2014年5月 のアーカイブ

だいち2号

去る2014年5月24日に予定通りALOS-2 (陸域観測技術衛星2号「だいち2号」) が種子島から打ち上げられて無事軌道に乗った。

早速ISSを見たりするのと同じように地上から見て (写真に撮影して) みようと思い、Heavens-Aboveで可視パスを探そうとしたが、「明るい衛星の日毎の予測」には見当たらない。少し前に打ち上がったGPM主衛星もそうだが明るさ(等級)の情報が入っていない衛星もあって、そうだと「明るい衛星の日毎の予測」に出てこない。そういう衛星も、「衛星データベース」の方から名前を入れて検索すると、可視パスを検索することができるが、ALOS-2とか、ALOS2とか、ALOS*とか入れてみても、該当する衛星がみつからない。軌道データが出てくるまでまだ時間がかかるのかなと思ってしばらく様子を見ることにしていた。

ところが、twitterで既に撮影した人をみかけたので、これはやはり既に軌道は確認できるのだなと思って、もう一度真剣に考えてみた。Heavens-Aboveの衛星データベースの検索は、衛星の名前だけでなく、衛星のID番号でもできる。Wikipediaを見ると、国際標識番号:  2014-029A、カタログ番号: 39766と載っていた。このカタログ番号を衛星の番号として検索条件に入れると、ちゃんと出てきた。衛星の名前は “OBJECT A” となっていた。B~Eは同時に打ち上げられた4つの小型衛星と思われ、FはH-IIAロケットの残骸だ。

さて、可視パスのリストを見てみると、これがちょっと変わっている。普通は衛星は、地上が夜だが上空の衛星には光が当たっているという条件の発生する日没後しばらくか、日の出前しばらくの間に見えるものだが、この衛星の可視パスの時刻は22時台から0時台の真夜中ばかりである。いくら夏至が近くて日没時刻は遅く、日の出時刻は早くなっているとはいえ、これはあまりに真夜中過ぎる。そして、その見える方角はというと、いずれも北方向のあまり高くない高度で影から出てそのまま地平線に向かって見えなくなるという軌道ばかりだ。

それで思い当たったのだが、だいち2号の軌道は極軌道だということ。しかも調べてみると、だいち2号のパンフレットに太陽同期軌道で「12:00(正午)@赤道上(降交軌道)」と書いてある。つまり、地球と太陽を結ぶ直線を含むほぼ垂直な面に沿って地球を巡っていて、北極上空から地球の真昼側を南下して行って、南極上空を通過し、地球の真夜中側を北上して北極上空に達して1周するという軌道。これだと地球上の中・低緯度地域の明暗境界線付近は通らないことになるので、軌道傾斜角の小さい衛星のように日没後や日の出前に見ることはできない。余談だが、同じ極軌道でもこれと90°違った面をめぐっていると、地球の影に入らず常に太陽に照らされている状態になる。

で、これだと中・低緯度地域では日没後や日の出前に見るということはできないわけだが、北極付近や南極付近でなら、地上が夜で上空の衛星に光が当たっているという条件が発生する。ここで、地球の地軸は傾いていることから、夏至近くだと明暗境界線は北極を通り越して地球の深夜側の方にやってきているので、日本程度の中緯度地域からすると、結構これが近くなっている。そんなわけで北方向にだけ見られるということになる。これが、夏至前後以外では、北極寄りの明暗境界線との距離が離れてしまうので見られなくなる。逆に冬至が近づくと南側で見られるかというと、日本は北半球にあるのだから、そうはいかない。

前置きが長くなったが、ともあれだいち2号は夏至前後に北の空の低い位置にしか見られないということははわかった。打ち上げがこの時期で、すぐに見られてよかった。夏至前後が条件がいいといっても梅雨で天気が悪くて見られないことも多いだろうから、今のうちに見られるときに見ておかないといけない。高度が低い中でもいくらか条件のいいパスが昨日今日とあったので、まず昨日撮影に挑戦したが、薄雲というか霞がかかったような空で、地上の光が盛大に散乱して、ほんのかすかにしか撮影することができなかったのでblogへの掲載はボツにした。今日はそこそこきれいに撮れたのでそちらを掲載しておく。

ALOS-2
ALOS-2 (陸域観測技術衛星2号「だいち2号」) 2014/05/29 23:18 Canon EOS 60D, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II (32mm F4.5), ISO1600, 1.3sec × 68, KikuchiMagick, Photoshop 7.0

