2018年8月 のアーカイブ

火星撮り比べ

昨夜はそこそこシーイングよく、砂嵐でわかりにくくなっている火星の模様もずいぶん細かいところまで写っているようだったので、ついでに過去の機材で撮っていたらどのくらいに写っていたのかを比較すべく (費用対効果がどのくらいあったのか確認するために) 撮り比べてみた。順に、

  • (1) 20cmシュミカセと惑星用カメラを使用した現在の標準セット
  • (2) 鏡筒だけ12.5cmシュミカセに戻したもの
  • (3) 12.5cmシュミカセにアイピース拡大で一眼レフのクロップ動画モードを使ったもの。

それぞれ元画像は画像サイズが違ってしまうが、ここではサムネイルは見た目の大きさが同じになるように拡大率を合わせてある。リンク画像は元のサイズのものにしてあるので、(1) 以外は開いた方がむしろ小さい画像になる。

こうやって比べてみると、鏡筒の口径の違いはもちろんその通りの違いが出ているが、カメラの違いの方もずいぶんある。カメラの違いなのか、拡大率の違いなのかもわからないが。ちなみに、惑星用カメラと付属光学系一式の値段と、望遠鏡の鏡筒+赤道儀の値段は少なくとも3倍以上違う (笑)。

EdgeHD + ASI290MC
(1) EdgeHD 800 + X-Cel LX 3x Barlow + ADC + ASI290MC

NexStar + ASI290MC
(2) NexStar 5SE + X-Cel LX 3x Barlow + ADC + ASI290MC

NexStar + 60D
(3) NexStar 5SE + 8-24mm Zoom eyepiece + EOS 60D

そして、2年前の中接近の際はもちろん、一番古い組み合わせでしか撮影していないわけだが、そのときの画像を砂嵐の比較のために載せておく。模様の向いている場所が違って、いちばんわかりやすい大シルチスがこちらを向いているところなので、ちょっと不公平かもしれないが、濃淡がずっとはっきりしていたのがよくわかる。拡大率は同じにしてあるので、火星の大きさが少し小さいのもわかるだろう。

NexStar + 60D 2016
NexStar 5SE + 8-24mm Zoom eyepiece + EOS 60D, 2016

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Advanced VX 赤道儀諸々

このところほとんど惑星の撮影ばかりで、Advanced VX (AVX) 赤道儀もほぼそれに使っていだけなので、まだあまり赤道儀としての細かいところは使い込んでいない感じではあるが、これまでのところで使っていて諸々気付いた点などを少し書いてみる。

設置

経緯台のNexStarの場合は三脚は水平をとればどのように置いても構わなかったので、ベランダに設置する場合は水はけ用の傾きがあるので、だいたい2本の足を高い側に窓に平行に置き、1本の足だけを外側に向けて、少しだけ伸ばして高さを調節するという置き方をしていた。

赤道儀では極軸を北に向けないといけないのでそうはいかない。ベランダは南向きなので、極軸望遠鏡は使えない。建物は真北に対して30°余り振れているので、ちょうど上記とは90°回転させた状態、2本の足を窓側と外側を結ぶ直線上に並べて、残り1本を横向きに出るように設置し、「余り」の分の角度を床面の模様の数を目安に少し調節する。足の長さは、窓よりのものを除いてそれぞれに調節する。一度水平を確認すれば、以後はだいたいその長さを見当をつけて伸ばすぐらいでよい。そのぐらいの目安でだいたい極軸の方向はおおまかには合う。

惑星の撮影の場合は追尾中ビクリとも外れてはいけないわけではなく、画面におさまっている範囲で揺れていてもスタッキング時に位置合わせをするため構わないので、追尾が多少ズレても、眺めながらちょこちょこと合わせ直していれば十分である。なので、アライメントもだいたい惑星アライメントで合わせただけで済ませる。ポーラーアライメントをするには事前にTwo-Starアライメントをしないと正確に合わせられないと思うが、ベランダからではなかなかうまく2つの基準星をとらえることができない。

