏡のレチクルが裏返しに見える。

極軸望遠鏡の取り付け(7)

正しい方向から覗くと、レチクルの図柄はこんなもの。

極軸望遠鏡レチクル

北斗七星とカシオペヤが描かれているが、極軸望遠鏡の視野にこれらの星座が見えるわけではなく、北極星位置パターンの回転方向を合わせる目安として、これらの星座の見えている向きに合わせるというために描かれているもの。ポラリエに買った初代の極軸望遠鏡などでは、日付と時刻の目盛がついていて、星座早見盤のようにして合わせてその正しい向きにセットするようになっているが、これにはそういう目盛板がついていない。そのへんが値段が安いわけか。まあ、だいたいでしか向きが合わせられないが、まあその程度の精度ということか。レチクルには北極星の位置の歳差運動目盛もないし。ちみなに、南半球では、はちぶんぎ座のパターンを見たとおりの向きにして合わせる。

で、パターンを回転させてみようと思ったら、これが動かない。望遠鏡は赤道儀にしっかりネジ込んだらレチクルのパターンは極軸望遠鏡に固定されていて動かない。赤道儀は固定したままパターンだけ回転させられるようになっているものだと思ったが、そういう機構がついていない。パターンを回転させるには赤道儀の赤経軸ごと回転させないといけない。ということは、季節によっては望遠鏡を載せる側が下に来てしまうこともあるので、望遠鏡を載せたまま極軸合わせができないということになる。

極軸を合わせた後に望遠鏡を載せたのではまた向きが多少狂ってしまうこともあると思うが、まあそこまでは考えていないということか。ポーラーアライメントがあるので、そちらでもっと追い込めばいいのか。最初からポーラーアライメントを使えば、やはりそもそも極軸望遠鏡はあまり必要なかったか。

最後についでに書いておくと、ピント合わせは、接眼部を回転させるとレチクルパターンの見え方のピント。奥の方のロックリングを緩めて筒を回転させると、星の見え方のピント合わせ、となっているようだ。また、軸のセンターを合わせるために、周囲に120°間隔で3つのイモネジがついている。視野照明がないので、暗いところではレチクルのパターンが見えないので、北極星側の口からライトで軽く照らさないといけない。

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Celestron PowerTank Lithium

PowerTank Lithium

赤道儀購入にあたって、赤道儀本体だけ買っても動かせない。NexStarは内蔵の乾電池(充電池)で動いたが、普通の赤道儀は外部に電源をつながないといけない。少し前までならポータブルの鉛バッテリーなんかが使われていたようだが、最近はリチウムバッテリーの小型で軽いものが出てきている。いずれ、同時に他にも色々な機器を使うのにも供給したりするなら容量の十分なもので、このあたりなんかがいいのではないかと思っていた。

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が、最近CelestronからPowerTankのシリーズにリチウムバッテリーのすごく小型のものが発売になっていて、少々お値段は張るがなかなかいい感じなので、まずは自宅でちょこちょこ使う分には容量がそんなになくても小型で手軽なのがいいだろうと思って、これを購入した。

Celestron PowerTank Lithium

品切れ中だったので予約注文した赤道儀の入荷が確定した連絡が来た時点で注文して、こちらが先に届いた。

容量的には、86.4Whということで、旧来のPowerTankシリーズの小さい方とほぼ同じ容量。

リチウムバッテリーといっても、どうも一般に使われているリチウム2次電池とは組成の違うものらしい。LiFePO4と書かれていて、リン酸鉄リチウムイオン電池ということだが、あまり詳しくないのでよくわからない。

見た目がちょっとバッテリーとは思えない形状で、大きさ的にはスポーツドリンクの粉末を溶かして入れるスクイーズボトルよりも一回り小さいくらいの感じか。ベルクロのついたベルトで三脚の足に抱きつかせておくことができるので邪魔にならない。家でベランダなどで使ってまた部屋にしまうだけのときは、赤道儀のハンドコントローラのホルダともども、三脚の足に取り付けたままで足を畳んで片付けても邪魔にならないので、余計な荷物をひとつ余分に運ぶ手間が省けてうれしい。

側面には、面状に並べた、明るさの段階の調節ができる赤、白のLEDライトもついている。USB電源も1Aと2.1Aの口がひとつずつついている。12Vのコネタクは赤道儀の本体側のコネクタと同じものがついていて、大きなシガープラグを挿さなくていい。

操作ボタン、インジケータ、USBコネクタは上部の軟質プラスチックの蓋を開けた中に入っているが、12Vのコネクタだけ上部側面に真横から挿すようになっている。

この記事を書こうと思って少し検索していたら、日本ではまだ輸入販売されていないようだが、PowerTank Lithium Proという、似た形状で容量がほぼ倍のものも発売されているようだ。ふたつつなげてひとつにしました、という感じ。こちらは車用のシガープラグも挿さるようだ。

