2017年4月 のアーカイブ

高層ビルの狭間のISS天頂通過

Heavens Above
Heavens Above より

先日、関東地方でかなり天頂近くを通過するISSのパスがあった。休日で予定もなく、お天気もよかったので、これはどこかに撮りに行かねばと思ったが、一体どこで撮ろうか。天頂近いので、普通に地上と一緒に撮ると、ほぼ垂直に昇っていくか降りてくるかの絵になるが、せっかくの天頂なので、魚眼で真上を向けて撮ったらどうか。そのまま上の予報図のような軌跡が撮れるはずである。といっても、それだけでも芸がない。一緒に写す地上風景にもひとヒネリを加えたいところで、もうひとつ魚眼で天頂を向けて撮りたいと思っていた対象のことを思いついた。

武蔵小杉。ここ最近開発が進んで、高層ビルが林立するようになった。映画「シン・ゴジラ」の舞台にもなったところだ。ビルの密集しているところで真上を見上げると、周囲それぞれの方向からビルが中心に向かってそそり立っている絵になる。そんな空に星の軌跡を描いた比較明合成星景写真を撮ったらどうかなと思って、以前に下見もしていたのだが、建物が空をふさぎすぎて肝心の星が見える空の面積があまり多くないという感じでもあった。

しかし、目的がISSならば、そのパスさえ見えていればいい。うまくビルとビルの隙間を通るようにすると面白いと思って、急いで計画を立てた。ISSのパスは南北に対してほぼ45°くらい。運のいいことに、予定の場所の一番大きな2つのビルは斜め45°の道をはさんだ両側に向かい合わせに立っている。ということは、その道の上のどこかに陣取ればそのビルの間を通過して、かなり低い位置まで見られるということ。反対側は割りと開けているが、1つのビルは結構ぎりぎりの方向にあるものの、すこし外れているので、ビルのすぐ脇を昇っていくように見えそう。といっても、ぎりぎり見えるはずが、ぎりぎり隠れてしまったにならないように、Googleマップの地図とストリートビューを駆使して慎重に撮影場所を見定めた。

元々星景写真を撮ろうと思ったときは、あまり明るい街灯の光などが入らないようにと、歩道と建物の間とった空き地が小さな公園のようにしてあるところを考えていたが、そこではISSの見え方がよくなかった。先に言ったビルの間を見通せる車道のど真ん中が場所的にはいいが、いくらなんでもそういうわけにはいかず。歩道でも人の通行の邪魔になる。交差点の角の、2つの向きの横断歩道の間の角の部分で、自動車交差点から歩道に突っ込まないように柱が立っているところ。その柱の上にかぶせるように三脚を立てた。これなら誰の邪魔にもならない。目の前を自動車はどんどん通過するし、左右後ろは歩行者がいっぱい通るが、自分の頭の位置で真上を向けて撮影しているので、それらは写り込まない。

しかし、街灯やビルの照明が明るくて、迷光だらけで露出を少なめにせざるを得ない。ISSは天頂通過で十分明るいからと思って、魚眼で超広角なので破線状の軌跡があまり細かくなってしまわないようにと1コマの時間を長めにしたが、もともと露出小さめなためあまり明るく写っていなかった。もっと短くして感度を上げて明るく写るようにすればよかった。そして、ISS以外の星はもっとさびしい写りなので、ISSの通過中だけでなく、もっと長い間撮影して軌跡を伸ばしておけばよかった。

さて、撮影開始すると、ちょうど予定通り北西のビルに沿ってISSが昇ってきた。天頂を通過するあたりでは見上げていると方向感覚がわからなくなるので、進む方向がちょうど2つのビルの間に行くのかどうか不安になってどきどきしたが、無事片方のビルの角をかすめて行ったときは心の中でガッツポーズだった。そして高度を下げていって下の方の低い建物にかかるかと思ったら、その前に地球の陰に入って見えなくなるところまで見えて、これは予想外にうれしかった。昇ってくる方は、写真では低いビルの向こうから姿を現すところが画面外に切れてしまって残念だ。写真の対角線方向をISSの軌跡にあわせれば画面内に入れられたのだが、画面の南北の向きを合わせておきたかったのでこうなった。

20170415ISS高層ビルの狭間のISS天頂通過 2017/04/15 19:08~ Canon EOS 60D, SAMYANG 8mm 1:3.5 UMC FISH-EYE CS II (F5.6), ISO100, 8sec×27, Photoshop 7.0

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月がいつも同じ面を向けている説明

「月の裏側が地球から見られない理由」として月が自転していないとテレビで言ったとして話題になっている。

フジテレビ「月は自転しない」で視聴者からツッコミ殺到 「スタッフの確認不足から生じたミス」と謝罪

そして、正しい説明が「公転と自転の周期が一致しているため」で、自転していないわけではないという。以前からこの、月がいつも同じ面を向けている理由が公転周期と自転周期が一致しているから、という説明に引っかかるところがあったので、この機会にちょっと書いてみる。