NexStarよりも三脚の開きが大きく、さらに縦方向に広げるわけで、外側の足は外側の壁ぎりぎりということで、排水溝の中に置いていた。三脚の足の先端は、NexStarではゴムがかぶさっていたので、AVXも同じだろうとあまり気にしないでいたが、明るいときによく見ると、排水溝の防水膜がちょっと傷んでいるようだった。NexStarでも場合によって排水溝の中に足の先を置くことはあったがそんなことはなかったのでよく見ると、AVXの三脚の先端は尖っているわけではないが硬い金属製のままであった。排水溝に直接三脚の足を置かないように気をつけないといけない。ベランダの床面の部分の防水シートはしっかりしていて、そのくらいでは傷ついていなくて大丈夫だ。

アライメント

アライメントのやり方は経緯台のNexStarの場合と同じようなものか思っていたが、実は結構違う。経緯台では、設置した状態で方位がどちらを向いているかは全くわからないので、そもそも全くわからない状態から始める。最初の基準星はまずは自力で直接合わせる。一方赤道儀では、正確に合っていないにしろ、北の方角は正しく向けて設置していて、極軸の高度もほぼその地の緯度に合わせて向けてあるはずという前提がある。赤道儀の回転部にも向きがあるので、インデックスの印がついていてそれを最初に合わせておけば、アライメントをせずともおおまかには座標軸は合っているはずで、アライメントの作業はそれを正確に追い込んでいく作業でしかない。なので、インデックスを合わせてからアライメントの基準星をコントローラのメニューから選ぶと、まずはマウントが自動的にだいたいその星のある方向に向いてくれる。そこから正確に基準星に合わせるだけだ。そこがNexStarとの大きな違い。実は、NexStarで自動導入だというと、望遠鏡の経験者からは、自動導入って最初に鏡筒の向きを合わせて云々でしょ、とか言われることがよくあったのだが、なるほどこのことかと今さら納得した。

そして、NexStarにはお手軽かつ正確な、SkyAlignというモードで、星の名前はわからずとも2等星以上程度の星を3つ選んでアライメントすると、自動的にどの星かを認識してアライメントしてくれるというものがあったのだが、AVXにはそのモードがない。もともと極軸がだいたい合っているならTwo-Starで十分で、必要なら基準星を追加して精度を上げるという考え方だろうか。しかし面倒なのは、これから入れる基準星をいちいちメニューから選ばないといけない点。基準星候補は全部固有名で出てくるが、1等星ならともかく、2等星の固有名はなかなか聞き慣れないものが多く、どこにある星なのかわからない。しかも、これはNexStarの場合も同じだが、基準星候補には惑星は含まれない。これも基準星選びに困る理由のひとつだ。NexStarのSkyAlignの場合には3つの星に惑星が含まれても構わないというのに。しかも、今そこに見えている1等星の名前さえも候補リストに出てこなかったり、どういうわけかよくわからない。視界の狭いベランダやマンションの非常階段からでは、これがとても困る。

極軸合わせ

極軸合わせはまあまだあまりそれほど真剣にやっていない。

AVXにはポーラーアライメントという機能があって、北極星が見えなくても極軸が正確に合わせられるという。基準星でTwo-Starアライメントした後、何かの星を自動で導入した後、ポーラーアライメントを選ぶと、鏡筒が「極軸が正しければ向いているはずの角度」に動くので、そこでコントローラの操作ではなく架台の極軸調整のツマミを動かして架台の向きを合わせると、極軸が正確に合っているはず、ということ。

これを確認のために、北極星が見えるところで試してみたのが、これまでのところでは、

・極軸望遠鏡で正確に北極星を入れた後、普通にアライメントをした後、ポーラーアライメントをすると、マウントの向きを合わせよと言われるところで最初からズレは全くなかった。当然か。

・極軸は正確でないままアライメント後、ポーラーアライメントをしてマウントを調整してから、極軸望遠鏡を覗いてみると、全然合っていなかった。これじゃダメではないか。最初のアライメントで精度が出ていなかったのか、架台の水平は正確には確認していなかったが、正確でないといけないのか。

といったところ。まだもう少し色々やってみないといけなさそう。

もっと簡便には、他所のどこかのblogで読んだのだが、惑星アライメントやOne-Starアライメントで合わせる際に、最初に自動的にその星の方向に向いたところで、実際の星とのズレを、コントローラで合わせるのではなくマウントの極軸調整ツマミで合わせてやれば、極軸が正しく合っている状態に近づくはず、というもの。最初のインデックスの位置が正確でないとうまくいかない気もするが、確かにコントローラでズレを合わせただけよりは追尾ズレが少なくなるような気もする。