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Celestron Advanced VX 赤道儀購入

このところ、主に惑星撮影に使うUSB接続のCMOSカメラASI290MCと、それ用の最近購入したアクセサリー類の話題を続けてきたが、ASI290MCそのものと同様に、しばらく前に購入していながらこのblogで紹介していなかったのが、CelestronのAdvanced VX赤道儀。赤道儀を自分で所有するのは人生初である。

ずっとNexStar SEの自動導入経緯台を使っていたが、やはりゆくゆくは赤道儀が欲しいとは思っていたものの、NexStarでもまがりなりながらそこそこのことは色々できるし、なかなか購入に踏み切るには至らなかった。

きっかけは今年の1月の皆既月食で、そのときの記事に書いたように、月が天頂近くに来たときに追尾がうまくできなくなった。やはりここは限界があるなと思って、赤道儀購入に動き始めた。

機種の選定はあまり悩まず、以前から買うとしたらこのAdvanced VXだろうと思っていた。もっと高価なものはとても手が出ないし、かといってこれより下のクラスではせっかく赤道儀を買うのに少々心許ないところもある。コストパフォーマンスでいえば抜群だろう。コントローラの操作は同じセレストロンなので基本的な同じなのもいい。発売になってからもう5年以上になるし、去年に上位機種が揃ってモデルチェンジしたこともあって、こちらもそろそろモデルチェンジするのならそれを待とうかとも思ったが、結局まだ同じモデルのままだ。

もともとどうせ買うなら、何かセールで安くなっているときと思っていたが、ちょうどシュミットの赤道儀1万円キャッシュバックキャンペーンが行われていた。ところが、対象製品のうちAdvanced VXは品切れとなっていた。それでも、期間中に注文してもらえばキャンペーン対象とするというので、期間終了ギリギリに注文した。キャンペーンは普通に購入したあと、自分で申請を出してキャッシュバックをもらうものだが、実際にモノが入荷して届いたのは、その受付期間が終了してしまった後の3月末だった。応募要項には「※1日でも過ぎた消印では無効となります。」などと書かれていたが、期間中に注文したら対象になると聞いたから注文したわけで、強気で申し込んだら、ちゃんとキャッシュバックが届いた。郵便為替か何かで届くのかと思ったら、本当に現金書留でキャッシュが届いた。

Tripod Legs: AVX & NexStar SE

さて、現物が自宅に届いて梱包から取り出して最初に感じたのは、三脚が太いこと。デザイン的には、NexStar SEの三脚と似た感じだし、NexStarの三脚も十分しっかりしているので、同じようなものかと思っていた。Advanced VXの実物も店頭で見たことはあったが、わざわざ比べてみないとそんなに太いという感じはしていなかったのだが、自分の部屋の中でNexStarと比べてみるとずいぶん違う。測ってみると、NexStarの三脚が直径38mmなのに対して、AVXは50.5mmあった。また、三脚の開きの角度が広めでより安定感がある感じだ。伸縮部を締めるネジのツマミが、NexStarは内側にあるのに対し、AVXは外側にある。この方が三脚を閉じたときにツマミ同士がぶつかってネジが歪んでしまう心配をしなくていい。そのかわり、外のものにぶつける可能性は高いのかもしれないが。

赤道儀取り付けネジアイピースホルダー

赤道儀の取り付けは、一般的な赤道儀同様、三脚の上に赤道儀本体を載せて真下からネジで締め付けるのだが、NexStarの三脚と同様に三脚の開き固定板兼アイピースホルダを取り付けるための棒が、その赤道儀の取り付け用のネジから更に下に伸びている。赤道儀を取り付けないとこの固定版を固定できないわけで、三脚の開きが固定されないまま赤道儀を載せるという手順になって、ちょっと妙な感じだ。この固定版はNexStarのものと全く同じで、NexStarの簡易赤道儀モードのための傾き支持棒を通すための溝もついたままだ。NexStarではこの板と押さえネジの間に太いスプリングが入っているが、こちらにはないのは何の違いだろうか。

ツノ

三脚の頂部についている、極軸の方位の微動のための突起。最近、某所で某メーカーのもののこの部分が簡単に壊れてしまうと話題になっていた。一般的には三脚の足の出てる方についといるのかと思うが、これは足と足の間の方向についている。逆に、足の方向の方にもネジ穴はあいていて、そちらが好みなら取り付け替えられるとマニュアルに書いてある。更に、サイズの違う赤道儀に対応するためか、少し内側にもやはり足の方向と足の間の方向に穴が開いているが、こちらはネジが切られていない。この突起は某話題のものと違い、円柱ではなく角柱になっていて、根元でロックナットでしっかり固定するようになっている。

極軸方位微動ツマミ極軸方位微動ツマミ

その突起を両側から挟んで極軸の方位の微動をするためのツマミ。他のツマミもそうだが、握るところが結構長いデザインになっているので、本体から左右にずいぶん飛び出る。収納時には邪魔になるので、このツマミは全部抜き取ってしまわないといけないが、そのためにはずいぶんネジを回す必要があるのでちょっとわずらわしい。