写真上端右の方の明るい星が北極星。画面内には他にあまり明るい星がないが、ほとんどの領域がきりん座である。先代の「だいち」は既に制御を失って回転しているために光度の変化が激しかったが、こちらの軌跡はそういう変化はしていない。北の地平線にまっすぐ下っていく軌跡から、地球を縦に周っている衛星の軌道が想像できるだろうか。

失敗は、今までも時々発生している連続撮影が途中でつっかえてしまったこと。レリーズが悪いのかカメラが悪いのか、これまでも何度か発生している。星の日周運動の軌跡の写真ならあわててレリーズを動かしなおせばなんとか続いて写ったかもしれないが、速い速度で動いている衛星の軌跡はほんの少し余計に間が空いても軌跡が乱れてしまうので、まあ既にある程度進んだところだったのでもうその先を撮るのはあきらめてそこで撮影を中止した。結果を見てみると、地平線近くの明るくなっているところに暗くなっていく衛星が溶け込みそうなところくらいで終わっているので、まあそんなに不自然でもなく済んだようだ。続きが撮影できていればその先微妙に薄くなりながら消えていくところも写っていたはずではあるのだが。

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22年前のH-Iロケット9号機打ち上げ動画

来る5月24日にH-IIAロケット24号機でALOS-2 (陸域観測技術衛星2号「だいち2号」) の打ち上げが予定されており、更に今年はこの後も今までになく多くのH-IIAロケットの打ち上げが予定されており、それらを見学に行く人も多いようである。そういえば、自分もずいぶん前にロケットの打ち上げを実際に見てみたくて種子島に見に行ったことがある。そのときに撮影したビデオ (S-VHS-Cテープ) があったはずと発掘して、キャプチャしたものをYouTubeに載せておいた。

ちょうどH-Iロケットが引退して次のH-IIまでは少し間があくので、見に行くなら今のうちと思って、H-Iロケットとしては最後の打ち上げだった9号機の打ち上げを見に行った。実際には、当初の打ち上げ予定日に合わせて種子島に行ったものの打ち上げが延期になり、再度仕切りなおしの打ち上げ予定日に合わせて種子島に行って撮影したのが1992年2月11日。打ち上げられた衛星はJERS-1 (地球資源衛星「ふよう1号」)。

ビデオの最初は出発前の羽田のカウンター。JALの地上職員の制服になんだか時代を感じる。

打ち上げは種子島の某所から撮影。今のようにインターネットで色々情報が手に入る時代ではなかったので、最初に行った時に打ち上げ日の前日を丸々使って種子島宇宙センターの見学だけでなく、撮影場所のロケハンのために自分でレンタカーであちこち走り回って探して決めたのがこの場所だった。撮影場所の周囲の様子も少し撮ってあるが、行ったときはなんとなく造成中のような感じに見えたが、今この場所がどうなっているかはよく知らない。既に、現在のH-II用の施設が建設されているのが写っているが、打ち上げは古いH-I用の発射台から。

打ち上げのシーンは引きで撮っているが、現場で肉眼で見ている感じにまあだいたい近いと思う。

残念なことに曇天であったため、上昇してしばらくすると雲の中に突入してじきに見えなくなってしまった。

帰りは昔の種子島空港に寄ってYS-11の離陸を撮影しているが、ということは自分はこれに乗って帰ったのではなくて、この後ジェットフォイルで帰ったはず。こうやって聞いてみるとYS-11のエンジン音が独特だ。

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土星と火星

土星の衝も過ぎたが今年はまだ土星の写真を載せていなかったので、見頃を過ぎてしまわないうちにいちおう載せておく。火星とついでに何度か撮影してはいたのだが、去年に一番よく撮れた画像ほどの画像にはぜんぜんならなくてblogに載せるのはボツにしていた。今回もおなじようなレベル (去年の記事のダメな方の写真と同じレベル) なのだが、いちおう比較のために載せるだけでも。1年で土星の見える向きが少し変化して、環の開き方が去年のものと比べると違っているのがわかるだろうか。去年は環の上下から少し土星本体がはみ出て見えていたが、今年は環の端に本体がほとんどぎりぎりぐらいだ。

ちなみに、土星の環の角度の変化は、土星の公転周期約30年足らずで上側と下側を1周期まわるので、一番細くて見えなくなるのと、一番太く見えるのの間はその1/4で約7年。最近に環が真横で見えなくなったのは2009年なので、一番太るのは再来年の2016年から2017年あたりということになる。