また、最近は電視極軸望遠鏡といった製品もあるようだが、惑星撮影ではなく電視観望に使ったSharpCapには、極軸合わせの機能もあるようなので、せっかく惑星用カメラがあるのだから、それも試してみたい気がするが、適当な焦点距離の対物レンズをつけないといけなさそう。同じく惑星用カメラを使ったガイド撮影用の鏡筒などもあるので、そういうのを使えばいいのか。

クランプ

赤緯軸のクランプレバーが、鏡筒の方向によって、モーターケースがでっぱっている付近に来ると、しっかり締めた状態では、レバーとモーターケースの隙間がなくて指が入らず、とてもクランプが緩めにくくなってしまう。コントローラを使って別の場所に回転させてからクランプを緩めればいいのだが、それでは本末転倒だ。

クランプ
元のクランプを締めた状態

クランプレバーのネジを緩めて外してみると、中の軸は写真のような四角形で、90°ごとにしか向きを変えられないのかと思ったが、レバーの裏側は細かくミゾが切ってあって、18°ごとに向きが変えられる模様。

クランプ クランプ
クランプレバーを外した状態と、外したレバーの裏側

一段ズラして止め直すと、ちょうど指が入るようになって使いやすくなった。緩めた側は、レバーのでっぱりが本体の盛り上がったところに当たって止まるようになっているので、同じところまでしか動かない。結果、レバーの動く範囲が狭くなったことになるが、緩めた方はそこまでいくまでに十分緩んでいるので、まあ問題ない。

クランプ クランプ
調整後のクランプを締めた状態と、緩めきった状態 (調整前後同じ)

三脚

三脚の真ん中の赤道儀の取り付け用兼アイピーストレイ固定用のシャフトが、赤道儀を取り外した後は外れないようにひっかかってはいるが固定はされていないので、ぶらぶらしてしまう。三脚を畳んで運ぶときに、これが揺れて三脚のパイプに当たって、カランカランと大きな音を立ててしまう。片付けるときに100円ショップのマジックテープのベルトで三脚の脚の1本に縛りつけて音が出ないようにすることにした。

PowerTank Lithium

赤道儀本体の話ではないがついでなので。PowerTank Lithiumの蓋の部分が、元から妙なつくりだなとは思いながらも厚い軟質プラスチック製の蓋をめくりあげるようにして使っていたが、根本の方の蓋をつなぎとめている細い部分が、2本あるうち片方はすでにちぎれていて、もう一方もちぎれる寸前だ。ここを引きちぎるような力をかけないと蓋は開けられないつくりになっている。細い部分がもっと長くて、蓋が完全に本体から外れてぶらんとした状態になるのならともかく、そうでもなく、一体どうしてこんなつくりなのかよくわからない。そのうち残っている方もちぎれてしまうのは必至のように思えるが、蓋自身は本体上部に結構きつめにはまるので、まあそのまま使っていてもそれほど不都合はないかもしれないが。

PowerTank Professional

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ジャコビニ・ツィナー彗星

前の記事で星の写り方のサンプル写真として利用した写真、中央に写っていたのは、ジャコビニ・ツィナー彗星 (21P/Giacobini-Zinner)。地球に近づいていて、これからもう少し明るくなるはず。現在、カシオペヤ座の端の方に見えて、だんだんぎょしゃ座の方に向かって動いている。地球に近いと彗星の見かけの動きもが早く、5分間やそこらの間でも、前の記事の写真のように普通にコンポジットすると彗星だけ流れてしまう。

以前紹介したことがあるように、メトカーフ・コンポジットという手法を使うと、彗星の動きに合わせて画像をズラし、恒星は流れた像になるが彗星だけはきれいに重ねた像になる。StellaImageにはこの機能があってこれまでも利用してきたが、バージョン7までは彗星の位置や移動量を別途StellaNavigotorなどから読み取って計算し、画面内で天の北がどちらを向いているかなども入力しないといけなかった。バージョン8で、これがStellaNavigatorと連動して自動的に設定してくれるようになった。しかし、これはバージョン8から追加された自動処理モードの場合のみで、旧来のバージョンと同じ詳細編集モードのときは、メトカーフコンポジットも旧来と同じパラメータを手入力しないといけない。NexStar 5SEで連続撮影した写真をStellaImageの自動位置合わせに食わせると、どうもいつも失敗してしまう。たぶん追尾ズレというより、架台が華奢なのでカメラのシャッターショックでコマごとにあちこちにブレているせいかなと想像している。仕方ないので、いつも手動で基準星を指定して重ね合わせていたので、バージョン8でも自動処理モードが使えず、メトカーフコンポジットも自動処理の恩恵にあずかれなかった。