極軸仰角微動ネジ

極軸の仰角を調節するネジも、こちらは重さを支える必要があることもあってネジが太く、つまみはもっと大きい。こちらも特に南側のものは非常に飛び出しているが、これを全部ネジを回転させて抜き去るのはとても面倒なので、赤道儀の厚み方向に飛び出ているわけではないので、こちらは収納時もそのままにしておく。

赤緯モーター用ケーブル

赤道儀の主要部分から赤緯モーターへの接続が、わざわざモジュラージャックになっていて、短いカールケーブルでつなぐようになっている。これはつけっぱなしにしていていいのか、いちいち取り外した方がいいのか。

ハンドコントローラ パソコン接続端子

ハンドコントローラはNexStar SEのものと全く同じ “NexStar+” のように見えるが、パソコンとの接続端子がRS-232CではなくUSBになった新しいタイプ。実は、最近のNexStar SEもこのタイプのコントローラになっているというのは聞いて知っていたのであまり驚かなかった。写真は、左がAVX、右がNexStar SEのもの。パソコンと接続するのに、シリアルUSBアダプターを使わず、USBケーブル1本で接続できる。

コントローラホルダ

コントローラを使わないときは、NexStarの場合は架台のフォークの背中にはめ込むところがあって、そこにセットしておくのだが (なかなか扱いにくい)、そういう場所のない普通の赤道儀のためにはこんなホルダーがついている。プラスチックの弾性で三脚の足にはさみ込んで使うのだが、足をはさむ部分のプラスチックはずいぶん厚くて固く、はめ込むときに割れてしまうんじゃないかと思うくらいの力を入れないとはめられない。毎度毎度付けたり外したりしていると本当のすぐに壊してしまいそうなので、とりあえず家の中で保管している分には、取り付けたままで三脚を畳んで置いておくことにした。

ウェイト

バランスウェイトは5kgのものが1つついてくる。取り付け用のネジのツマミは大きくてしっかり力を入れて締められていい。その部分が少し平らにしてあるのと同様にちょうどその反対側も平らにしてあって、転がらずに縦に床に置けるので便利。軸を通す穴を中心に円形の窪みも、単なるデザインではなく、手に持つときに窪みに指をかけて持ちやすくなっていて、とてもいい。

Advanced VXAdvanced VX

しかし、NexStar 5SEに載っているC5の鏡筒をこのAVXに載せてバランスを取ろうとすると、ウェイトの取り付け位置をめいっぱい赤道儀側の赤経モーターのカバーに当たるギリギリまで寄せても鏡筒の方が軽くて、バランスが取り切れない。この鏡筒で正確にバランスを取るにはもう少し軽いウェイトが必要なようだ。まあ、カメラを加えればちょうどいいくらいかもしれない。カメラを付けた場合に鏡筒の前後のバランスが取れなくなるのは、鏡筒のレールの端の位置の問題なので、NexStarの架台の場合とあまり事情は変わらない。

もう少し重い鏡筒を載せたときに、写真より少し離れたところにウェイトを取り付けると、極軸の仰角調整用のツマミにウェイトが当たってしまうようでよろしくない (設置する緯度による)。もっと径の細いウェイトを使うか、軽いウェイトを離れた位置に取り付けないといけなさそうだ。それよりもっと重い鏡筒ならこのウェイトでバランスの取れる範囲までは大丈夫だ。

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プラレアリウム巡り ― 達成報告

プラレアリウム33箇所巡りは、33箇所目の記事の最後に書いた通り、明石市天文科学館に33箇所達成の報告をしに行かないといけない。ただ報告のためだけに明石まで足を運ばないといけない。しかも、後に書く通し番号のこともあるので行く時期を見計らわなければならないのだが、大阪の星カフェSPICAさんの7周年の記念パーティーが7月15日にあるというので、それに合わせて行くことにした。予定を決めてからわかったのだが、ちょうど夏休み前の海の日の連休でもあることからか、プラネタリウムの番組はシゴセンジャーが設定されていた。明石には何度か行っているが今までシゴセンジャーの本物を見たことはなかったので、これもちょうどいい。

朝イチで明石に到着して、すぐに時間なので第1回の通常投影を見て、2回めがシゴセンジャーだが、第1回を終了して外に出たらもうたくさんシゴセンジャー回の投影のために行列ができているのでそのまま並んで、シゴセンジャーを見る。その終了後、やっと時間ができて1階の受付で達成の報告。これまで、11館目、22館目でも報告していてそこまでの達成のバッジはもらっているので、今回は23館目から33館目の分のリストとかかった費用などを記載した報告書を提出。33館達成のバッジをもらう。達成証は後で郵送されるとのこと。バッジにはそれぞれ最初のうちだけ通し番号が振られていて、11館バッジはNo,11まで、22館バッジはNo,22まで、33館バッジはNo,33までとのこと。私がこれまでもらったバッジは、11館のものはNo,なし。22館は結構ぎりぎりでNo,21だった。33館バッジは既にNo,30が発行されていることはわかっていたので、またぎりぎりの番号のものがもらえるか、既に過ぎて番号なしになっているか。できたらちょうど最後のNo,33が欲しいところだったが、もらえたのはひとつ前のNo,32だった。まあ、22館のときも最後からひとつ前のものだったから、それでいいか。