Saturn
土星 2014/05/18 21:53 Canon EOS 60D, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), 8-24mm eyepiece projection (8mm), ISO6400, 1/60sec x 1765, Registax6, トリミング

下が、去年の画像の再掲。

Saturn
土星 2013/04/23 00:45 Canon EOS 60D, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), 8-24mm eyepiece projection (8mm), ISO6400, 1/60sec x 3480, Registax6, トリミング

そして、今度は逆に土星のついでに火星を撮ってみた。土星は去年の衝も今年の衝も、衝でない時も、地球からの距離の違いは (比率的に) さほどないので見かけの大きさは大差ないが、火星の方は、先月の衝からもうずいぶん離れてしまったので、先月の記事の画像と比べると大きさが小さくなって、しかも少し片側が欠けて見えるのがわかる。

例によって画像の向きは地上から経緯台で見た通りの向き。上がだいたい北になっている。たまたまだが、先月の写真と同じく (少し角度が違うが) 大シルチスがこちらを向いている。

Mars
火星 2014/05/18 21:58 Canon EOS 60D, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), 8-24mm eyepiece projection (8mm), ISO1600, 1/60sec x 2038, Registax6, トリミング

こちらが、先月の画像の再掲。

Mars
火星 2014/04/12 00:56 Canon EOS 60D, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), 8-24mm eyepiece projection (8mm), ISO1600, 1/60sec x 1758, Registax6, トリミング

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ISSとロケット残骸

Heavens Aboveで今朝の人工衛星の可視パスのリストを見ていると、ISSのパスとほとんど違わない時間に、ISSとほぼ平行したパスでTitan 4B R/Bが最大光度1.2等で見られるのに気付いたので、両者を一緒に撮影しようとしてみた。ISSの方は光度−3.2等の安定した光。一方のタイタンはロケットの残骸なので、回転していて明るくなったり暗くなったりするはず。という対比が面白いかと思った。

ところが、実際に撮影してみると、タイタンは全く何も写っていなかった。そのために場所をあけてあったのに、ISSだけ右寄りに写った絵になってしまった。一方、予期していなかった位置に光度変化する軌跡がかすかながらも写っていたので、それがわかるようにかなり明るめに処理してみた。運の悪いことに、毎回一番明るくなったど真ん中にシャッターの切れ目がかかってしまって、ちょっと見づらくなっている。

ISS & Cosmos Rocket
ISS & Cosmos 2074 Rocket 2014/05/18 02:48 Canon EOS 60D, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II (18mm F4), ISO800, 2sec × 152, SiriusComp, Photoshop 7.0

Heavens Aboveでもっと暗い衛星を探すと、Cosmos 2074 Rocketが軌跡と時刻からそれのようだ。光度は最大で5.0等。こちらもロケットの残骸なので明るさが変化して見えたり見えなくなったりしている。最初にリストを見ていたときは、あまりたくさんリストアップされても煩雑なので、よく見える3等以上を表示させていたので、他にも近い時間に近くを通過する衛星に気づいていなかった。しかし、5等というのはおそらく平均してのことで、このように明るさが変化するものの場合は明るく光っている部分ではそれよりも明るく見えていると思われる。予報を見るときは注意が必要のようだ。

Heavens Aboveの軌跡図を3つ分重ねてみるとこんなふう。写真は、左上の北東方向の地平線付近を撮っているので、上下を一致させるには図を反時計回りに135°ほど回転させないいけない。

Heavens Above

ちなみに、この図は白地に黒文字で描かれているので、比較(暗)合成して作成した。

しかし、Titan 4B R/Bは一体どうして全く見えなかったのだろうか?

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SiriusCompで動画と、IrfanViewで一括クロップ

今まで60Dで撮った比較明星景の合成はいつもKikuchiMagickを使っていたが、今回、動画をつくってみようと思い、動画作成機能のあるSiriusCompという比較明合成ソフトを使ってみた。動画はS120なら内蔵の機能でできるのだが、S120ではできない軌跡が伸びていく動画を作成してみることに。

比較明合成の静止画作成時に動画をついでに作成する機能がついている。静止画はもちろん入力した画像と同じサイズのものができるが、動画はFullHDサイズ、DVDサイズ、Half-DVDサイズの3通りからしか選べない。FullHD動画を作成してみたが、てっきりはみ出た分はクロップされるのかと思ったら、元画像のアスペクト比無視でフィットさせた画像が作成された。一眼レフでは元はアスペクト比3:2の5184×3456ドットのサイズで撮っているので、それより横長の画面に合わせて少しへしゃげた絵になってしまう。今回作成したのは南天だからあまりわからないが、北天ぐるぐるの画像などだとかなり違和感が出るだろう。動画を作成するつもりなら、撮影時に最初から16:9の設定で撮影しておけばいいのだろうが、静止画としては一般的ではないアスペクト比なのでそれも困る。