今回AVX赤道儀に載せて撮った写真は、自動処理に食わせてみるとエラーなく位置合わせしてコンポジットしてくれた。そこでメトカーフコンポジットも自動モードでできるので、彗星名を選び、カメラ名と焦点距離を入れるだけでOK。とても楽になった。軌道情報をひっぱってくるだけでなく、撮影画面の向きまでパターンマッチングで決定してくれるようでとても楽だ。

というわけで、レデューサなしで撮影した画像をメトカーフ・コンポジットしたものを、更に画像を半分にトリミングしたものをこちらに載せておく。

他で見る写真では、青っぽい色がちゃんと見えるのだが、この写真ではなぜかほぼ真っ白。尾はぼんやりと右向きに出ているが、頭の部分はなんだか少し前に吹き出しているような妙な形に写っているが何だろう。恒星の軌跡が少し途切れているのは、連続撮影した中に1枚だけたまたま人工衛星が通ったのか光の筋が1本盛大に入ってるものがあったのを除外したため。

21P
21P/Giacobini-Zinner 2018/08/14 01:47~ Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO3200, 30sec x 10, StellaImage8 Metcalf composite, Photoshop CC, trimming

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Celestron EdgeHD 800用 .7x Reducer Lens

セレストロンのシュミットカセグレン鏡筒のレデューサはCシリーズのものは各サイズ用共通なのだが、EdgeHDのシリーズはそれぞれ専用になっている。Tアダプターの方は、9¼”, 11”, 14”用は共通だが、8”のEdgeHD 800用だけ専用のものになっている。レデューサを使わないときと使うときのそれぞれの適正な焦点位置に合わせるために、Tアダプタは途中でTネジで2つに分離するようになっている話は前の記事で触れた。

レンズ筒 (というのか?) は全部が肉厚の金属製で、ずっしり重い。望遠鏡への取り付け側は、EdgeHDシリーズに付属のビジュアルバック (通常のシュミカセ鏡筒用のものと異なる) やTアダプタと同じ、10角形のデザインになっているが、締め付けリング式ではなく、本体ごとネジ込む。お尻の方は同じオスネジになっていて、Tアダプタの、望遠鏡に取り付ける部分が同じように取り付けられる。前後のレンズ蓋も総金属製で、キャップ式ではなくネジ込み式。

Reducer Lens .7x - EdgeHD 800 Reducer Lens .7x - EdgeHD 800

望遠鏡への取り付け状態はこのようになる。

まずは、眼視用にビジュアルバックを取り付けてアイピース (天頂プリズム) を取り付けた状態。

EdgeHD w/ Eyepiece

レデューサなしでの直焦点撮影のために、Tアダプタを介して一眼レフカメラを取り付けたところ。

EdgeHD w/ DSLR Camera

レデューサを取り付けて、延長部分を取り外したTアダプタを介して一眼レフカメラを取り付けたところ。

EdgeHD w/ Reducer & DSLR Camera

このように、レデューサの使用/非使用によってTアダプタの長さを調節するのだが、その割にはピントを合わせるには同じ主鏡位置ではなく、ピントツマミをぐるぐると相当回さないとカメラにピントが来ない。そういうものなのか。

撮影例は、いちおうファーストライトの記事で載せているが、月の写真だったので、今回は星の写真を試しに撮ってみた。主目標は彗星で、本来はメトカーフコンポジットをするところだが、星の写りをみるためにまず通常のコンポジットをしてみた。彗星の部分は無視して見てもらいたい。

w/o Reducer
without Reducer 2018/08/14 01:47~ Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO3200, 30sec x 10, StellaImage8, Photoshop CC

w/ Reducer
with Reducer 2018/08/14 02:08~ Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), 0.7x Reducer Lens, prime focus, ISO3200, 30sec x 15, StellaImage8, Photoshop CC

フラット処理はしないで、同じ程度に階調強調しているが、レデューサの方は隅の方に結構周辺減光が出ている。一方、レデューサなしの場合は、これよりも相当階調強調をしても周辺減光はわからない。星像は確かに周辺でもあまり劣化はないが、左下の方だけちょっと変なコマのようなものが出ている。