プラレアリウムバッジ

後で聞いた話で、この日のうちにNo,33の達成報告者が現れたとのこと。微妙な時間差だったようだ。

この後、夕方からのSPICAのパーティーまでは時間があるので、たまたまシゴセンジャーの回に来ていて一緒になった知人と、湯浅光則という人の星景写真展を見に行き、その後SPICAへ。そちらでも、また関西の知人に会い、関西以外からSPICAパーティーに来た知人に会い、新しく幾名かの方々と知り合いになった。楽しいプラレア報告の旅であった。

プラレアリウム巡りはまだこれでは終わらず、9月1日にイベントが予定されているので、また行かなければならない。

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ASI290MCで惑星撮影 (その6) ― ADC(大気分散補正プリズム)

ASI290MCでの撮影のオプション機材追加の話題はまだ続く。今回は以前の記事でも少し触れたADC (Atmospheric Dispersion Corrector: 可変式大気色分散補正ウエッジプリズム)。地上から惑星撮影のように天体を極端に高い倍率で拡大して見ると、大気層を光が斜めに通ってくる際に屈折してその屈折率が波長によって異なるために、惑星の像が色によって位置がズレて見えてしまうのがわかる。特に高度が低いときに顕著になるが、今の時期木星、土星、火星はいずれも黄道が赤道よりも南側にある領域にあって、南中したとしてもあまり高度が高くならないので、この色のズレが大きいということになる。

RegistaxにもAutoStakkert!にもパソコン上でRGBの3原色のデータになったものの互いの位置のズレを推測して補正する機能があるので、これで画像上の見た目の色ズレ感はほぼ解消できるが、RならRとして記録されている波長の範囲内で短いものと長いものではやはり違う位置に像を結んでいるわけでその分だけ画像データ的には同じ色でもボケた画像になってしまっているはずである。

ADCは大気によるわずかな屈折角のズレを元に戻す程度の非常に角度の浅いプリズムを2枚重ねてつくってあり、それらをの重ね合わせる向きを互いに回転させることによって、合成したプリズムの角度を可変できるようにしたものである。これで波長に対して連続的に補正ができるのでほぼすべての波長で元の位置が同じものは同じ位置に見えるようにできるはずということになる。

惑星撮影の標準装備として、長焦点望遠鏡、バローレンズ、ADC、惑星撮影用カメラ、というのが一般的な構成なのだが、上記のソフトウェアの機能によって、ADCはなくてもまあなんとかごまかせるし、こまかし切れないボケが気になるほど鮮明な画像が撮れるほどでもないだろうということで、まず最初にカメラとバローレンズを購入したときには購入しなかった。しかし、やはり実際に撮影を始めてみると、EOS 60Dで撮っていたものよりは結構よく撮れるし、いずれ鏡筒もいいものにグレードアップしたときにはきっと必要になってくるということも見越して購入したくなってきた。

手頃な価格で、性能も特に問題なく、定番になっているのがやはりZWO社のものだったが、今年の頭くらいにだったか、これまでは水準器がついていなかったのが、水準器がついたバージョンにモデルチェンジした。これはカメラと一緒に買っていなくてかえってよかったのかもしれない。ところが、いざ購入しようと思ったら、火星大接近が近づいてきたせいか、どこの販売店でも品切れとなっていた。惑星撮影用品の扱いでは老舗なエリクトリックシープや、馴染みのある販売店で比較的最近扱いだして自分がカメラを購入したKYOEIなどがみなまだ7月入荷予定という火星大接近にぎりぎりどうなのという入荷予定になっている中、ある日、スターベース東京の通販サイトの表示が「在庫なし」でなくなっているのを見つけて、急いで注文した (今日現在また在庫なしになっている)。

ADCを実際に使う状態が下の写真。これを望遠鏡のアイピースを挿すところに挿す。色々接続するとどんどん長くなってしまう。

Camera, ADC, Barlow Lens

さて、急いで入手したものの、しばらくお天気が悪くて1週間ほど待ったが、火星が見えた日に、シーイングはそれほどよくなかったし相変わらず火星表面の砂嵐はおさまっていないようだが、ADCありなしの比較撮影をしてみたが、どうも結果にびっくり。まずは写真を。最初がADCなしで、後がADCあり。

Mars w/o ADC
Mars 2018/07/09 23:05 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), X-CelLX 3x Barlow Lens, AutoStakkert!3, Registax6, Trimmed. Duration=180s, Shutter=15ms, Gain=237 (39%), 10% of 11,706frames

Mars w/ ADC
Mars 2018/07/09 23:23 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), X-CelLX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, AutoStakkert!3, Registax6, Trimmed.  Duration=180s, Shutter=15ms, Gain=290 (48%), 10% of 11,111frames