それでは、撮った画像を16:9にクロップしてからSiriusCompに食わせればいいのだが、さすがに何百枚もある元画像を手でクロップするのは現実的でない。自動でする方法はと探すと、IrfanViewという画像ビューアにその機能があるという。IrfanViewなら、前に色々画像ビューアを試したときにインストールしたままになっていたから、少しバージョンが古いままだったがそのまま試してみた。IrfanViewのバッチ機能では他にも色々な処理を多数の画像ファイルに対して一括して行うことができる。

どうせ1920×1080にするのだから、元画像を単に16:9にクロップするのではなく、縮小して1920×1080にした上でSiriusCompに食わせてみた。ところが出来上がった動画を見ると星の軌跡の周囲が圧縮ノイズのせいかやけに滲んだ感じになっている。最初に5184×3456から直接へしゃげた動画を作成したときにはそんなことはなく軌跡は動画の中でもくっきりしていた。別に、IrfanViewで処理した個々の静止画はそんなに汚くはないように思えるのだが、SiriusCompの出力した静止画も同じように汚い絵になっている。どうも、高解像度で合成してから縮小しないときれいにできないようだ。

それで、余計に時間がかかってしまうことになるが、IrfanViewでは5184×2916ドットにクロップして16:9のアスペクト比にするにとどめ、それをSiriusCompで処理してみると、きれいな1920×1080動画ができた。YouTubeにアップロードして再圧縮がかかっても十分わかるほどの違いだと思う。

シャッタースピード4秒で、レリーズロックして連続撮影した約1時間分の写真だが、4秒と4秒の間に少し隙間が開くので実際は4.5秒間隔くらいで撮影されていて、写真の枚数は817枚。これを30fpsの動画にすると、約27秒になるが、これだと南天の星の軌跡で動きが早いといっても、結構ゆっくり目に感じる。そこで、これをTMPGEncにかけて速度を400%にしてエンコードしなおす。これで7秒弱となり、軌跡の伸びて行き方もまあいい感じか。ただし、元画像の撮影間隔がカメラの挙動まかせなので、きっちりしておらず、その分を勘定に入れないといけないので、きっちり実時間の何倍速、と言うことができない。もしそれをきっちりした値にしたければ、撮影時に、レリーズロックではなく、プログラムタイマーの機能を使ってきっちりした時間間隔で撮らないといけないということになる。

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クレーンのある比較明星景

ビル建設現場の大きなクレーンはなかなか被写体として魅力的なので、前から撮りたいと思っていて、今回撮影したのがこれ。しかし、どうも構図をまるで誤ってしまったようで、なんだか全く落ち着かない絵になってしまった気がするが、まあせっかく撮ったのでそれもご愛嬌ということで披露することに。

Craneクレーンとしし座周辺 2014/05/11 20:23~21:24 Canon EOS 60D, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II (18mm F4), ISO400, 4sec × 817, KikuchiMagick, Photoshop 7.0

身近でクレーンが近くで撮れそうな建築現場で、新宿東口のアルタの並びのヒューリック新宿ビル (みずほ銀行の入っていたビル) の建て替え現場に目をつけていたが、いつの間にか高く延びてしまい、クレーンを大きく入れると下の方は白い布に覆われたビル本体しか入らない絵になっていまひとつつまらなさそうになっていた。歌舞伎町の新宿コマ劇場跡地に建設中の新宿東宝ビルは長い間下の方の工事しかやっていないと思っていたが、これも知らない間にとっくに高層部分がもう上の方まで出来てしまって、クレーンはそのてっぺんである。低い位置にクレーンが林立している頃に撮りに行けばよかった。

前にすばる付近を通過するISSを撮影した日に、もともと撮ろうとした対象が街灯が邪魔で断念したと書いたが、そのときの対象のひとつにクレーンが含まれていた。そのときはもう少し他のものとからめて撮ろうとしていたのだが、対象をクレーンだけに絞って探してみると、邪魔だったクレーンの直下にある自転車置き場を照らす照明をうまく避けられるように工事現場の囲いがクランクになっている場所があったので、そこから三脚を高く伸ばして撮ることにした。その様子が下の写真。