今回はタイマコントローラのプログラムをせずにカメラ本体で設定できる最長シャッター速度の30秒で撮影したが、追尾の流れはみられなかった。NexStar 5SEでは、15秒や8秒でもぴたりと止まらないハズレの発生確率が結構あったのに比べると、さすがにちゃんとした赤道儀だけのことはある。実は比較的赤緯の高い場所だったせいもあるが。ガイドしないで何秒まで平気か試してみればよかった。

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Tリング ― VixenとCelestron

新しい望遠鏡EdgeHD 800で、一眼レフで直焦点撮影するための、望遠鏡側に取り付けるTアダプタは鏡筒とセットで安くなっていて一緒に買ったわけだが、カメラと接続するための各カメラメーカーのマウントに対応するためのTリングは、これまでNexStar 5SEで使っていたものが共通に使えるので、それを持ってくれば撮影はできる。天体撮影に使う一眼はキヤノンの60D 1台だけなので、Tリングもひとつあれば十分ではあるのだが、普段からNexStar 5SE用のTアダプタとTリングは組み合わせた状態でNexStar 5SEと一緒に置いてあるので、EdgeHD 800で撮影するためにいちいちそちらから取り外してきて、付け直すのはどうも面倒である。そこで、EdgeHD 800用にも、こちらのTアダプタと一緒に組み合わせておいておくように、もうひとつTリングを購入することにした。

話は逸れるが、他にも、天頂プリズムは標準でついてきたものは使わずに正立のものをNexStarで使っていたが、EdgdHDでも眼視のときはやはり正立天頂プリズムを使いたくて、とりあえずNexStarで使っていたものを持ってきているが、これも普段は天頂プリズムと低倍率のアイピースとを望遠鏡に一緒にしておくようにしているので、いちいち取り替えると面倒なので、もうひとつ正立天頂プリズムを買おうかどうしようか、こちらはTリングよりも高価なのでちょっと悩んでいる。それ以外には、共通のものではないが望遠鏡に周辺で使うもので、フードだとか太陽フィルタだとかバーティノフマスクだとかいったものをNexStarには用意していたが、新しい望遠鏡にもそれぞれ必要かと思うと、望遠鏡本体を買っただけでなく色々出費がかさむ。

話は戻って、Tリングを購入するにあたってだが、TアダプタとTリングの接続部はTマウントという、径42mm、ピッチ0.75mmのネジになっていて、ここを共通にするこによって望遠鏡の違いとカメラマウントの違いを吸収するようになっている。つまり、Tリングの方は望遠鏡メーカーには依存しないので、Celestron製のものでなくてもVixenから出ているものでもCanon用のTリングなら同じように使える。NexStarのときは、Celestronの正規品よりもVixenのものの方が安かったので、Vixenのものを購入していた。今回は、AmazonでCelestronの並行輸入品というものでVixenのものより安く出ているものがあったので (記事を書いている現在は安くなくなってしまっている)、せっかくCelestronの望遠鏡を使っているのだから、CelestronのTリングにしてみるかと、そちらを購入してみた。

Tリングなんて仕様は同じなのだから、Vixen製でもCelestron製でも同じようなもので、天文機器業界でよくあるように、そもそも元は同じものをOEMで別ブランドで売っているだけといったものだろうと想像していたのだが、届いてみると、これがちょっと違うものだった。確かに、そもそも、うちにあるVixenのものにはJAPANと書いてあって、Amazonの商品画像ではCelestron製は正規品も並行輸入品もTAIWANと書いてあって、別モノと予想してしかるべきだった。現在のVixenのもののAmazonの画像にはJAPANの文字は入っていない。

さて現物の裏表の写真がこちら。それぞれ左側がVixen、右側がCelestron。リングの太さが微妙に違うのと、カメラに装着するときの向きの目安にするオレンジ色の印のありなしがぱっと見で気がつく。VixenのにはCANON(AF)、CelestronののはCANON(EOS)と書かれているが、Amazonの画像では、Celestronの並行輸入品には(AF)、正規品には(EOS)と書かれていたがまあこのへんはよくわからない。

ビクセンとセレストロンのTリング ビクセンとセレストロンのTリング

太さの違いはどういうことかというと、どうもCelestronのものはEdgeHDのTアダプタのフランジの部分ときっちり同じ太さに揃うように合わせてあるようだ。まあ、揃っていたからといってどうというわけでもないのだが。