まず、撮影時からすぐにわかったのは同じ鏡筒、同じバローレンズ、同じカメラを使っているのに、画像のサイズがずいぶん違うこと。これは「その2」の記事のバローレンズのところでテレセントリックが云々と言っていた件で、これまではバローレンズに直にカメラを接続していたのに対して、ADCはバローレンズとカメラの間にはさまる形になる。バローレンズからカメラまでの距離が変わることにより、このバローレンズでは拡大率が変わってきてしまうということのようだ。

FireCaprureでは、撮影した画像のサイズと実際に見えるはずの天体の大きさから、撮影した光学系の合成焦点距離を推算した値がログファイルに記録されている。それを見ると、ADCなしではおよそ4,800mm前後の値なのに対して、ADC使用時は6,500mmくらいの値になっている。本来は、鏡筒の1,250mmにバローレンズの仕様では3倍で、3,750mmのはずだが、それよりずいぶん拡大されている。

像が大きくなったことで、解像度の高い画像が得られてうれしい反面、面積あたりの光量は減ってしまうため、画像としては少し暗くなるので、適正露出にするために、Gainの値を少し上げる必要があった。大接近中の火星はとても明るいので、その点では問題はないが、暗い目の土星などの場合は光量的にはあまりうれしくない。ともあれ、このバローレンズを使う以上、このようになる。

ところで、実際の色ズレはどうかというと、ADCなしの画像ではRegistaxにRGB Alignをやらせると、R: +3、B: -4 ドットのズレになっていた。ADCを使用した場合は、補正量をどれだけきっちり合わせられるかによるのだが、多少補正ズレは残るだろうから、ADCで補正済の画像にやはりRegistaxのRGB Alignをかけると、修正量は、R: +1、B: -1だった。そして、各色内で波長の違う光の結像位置のズレによるボケが減っているかどうかは、画像を見ても実はよくわからない。

しかし、画像が大きくなったことによってなのかもしれないが、火星表面の模様はADCなしの場合よりとてもよくわかるようになっていると思う。画像の強調による擬似輪郭の出方が、画像全体のサイズが大きくなって目立ちにくくなっているのではないかとも思う。本当は、もっと細かい模様がくっきり見えるような条件のときに撮って比べたいかったところではあるが。

これまで惑星撮影時には大きさの比較がしやすいように、どの惑星を撮ったときも同じ画像サイズにトリミングしていた。EOS 60Dで撮っていたときはそれしかなかったので問題なかったが、ASI290MCで撮るようになって、EOS 60Dで撮ったものと直接比較できなくなった。前回の中接近のときはこのサイズだった、とかできないわけである。画像も少し大きめなので、トリミングするサイズも大きくしたが、ここにきてADCを使うとまたサイズが違ってしまう。ADCを使うことにした以上はいつも使うようにして使ったり使わなかったりが混在しないようにしたい。

 

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七曜巡り

最近、色々モノを買ったりしているのもあって、blogに書くことが溜まっていて、なかなか実時間に追いつけないのだが、こちらも時期を逸するとつまらないので、モノの話は1回休んで、惑星巡りの話。

火星大接近を控えて、他の惑星も割と片半球に集まってきており、水星も東方最大離角の付近におり (今日現在はもう最大離角を過ぎているが、この記事の内容は最大離角前の話)、5大惑星を同時には難しくても一晩でなら、お天気がよくて、水星さえ見えれば、後はかなり簡単に見ることができそうな状態になっている。これまでにも、

といった記事で紹介してきたが、今回は5惑星を全部、ASI290MCで撮影というテーマである。実行したのは7月1日。

まずは惑星ではないが七曜のひとつとして太陽を。山の向こうに日が沈む時間をはかり誤って、もう半分以上見えなくなってしまった夕日しか撮れなかった。

太陽
Sun 2018/07/01 18:49 Canon EOS 60D, EF-S55-250mm F4-5.6 IS II (250mm F8), ISO400, 1/4000sec, PhotoShopCC

さて、惑星のトップバッターは水星。水星は見られる時期も時間も限られることと、小さいので望遠鏡で見ても模様がわかるとかでもないので、これまで望遠鏡で拡大撮影したことはなかったのだが、カメラがASI290MCになって初めて水星撮影となる。

Mercury
Mercury 2018/07/01 20:02 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), X-CelLX 3x Barlow Lens, AutoStakkert!3, Registax6, Trimmed.  Duration=120s, Shutter=60ms, Gain=400 (66%), 10% of 2,000frames

最初から何だが、水星は初撮影だったこともあり、撮影後に処理してみてこれはどうも失敗だったとわかる。露出が多すぎたようだ。撮影時には、高度が低くて気流の影響を受けやすいこともあり、画面上で像は派手に踊っていて、ピントが合っているかどうかも、露出が適正かどうかもあまりよくわからず、適当に撮ってしまっていたため、結果は上にごらんのような、ぼてっとした光のかたまりになってしまった。