撮影風景

画面の左側にずっと煌々とライトが並んでいる。囲いの高さがあるので、照明から影になっている位置からだとかなり見上げる形でしか撮れないが、ここもクレーンは以前より高くなってしまっていたのがかえって幸いしてちょうどクレーンが視界に入り、建設中の建物は上の方は白い網に覆われずに鉄骨が見えているのも雰囲気が出ていい。

で、このクレーンだけを縦位置ででも撮ればよかったのだが、あまり日の丸構図的になるのもどうかと思って、ちょうど横位置にすると右の方に西に傾いた木星とふたご座のカストルとポルックスも入って画面に明るい星が入っていいので、右側の低いクレーンまで入った構図にした。ところが結果は見ての通り。広角で見上げて撮っているので、垂直なものも端の方ほど中央に向かって傾いて写るわけで、左側のメインのクレーンがあまりに傾き過ぎて見えて、画面全体が傾いているかのようである。本来なら、右端に写っているものが逆に内向きに傾いて見えてそういう構図なのだとわかるはずが、撮影風景を見てわかる通り、もともと斜めになっているクレーンがその影響でほぼ垂直になって見え、もともと垂直なものが少し同じ方向に傾いて写っているかのように感じられてしまう。

撮影しているときは、カメラをちゃんと水平にしなければとカメラ内蔵の水準器できっちり合わせてこれでOKと思って撮影したのだが、とんだ失敗だった。

この構図の件を除けば、他の点では非常に首尾よくいったように思えるところが残念だ。以前に樹木を入れた撮影では、樹木が揺れて困った結果になったりしたが、こちらのクレーンはほとんど揺れておらず、鉄骨の隙間から覗く星の軌跡がきれいに見え隠れしているのがうれしい。よく見るとクレーン先端からぶら下がっているものはさすがに少し揺れているのだが、割りとカタマリっぽいので少し太っても不自然になっていない。建物の鉄骨の見えている部分にかかっている薄い網の部分からも星が透けて見えている。星の軌跡も全体にいい感じに撮れたと思う。今回は星の幅を太らせる処置はしていない。

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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS) を撮影

「だいち2号」の打ち上げが近いからか、最初の方の「だいち」も一部では注目をあびているようで、先日、宇宙かふぇに行って、キャプテンに比較明合成の星空写真の取り方を伝授していたところ、Nさんがやってきて、これから「だいち」の可視パスがあるという。たまたま、既に連続撮影を開始していたキャプテンのカメラはちょうど衛星の見える方向を向いていたので、そのまま通過の時間まで撮影を続けることに。私も、説明用に持って行っていた自分のカメラと三脚で、パスがうまく入るようにセットして、こちらは衛星の通過時間内だけ撮影。

しかし、予想光度は2.3等とあまり明るくなく (まあ一般の衛星の中では明るい方ではあるが)、しかも、明るさは周期的に変化するという。北斗七星もよく目を凝らさないといけなかったこのときの宇宙かふぇ付近での光害だか薄曇りだかの環境では結構きびしそうだった。いちおう、衛星を少し明るく写そうと、通常、4秒ぐらいに設定しているシャッタースピードを短く2秒に設定して撮影しようとしたら、なぜか連続撮影がすぐに止まってしまった。これは今までにもたまに出ていた症状なのだが、シャッタースビードを短くしたことと関係あるのかないのかわからないが、とりあえず無難に4秒に戻して撮影した。

結果、肉眼では確認できなかったし、私が撮影した画像もその場でカメラの液晶モニタで見た限りではまるで写っているかわからなかったが、帰宅して画像を合成し、明るさをめいっぱい持ち上げてみると、なんとかまるでイリジウムフレアのような軌跡が一ヶ所だけ写っているのがわかった。それがこちら。左上角の太い線は、写り込んでしまった電線。その右下の方に写っている。

ALOS 20140507
だいち 2014/05/07 20:54 Canon EOS 60D, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II (18mm F4), ISO200, 4sec × 47, KikuchiMagick, Photoshop 7.0

しかし、これではちょっと納得いかなかったので、同じくらいの光度のパスがあった昨夜、自宅付近で再挑戦してみた。カメラは、EOS 60Dだけでなく、画角が広いのとF値が小さいという2つの点で有利なので、PowerShot S120も使って、両方で同時に撮影してみることにした。