EdgeHD 800用TアダプタEdgeHD 800用Tアダプタ + Tリング

NexStar用というかEdgeHDでないシュミカセ鏡筒共通のTアダプタの方にはフランジはついてないので、これまでVixenのものを取り付けていても特に不自然さは感じていなかった。ちなみに、EdgeHD用のTアダプタは、そのまま直焦の場合は上の写真の状態で、レデューサを使う場合は焦点の位置が変わるのに合わせるために、途中に継ぎ目があって、そこを外すと、そこもTマウントのネジになっていて、短くなったところにTリングを取り付けて使うようになっている。どうもこの短いものの長さは、通常シュミカセ用のTアダプタと同じ長さのようだ。

シュミカセ用Tアダプタ

もうひとつの違いが筒の向きの印で、これはCelestronが不親切。Celestronにも何か小さなネジがその位置についてはいるのだが、とてもわかりにくい。まあ、自分でペイントでも塗っておけばいいのかもしれないが。目印から少し離れたところに、両者とも切り欠きがあるので、暗いところでは手触りでこちらを目安にした方がいいかもしれない。

ビクセンTリングセレストロンTリング

それだけでなく、よく見るとその右側にもうひとつ違いがある。Vixenのものには、更に右側に小さなネジが出っぱっているが、Celestronにはこれがない。これはカメラのマウントから取り外す際に緩める方向にネジったときに、マウントの3方向のツバがちょうど外れる位置まで戻したときにそれ以上回転しないで止まるようにするためのもの。Celestronのはそのままぐるっと回り続けてしまってちょっと困る。手前に引きながら回転させれば、ちょうど抜けるところまで回転させたところで抜けるのでまあそれほど問題なわけでもないが、だいたい他のカメラレンズでもカチっと当たるところまで戻してから引き抜くようにするのに慣れていると、ちょっとやりにくい。

そんなわけで、今回も全く同じVixenのものを買っておけばよかったかなぁと、少し後悔している。

 

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ポラリエ強化型

ポラリエ強化型

私のポラリエにはこれまで、極軸合わせ用の微動雲台TK-ALZM2と、雲台ベースPCB-EQ2を導入して強化を図ってきた。これで、長めのレンズを載せても極軸あわせをしっかりできて追尾精度もよくなる。軸周りのバランスはバランスウェイトできっちり撮れるはずだが、カメラを自由雲台で取り付けると、カメラ自体は三脚取り付け穴からレンズが伸びている側に重心があって、レンズに三脚座がついているような場合でなければ、カメラの前後方向にアンバランスになってしまい、結果として全体のバランスが悪くなっていた。また、自由雲台だとカメラの向きが自由に向けられる分、どうにも向きが定まりにくい。望遠で撮る場合は星景写真のように地平線に合わせるわけではないので、天の赤道座標にきっちり南北が合わさっていた方がいい。テレスコ工作工房さんからは、自由雲台の代わりに軸上だけ回転する簡易赤緯軸ユニットというのが売られていた。そうすれば、ポラリエ自体の赤経軸とでちょうど赤道儀のように向きを合わせやすくなる。しかし、それだけではカメラ自体のバランスの問題は解決しない。また、取り付けネジの向きにそのままカメラを取り付けると、カメラの画角が天の赤道座標の南北に対して長手方向になってしまい、撮影対象によるが、東西に長く撮りたい場合は自由雲台なら90°傾ければそうできないこともないが、カメラの取り付けのバランスがひどく崩れてしまう。

一方、ビクセンからは純正で極軸合わせ用の微動雲台や、マルチ雲台ベースなど、テレスコ工作工房のものと多少つくりは違うが類似の機能を持ったステップアップ用のオプションパーツが発売になっている。それに加えて使用する用の、クイックリリース/パノラマクランプとクイックリリースアングルプレートというのも用意されている。これを使うと上記の色々が解決しそうである。

ところが、パノラマクランプやアングルプレートは何も特別なものではなくて、一般に同様のものが色々売られている。一流メーカー製のものは高価だが、メーカーを問わなければはるかに安価で同じようなものが手に入るので、ビクセンさんには悪いがそれらを利用して同様のことをすることにした。