まず最初に問題の件から言うと、そんなに目くじら立てなくてもいいんじゃないの、ということである。まるで科学的大間違いのように騒ぎ立てられているが、これはちょっとした言葉の言い方の問題で、現象について間違った理解をして言っているわけではないようであるから構わないんじゃないか。天文学的な定義の上で話をする場合には自転というのは恒星基準で考えるので公転を一周する間に自転も一周することになるのは確かだが、そんなことまで気にかけない一般の方々が自転と聞いたときに、(無意識ながらも) 地球からみて、回転しているかどうかというふうに考える方が直感的には自然なことで、そういう意味では自転してないと言っても間違いとは言えないと思う。地球の自転周期だって、恒星日と太陽日というのがあって、地球の自転周期は太陽日の24時間ちょうどではなく、恒星日の約23時間56分なわけだが、地球は24時間に一周自転していると言ったからといっていちいち突っ込まれてはかなわない。

そして、公転周期と自転周期が一致しているからという説明。これは、月が地球にいつも同じ面を向けている「理由」の説明にはまるでなっていない。これは単に現象を別の言葉で言い換えているだけのことである。自転を恒星基準で定義すれば、月が地球に同じ面を向けて公転しているのならば、その間に1周自転するのは当たり前の話である。理由とか原因とかではない。自転を地球基準で定義すれば、月が地球に同じ面を向けているのと月は自転していないというのは同じことだということと同じでもある。

周期が一致しているというのは、互いに勝手な値をとれるはずなのに「偶然」一致しているかのような物言いだが、そういうわけではない。静止衛星がいつも地上から見て同じ位置に見えるのは、たまたま地球の自転周期と衛星の公転周期が一致しているわけではなく、そうなるような軌道にわざわざ制御して入れているわけであるが、月の自転を人工的に制御しているわけでもないのに、自然の摂理として地球にいつも同じ面を向けるような動きをしているのには、それ相応の理由があるのだということを言わないと説明していることにならない。潮汐力によって月の向きが地球に対してロックしてしまっていること、それに関連して月の表の模様と裏の模様の違いや内部構造のアンバランス、他の天体での尽数関係のこと、あるいは秤動の話など、いろいろと話を膨らませていけるだろうが、そこまで踏み込まずに周期の一致だけで済ましている説明が多い。

しかし、周期の一致の話だけ聞かされた初心者はどうだろう、たいがいはピンと来ずにぽかんとしているのではないか。へぇ、なるほど、そういうことか! と、物事を理解した喜びを感じられないと思う。なんだか言葉のトリックで言いくるめられただけのような感じだ。自転周期というのは恒星基準で考えるのだということをまず説明した上で、やっと言っていることがわかるはずだが、それにしても先に言ったように本当の理由が説明されなければ説明している意味がない。天文学上の数値の扱い方を説明しただけのことになる。そんなことは天文学者に任せておけばよくて、そちらの説明を省いてでも、本当の理由の方を説明してもらいたいものだ。

しかしこの公転周期と自転周期が一致しているからという説明は非常によく目にする。偉い先生であってもこういう説明をされているのが多いのもどういうことだろうかと思う。それで天文に少し馴染みのある人ならば子供の頃から何度もこの説明を見聞きして、もうその考えは頭に染み付いていることだろう。そしてそうやって覚えた人は、また次に同じような説明をする方になる。直感的には自転してないと思う感じなのに天文学ではそうではなく自転していると言うのだというという少しヒネった知識であることも、なんとなくちょっと蘊蓄を知っているぽくて、他人が月は自転していないと言おうものならすぐさま突っ込みたくなるのかもしれない。突っ込んでいる人の中には、「周期がほぼ一致してる」なんて言っている人もいた。この場合「ほぼ」なんてことはなくてぴったり一致しているわけで、僅かに一致していなくて徐々にズレてきて裏が表に見えてくるなんてことがあったらびっくりだ。つい自信がなくてほぼなんて言ってしまったのかもしれないが、言葉づらだけの説明を覚えていると、本質を理解しないでこういうことになるのかもしれない。

そもそも月がいつも同じ面を向けている説明がされるのは、どういうわけかQ&Aの形をとってなされることがよくあるように思う。上のリンクの中で更にリンクされているJAXAの説明というのもそうである。しかし、そんなに多くの子供がまず月がいつも同じ面を向けていて不思議と自発的に思うものだろうか? むしろ、オルバースのパラドックスのように、言われてみれば確かに、という類のことのひとつではないだろうか。そう思うと、公転周期と自転周期が一致の説明だけを回答しているQ&Aは、一見直感に反するように思えるその事実を語りたいがために設定された質問のように思える。もちろん、語りたいことをQ&A形式をとって語ることはよくある話だが、語るならば、ぜひ知的好奇心を満たせるような本当の理由の方を語ってもらいたいものだ。

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