翌日も水星がしっかり見えるコンディションだったので、今度は露出量とピントにもよく注意を払って撮影しなおし、今度は、まだ薄く光が滲んだようにはなっているものの、最大離角前の半月形より少しふくらんだように見える形状が得られた。

Mercury
Mercury 2018/07/02 19:40 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), X-CelLX 3x Barlow Lens, AutoStakkert!3, Registax6, Trimmed.  Duration=180s, Shutter=15ms, Gain=380 (63%), 10% of 6,524frames

次に金星。金星は、もっと地球に近づいて三日月状になっているのは撮ったことがあるが、こちらもまだ東方最大離角前なので半月より少しふくらんでいる状態。三日月状のときは地球との距離が近くて大きく見えるのに対し、このくらいのときはまだ距離が遠くて小さくしか見えないので、これまで撮ったことがなかった。


Venus 2018/07/01 20:09 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), X-CelLX 3x Barlow Lens, AutoStakkert!3, Registax6, Trimmed.  Duration=120s, Shutter=7.5ms, Gain=140 (23%), 25% of 2,961frames

続いて木星。あまりシーイングがよくなく、前にきれいに撮れたときと比べるとぼんやりした画像になってしまったが、今回はとにかくそれぞれの惑星を撮ることが目的なので、質は気にしないことに。

Jupiter
Jupitrer 2018/07/01 20:25 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), X-CelLX 3x Barlow Lens, AutoStakkert!3, Registax6, Trimmed.  Duration=120s, Shutter=30ms, Gain=291 (48%), 25% of 4,000frames

土星もまあこんなところで。

Saturn
Saturn 2018/07/01 23:18 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), X-CelLX 3x Barlow Lens, AutoStakkert!3, Registax6, Trimmed.  Duration=240s, Shutter=60ms, Gain=365 (60%), 25% of 4,001frames

火星はこのところ砂嵐で模様がほとんどわからない状態になっている。

Mars
Mars 2018/07/01 23:26 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), X-CelLX 3x Barlow Lens, AutoStakkert!3, Registax6, Trimmed.  Duration=180s, Shutter=15ms, Gain=238 (39%), 10% of 2,585frames

月は直焦点撮影で。

Moon
Moon 2018/07/01 23:57 ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), ISO400, 1/125sec, PhotoShopCC

以上、日月火水木金土とすべて撮影できた。惑星は望遠鏡を使って撮っているのだし、海王星も天王星も未明まで待てば同じ一夜のうちに見ることはできるのだが、ちょっと大変なので全惑星巡りではなく、七曜巡りということにしておいた。

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ASI290MCで天体撮影 (その5) ― 1.25″ レデューサで電視観望

1.25" GSO Focal Reducer

前の記事に引き続き似たようなアクセサリの話だが、今回はフォーカル・レデューサー。望遠鏡の焦点距離を短くしてF値の小さい明るい光学系に変換するもの。一般的には望遠鏡の接眼部近くで鏡筒寄りの部分に取り付けるものと思うが、これは先のフィルタと同じく、アイピースの31.7mmのスリーブのお尻の部分にねじ込むようになっている。

いくつか製品が出ていて、しかも全く同じ仕様と思われるものが複数みつかる、購入したのはそのうちのÁstrostrëetとロゴの入ったもの。価格も、比較的お手頃なものだ。製品の説明にGSO社 (Guan Shen Optical: 冠昇光學) の製品だと書いてあるがGSOの名前が入っているわけではない。しかし他の同仕様のものもおそらく同じGSO製で、それぞれ扱い業者に合わせてロゴを入れたものをOEMしているとかそんなことではないだろうか。

さて、これを何に使うかというと電視観望。惑星撮影用に導入したASI290MCだが、他にも何か使えないかということで色々見ていて目に止まったのがこの電子観望。要はカメラで録画するのが主目的ではなく、撮影時にパソコンでモニタしているカメラの画像を眺めることそのものを天体の観望とするということである。どうも、最近徐々に注目を浴び始めているようである。見る対象は惑星ではなくて、星雲・星団・銀河などの天体。観望会などでも、ひとりずつ望遠鏡のアイピースをのぞくのではなくて、多人数で一緒に画面を見られる。眼視では見づらい淡い天体も、リアルタイムの画像処理で、ある程度よく見られる。

惑星撮影に比べると、大きな違いは見た目が大きいのと明るさが暗いということ。惑星の場合は焦点距離の長いシュミカセを使っても更にバローレンズで焦点距離を伸ばし、また一眼レフなどの画像センサに比べれば実サイズの小さい撮像素子を使っていて、非常に狭い範囲だけを撮影するようになっているが、これらの天体はもっと大きいものが多いのでバローレンズとは逆に今回購入したようなレデューサーを入れて見える範囲を広くするというわけである。

明るさが暗いことに関しては、焦点距離を短くすることによってF値が小さくなって明るくなることに加え、単にシャッター速度を長くするだけではなく、直焦点で一眼レフなどでの撮影でも、何枚もたくさん撮影してスタックするという手法が使われるが、これをリアルタイムで行うということでその場できれいな画像が見られる。普段私は惑星撮影にはFireCaptureを使っているが、SharpCapというソフトがそういうライブスタックの機能を持っているということなので、そちらを使うことにする。