まずはパノラマクランプ (購入価格¥3,079)。

パノラマクランプ パノラマクランプ

台座に対してクランプ部が360°回転して自由なな位置で固定できる。ここでは特に必要ないが、底側の三脚ネジはアダプタネジが装着されていて、1/4だけでなく3/8でも使えるようになっている。

次はL型プレート (購入価格¥1,199)。

L字アングル L字アングル

これはカメラボディに底面のネジで取り付けると、カメラボディの左側にも雲台に取り付けられる部分ができて、カメラを横倒しに取り付けられるようにするもの。

ビクセンのセットは上記2つで構成されているが、更に、カメラの前後バランスをとるために、スライドプレートも用意した (購入価格¥1,699)。

スライドプレート スライドプレート

長いプレートの端にアルカスイスクランプがあって、長いプレートの側面はすべてアルカスイスプレートになっているので好きな位置でクランプできる。

さて、これらを順番に組み立てていく。

ポラリエ強化型組み立て ポラリエ強化型組み立て ポラリエ強化型組み立て ポラリエ強化型組み立て ポラリエ強化型組み立て

物の載っている順に写真にしたが、実際は最後のカメラとL型プレートは、先にL型プレートをカメラに取り付けておいてから、スライドプレートに載せる形になる。

それぞれの部品はアルカスイスクランプ仕様になっているので、バラバラに購入したパーツどうしだがきちんと組み合わせて使用でき、他の用途にも応用できる。

ただし難点もいくつか。まず今回購入したパノラマクランプ。台座をしっかり固定しようと締め付けると、回転部分を締め付けてしまうようで、肝心の回転がとても重くなってしまう。パノラマクランプを選ぶときは別のものを探した方がいいかもしれない。その点以外は、安価なパーツを購入したもののいずれもつくりはしっかりしていて、組付けなどには問題はなかった。

また、ポラリエ雲台ベースへの取り付けに自由雲台を使った場合は、高さがあるのでカメラは結構赤経軸から遠くなっていたが、パノラマクランプは薄型にできているので、カメラが近くなってしまう。それによって、回転方向によって色々ポラリエ本体にぶつかってしまう場合がある。パノラマクランプのクランプを締めるツマミは長くてぶつかりやすいので、ぶつかる場合は180°反対に向けてスライドプレートをクランプしなおす必要がある。カメラ自体も方向によってポラリエ本体にぶつかってしまうので、撮影方向が限定されてしまう。パノラマクランプの下に三脚スペーサーを入れて、少しかさ上げしてやるとよいかもしれない。

カメラの赤経軸からの距離の関係で、自由雲台を使ったときはカメラ+レンズが重いとPCB-EQ2付属のウェイトとウェイトシャフトではバランスが取り切れなかったので、ウェイトシャフトを追加で用意していたが、こちらのシステムでは逆にカメラが近くなったため、ウェイトはもとの長さのウェイトシャフトだけで大丈夫な位置になった。しかし、パノラマクランプをかさ上げしたらやはりシャフトの延長あるいはウェイトの追加が必要だろう。

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RegistaxのWavelet設定値

惑星画像はこれまでずっとRegistaxで処理していて、スタッキングはAutoStakkert!3に乗り換えた後も、Wavelet処理はRegistaxでやっている。

Wabelet処理には各レイヤーごとの値とそれぞれにSharpenとDenoiseの値の調節があって、あちらを調整するとこちらも調整する、となって適切な値の組み合わせをみつけるのはなかなか大変だ。

Registaxを使い始めた頃に、適当にいろいろやって、まあこんな感じでそこそこいいかなと思ったところから、その後は多少の調整はしても大幅にはいじらないパターンでずっとやってきていた。画像周波数を細かいものから荒いものまでレイヤーごとに処理するのが特徴なので、各レイヤーに適度な値を設定して、Sharpenはあまりかけず、そのためDenoiseもあまり必要ないという感じの設定だった。NexStar 5SE + EOS60Dで撮影していたときは、画像のサイズがあまり大きく撮れないので、レイヤーはDyadicで4つめまでかけていたが、機材が変わって画像サイズが大きく撮れるようになると、そのまま同じパターンの適用では少し甘く思えたので、4つめまでの設定と同じ感じで5つめまで入れるようにするとといい感じだった。