画角が広いといいのは、今回、ちょうど南中している北斗七星の端をかすめていくので、その北斗七星を画面に入れると下の方があまり入らなくなる。60D用のレンズの最広角は18mmで35mm換算すると、約29mm相当。一方S120の最広角は24mm相当なのでちょっと広い。といっても、S120の画角でも北斗七星を入れると地平線には届かない。しかし、地上風景が入らないと、衛星が通過していって地平線に向かっていく感がわかりにくいので、樹木の上の方だけ画面に入る構図で撮ることにした。

いつも明るいISSを撮るようなときは、先に書いたように4秒かそれ以上のシャッタースピードで撮っている。しかし、暗い衛星を撮るには、同じ露出量になる設定の組み合わせの中で、シャッタースピードを短くして、絞りを開けるか、ISOを上げる方が衛星が明るく写る。背景の星の方は日周運動で動いているとはいえ、1枚の写真の中ではほぼ点像なのに対して、衛星の方は1枚の中で動いていくので、同じ露出量だとシャッタースピードが長くて画面内の移動距離が長いとその分だけ光が薄まってしまっているということになる。つまり、シャッタースピードを短くした方が短い軌跡の中に光が濃縮されて明るく写る。また別の言い方をすると、衛星は画面上を動いていくので静止物のようにひとところに当たった光を貯めて明るく写るということがないためにシャッタースピードは写る明るさには関係なく、先に言ったようにシャッタースピードを短くして同じ露出量にするためには絞りやISOの設定を明るく写る方向に設定するわけなので、そちらの効果だけが効いて明るく写る、という説明もできる。

そんなわけで、シャッタースピードを短くして撮るわけだが、60Dで撮っている場合は既にレンズのF値が開放に近いところで撮っているので、残るはISOだけだが (もちろん、開放F値の小さいいいレンズを持ってくればいいのだが)、S120は開放F値が小さいのでその分ISOをあまり上げなくてもシャッタースピードを早く設定できる。ここでは0.4秒で撮影した。普段のISSの10分の1である。衛星が通過している間だけの撮影だからいいが、日周運動の撮影でこれをやったら、恐ろしい枚数撮影しないといけないことになる。

そうやって撮影したのが下の写真。撮影の少し前まできれいに晴れていたのに、セッティングしている途中から少し雲が出てきてしまったが、なんとか雲を通して星も見える程度におさまっていてよかった。

ALOS 20140509 S120
だいち 2014/05/09 20:35 Canon PowerShot S120, 5.2mm F1.8, ISO800, 0.4sec × 533, PhotoShop 7.0

見た通り、明るくなったり暗くなっりしていて、明るくなっているときは結構明るいが、暗いところは全くわからない。しかも、一定に明暗を繰り返すのではなく、周期的に明るくなっている部分でも明るいときもあれば暗い時もある。右上から順番に、1番目が観測地近いときだが2番目の方が明るい。そして3番めは一気に暗くなった後、4番めはあるのかないのかわからず、その後もうだいぶ遠くなっているのにまた3番目よりむしろ明るく見えているのが3つ続き、そのうち最後は特に鏡面がちょうどこちらを向いたのか、一瞬非常に明るく光っている。

このように光度変化が出るのは、実はこの衛星がすでに運用を終えているために、姿勢制御が行われておらず、勝手な状態に回転してしまっているためだ。実は先日の246COMMONでの観望会で見たロケットボディもやはり回転してしまっているために明るさの増減をしていたが、もっとゆっくりおだやかなものだった。この衛星はかなり大きな太陽電池パネルがついているので、向きによって光の反射の仕方がかなり違うのだろう。しかも、必ずしも単純に1軸中心に回転しているわけではないだろうから、不規則な光度変化をするのだろう。

この軌跡、1番目のものの前に更に右上にも写っていてよさそうだが、これは単に手間取って撮影開始が間に合わなかったため。せっかく広角で撮っていたのに、その部分を衛星が移動している間はまだ撮影できていなかった。ちょっと失敗である。

次はEOS 60Dで撮影した方。S120で手間取ってしまったため、こちらの撮影開始も遅れてしまって、S120の方の写真では最初に光っている部分が終わった後からの撮影開始となってしまった。こちらはF値は変えずにISO値だけでシャッタースピードの短さを補っているのでノイズっぽくなっている。シャッタースピードを短くするのはS120より少し控え目にして1秒。その違いの分、こちらは衛星があまり明るく写っていないのと、衛星の軌跡の破線の間隔が荒い。

ALOS 20140509 60D
だいち 2014/05/09 20:36 Canon EOS 60D, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II (18mm F4), ISO1600, 1sec × 180, KikuchiMagick, Photoshop 7.0

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