電視観望に関しては、ほしぞloveログの、特集記事のところにある電視観望関係の記事が参考になる。なんて思っていたら、ちょうど2018年8月号の星ナビのblog紹介のコーナーに載っていた。

さて、品物がAmazonから届いた日にちょうど晴れたので、夏の天体で見やすそうなものということでまずこと座の惑星状星雲M57に向けてみた。惑星撮影時は、バローレンズを入れてしまうと結構視野が狭くなって、画像の範囲をROIで狭くしないで撮像素子全体にしても、目標を画面内に入れるのにちょっと苦労するが、こちらは逆にレデューサーで視野を広げているので、低倍率アイピースでの視野と同じとはいわないまでも結構広い範囲が見えて、自動導入で向けた目標は割と簡単に画面にとらえられる。

M57は眼視で見るとまあかすかに光のシミが見えてそれとわかる程度なのだが、カメラを通した画面では、シャッター速度を長くすれば、そのままではも画像が荒いながらもそこそこ見える。一眼レフのモニタ液晶では、撮影のシャッター速度を長くしてもモニタの表示は変わらないので、試し撮りをしては再生画像を確認しないといけないが、これだとそんなことがない。更に、SharpCapのライブスタックを有効にすると、次々と撮影しては、自動的に位置合わせをして重ねた処理をした画像を表示してくれる。望遠鏡が揺れたりして流れてしまったりした品質の悪い画像は自動的に捨ててくれる。数十コマスタックさせると、生で見ているのに比べるとはるかにきれいになった画像になる。

そんな観望状況が下の写真。周囲の明るさと画面の明るさに差があるので、画面が白っぽくなっているが、実際はもっときれいに見えている。M57は小さいので、レデューサーを入れた状態では小さすぎるので画面をズームして表示している。じゃあレデューサーなくてもよかったんじゃないのとも思うが、導入時に周囲の星の並びを広い範囲が確認できるとかあるし、もっと大きい天体を見ることもあるので、まあこれでいいだろう。

電視観望風景

その場でライブスタックしながら表示している画面そのままを保存しようと思ったつもりが、まだSharpCapの操作に慣れていなくて、保存形式が16bitのfits形式で保存してしまい、処理しないとそのまま画像が見られないので、そのときの画面の見え方が再現できなくて残念だが、そのかわりにきれいに見えるように処理したのが下の写真。まあ、現場でも表示の調整をいじれば、ここまでとはいかなくともスタックさせっぱなしよりはきれいに見えるようにできたのかもしれない。

M57
M57 2018/06/29 21:00~ ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), GSO focal reducer, SharpCap3 Gain=300, 4sec x 53, StellaImage8, PhotoshopCC

M57がいとも簡単にきれいに見られたのに気をよくして、近くにある同類の惑星状星雲M27にも向けてみた。が、こちらは生での表示ではほとんどわからないくらい。周囲の星の並びで位置を確認してもなんとなくあるのななぁという程度だで、ライブスタックするとそこそこ浮き上がってくるが、やはりM57に比べるとぼんやりとしか見えない。まあこちらの方が面積の広がった天体なので、面積あたりの明るさが少ないのは当然で、光害地では電視観望を使ってもこの程度なのだろう。下の写真は同様に事後処理したものなのでそこそこには見えているが。

M27
M27 2018/06/29 21:40~ ZWO ASI290MC, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), GSO focal reducer, SharpCap3 Gain=300, 4sec x 40, StellaImage8, PhotoshopCC

上の2つの星雲については、実は3年余り前に一眼レフで撮っていたが、fitsファイルを処理した画像ではそれと比べても遜色ないくらいだ。画素数が少なめなことはあるが、それが事後処理でなくリアルタイムで位置合わせ、重ね合わせの処理がされているかと思うと驚かされる。しかも、CPUはWindowsタブレット機のAtomという結構非力なものだ。

しかし、M27で既に厳しかったように、光害地ではやはりある程度明るい天体でないと難しいかもしれない。球状星団だとか、明るめのものに限られるかもしれない。しかし、それにしても眼視で望遠鏡を見てもほとんどわからないような天体が、ずっとわかりやすく見える。観望会などで多人数で同時に見て楽しむという使い方もできるだろう。ただし、これが実際に望遠鏡で天体を見ているという体験になるのかどうかというと、微妙なところもある。が、まあできることは何でも色々試してはみたい。

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ASI290MCで惑星撮影 (その4) ― 1.25″ UV/IR Cut Filter

ZWO UV/IR Cut Filter 1.25"

私も火星大接近を見込んで惑星撮影をASI290MCに切り替えたわけだが、天文雑誌でもこのところUSBカメラでの惑星撮影の特集記事が掲載されていたりする。まあいちおう基本的な知識はそのういう記事を読む前に、主にネットや何やの情報で知った上で既に実行しているわけだが、やはりこれまで知らなかった情報もあってありがたい。

ASI290MCや他の多くの惑星撮影用カメラは撮像素子がむき出しなので、撮像素子面に簡単にゴミがついてしまいそうである。もちろん一眼レフカメラによく装備されているような、電源ON/OFF時に振動でゴミを落としたりする機能などない。ゴミがつかないように、なるべく下向きで扱ったり、すぐにきちんとキャップをするようにしたりしてはいたが、それもなかなか煩わしいと思っていた。

そんな折、天文雑誌の惑星撮影の記事の中で、カラーカメラでの惑星撮影にはUV/IRカットフィルターを使わないといけないという話を読んだ。赤外領域まで写ると、コントラストの悪い画像になってしまうという。そこで可視光領域のみを通す (紫外線と赤外線をカットする) フィルターを使う。ついでの効能として、このフィルタは、望遠鏡で眼視するときに使うフィルタやムーングラスと同様に、31.7mm (1.25″) のスリーブにねじ込むようになっている。カメラにフィルタを常用するかたちで装着しておくことで、内部にゴミが入らなくなるという利点もある。ゴミがついてもフィルタ面なので、撮像素子面についてくっきりゴミが写ってしまうより、距離のあるフィルタ面ならちょっとしたゴミくらいならボケてわからなくなるし、掃除するのも容易だ。

ゴミ除けのためだけにクリアフィルタを装着するというのだったら、あえてそうはしないところだ。よくカメラのレンズにも保護用に無色のフィルタを常に装着する人がいるが、余計な反射や減衰が起きるだけなのでいただけない。しかし、本来、機能としてUV/IRカットのためにフィルタの装着が必要なら、その副次効果としてゴミ除けになるのはありがたい。

さて、本題の紫外線/赤外線のカット機能であるが、まずはASI290MCの色別の感度曲線をみてみるとこんな具合である。

ASI290MC感度曲線
ASI290MCの感度曲線ZWO社のホームページより

R、G、Bそれぞれのピークはきれいにあるが、700nmより長い波長(赤外線域)での特性が赤の向こう側なのにGやBの感度もまた上がってきて、800より長いところではほぼ3色とも同じ特性になっている。そこらへんの波長の光が入ってくると、色が本来の色と違ったものになる。普通の写真を撮るデジカメでは、撮像素子の前に赤外線をカットするフィルタが入っているが、このカメラではそういうものはなくて、こういう特性になっている。また、これは後の記事で出てくるADCを使えば解消する話ではあるが、大気分散による色ズレが起きた場合に、画像のRGB成分をそれに合わせてズラして解消する方法があるが、波長の離れた領域の光が同じ色成分に含まれていると、その効果に悪影響を及ぼす。

そして、ZWO社製のUV/IRカットフィルタの特性がこちらで、その700nm付近からきれいにカットするようになって、RGBがきれいな特性になっている部分だけを使うようになっている。

UV/IR Cut Filter
UV/IRカットフィルタの特性 ZWO社のホームページより

お値段も、星雲の観察/撮影用のフィルタなどと比べると比較的安価なので、秋葉原近くにでかけた際に望遠鏡ショップに寄って購入してきて、実際に撮り比べてみた。

Mars w/o FilterMars w/ Filter
火星 (左: フィルタなし、右: UV/IRカットフィルタあり)

Jupiter w/o FilterJupiter w/ Filter
木星 (左: フィルタなし、右: UV/IRカットフィルタあり)

Saturn w/o FilterSaturn w/ Filter
土星 (左: フィルタなし、右: UV/IRカットフィルタあり)

いずれも色合いの調整は特にしていない状態である。これまでも、ASI290MCで撮影するようになってからフィルタなしの状態での画像をいくつか載せてきたが、こうして見てみると、確かにフィルタありの方が眼視で見たときのイメージに近い。火星、土星はフィルタなしだとどれもひどくピンクがかった感じで不自然な感じがする。木星はまあそれほどでもない感じだが、以前にEOS 60Dで撮影した画像と比べるとやはり、フィルタありの方が近い色をしている。あまりシーイングの条件のよいときに撮ったわけではないので、模様のくっきりさ、コントラストの違いがどのくらい出ているかはあまりよくわからないかもしれないが、ゴミ防止も含めて、まあとにかくこのフィルタはいつも装着しておいて撮影するのでよさそうに思う。

ついでだが、このフィルタとは逆に、カメラの特性がRGBとも同じになっている領域だけを通し、他の波長成分をカットするIR通過フィルタというのもある。下図のような特性 (重ね図はASI224MCのものだが、ほとんど違いはない) で、これをカラーカメラに使うことによって、赤外線波長だけで観測するカメラとなるとともに、この領域ではRGB各色の感度が同じことから、モノクロカメラと同じと考えることができて、その分、解像度の高い画像が得られるという。これも面白そうなので、いつか試してみたいものだ。

IR 850nm Pass FilterASI224MC+850nmPass
IR 850nm Passフィルタの特性 ZWO社のホームページより

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