ところが今月の星ナビで、火星大接近に合わせて掲載されていた惑星撮影の記事で見てみてると、レイヤーはほとんど1つめだけで処理するのでよいのだという。そのかわり私のように中途半端な値をかけるのでなく、めいっぱい100まで上げている。その上でSharpenもずいぶんかけて、それでザラザラになるのを打ち消すようにDenoiseもずいぶんかける。自己流でやっていたのと比べて全く違う設定なので目からウロコだった。

実は自己流でもそこそこの画にはなっていたのだが、最後いくら追い込んでも模様がくっきりしたままザラザラ感を消せなかったのだが、この方法を試してみると、それがずいぶんなめらかになる。

ちょうどその記事を読む少し前、IRフィルタの比較の撮影をした日に、火星を撮る前に土星も撮っていて、これがもうこれで最高と思うくらいの写りの土星の画像が撮れて喜んでいた。その日のシーイングなどによって撮れ具合は全然違って、EdgdHD 800にしてからもそれほどでもないなぁと思う程度のものしか撮れていなかったのが、この日はとてもよい写りで、輪もくっきり、北極近くにはポーラーストームのようなものも写っているし、輪の手前側にはカッシーニの間隙から土星本体の南半球の部分が透けて見えてるのがよくわかる。しかし、確かにそれでもザラザラ感は残った画像ではあった。

Saturn 5Layers
Saturn 2018/07/29 20:50 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed. Duration=240s, Shutter=90ms, Gain=368 (61%), 50% of 2,667frames

それを、Wavelet処理のところからそのやり方で処理し直した結果がこちら。ザラザラ感がとても改善されて、更によい画像になってびっくり。

Saturn 1Layer
Saturn 2018/07/29 20:50 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed. Duration=240s, Shutter=90ms, Gain=368 (61%), 50% of 2,667frames

まあまだ少しモラモラした感じがしなくもないが、今後はこの新しいパラメータ設定の方針で、よりよい設定を目指していこう。

思い返すに、惑星の画像処理は元画像がある程度以上よく撮れていないとうまくいかないが、NexStar 5SE + EOS 60Dで撮っていたときは、やはりそれほどクォリティはなくて、それだとこの1レイヤー目だけの方法だとうまくいかず、それで私がこれまでやっていた方法に落ち着いたものと思う。ちょうど機材を変えたこのタイミングでこの記事を読んで設定を見直せなかったら、従来どおりのやり方の延長のまま続けていたかもしれない。

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EdgeHD 800 諸々

まだ使い始めたばかりで、使い込んでいるわけではないが、ぱっと見で、感じたことなど諸々。

ハンドル

鏡筒には手前下の部分にハンドルというか取っ手がついている。望遠鏡の鏡筒というのは筒状の形状なだけに手ががりがあまりなくて持ちにくいものだし、シュミカセ鏡筒は片側に鏡があるのでかなり重量バランスが偏っている。その重い側に持ち手がついているので、運ぶ際にはそこを握るとずいぶん扱いやすい。ハンドルを持って、対物側が下を向くようにぶらさげて運ぶと楽だ。箱にしまうときは横倒しの状態だが、ちょっと運んでいる最中に置いておくときは、蓋が付いている状態なら、そのまま蓋を下にして床に置けばいい。蓋はプラスチック製なのでこすれて傷がつくかもしれないが、まあ蓋だから構わないだろう。

取っ手 取っ手

その対物側の蓋は、見た目NexStar 5SEのC5鏡筒についているのを相似形に大きくしたような、真ん中に大きくセレストロンのロゴがレリーフで入ったものだが、大きく違うのは、C5の蓋は周辺にあるプラスチックの爪の弾力だけで止まっているのに対して、こちらは鏡筒側の突起をフタの溝にあわせてはめ込み、少し回転させて止めるようになっている。これはありがたい。C5鏡筒ではすぐにゆるゆるになってしまって、普段はパーマセルテープで落ちないように貼り付けているが、そんな心配はしなくてよさそうだ。

蓋

ファインダー

付属のファインダーは9×50の比較的大きめ、倍率も高めのもの。太い鏡筒に、接眼部だけ急に細くなったデザインは、他社製でも色違いだったりするが同スペックのファィンダーにも見られ、みんな同じところのOEMだろうか。

ファインダー座は、専用の(?)、ファインダー用としては割と大きめなアリガタ・アリミゾで着脱できるようになっている。光軸調整は、前方はゴムリングで保持し、手前側には90°の角度に配置したネジと、それらに135°向いたバネ式の押さえになったタイプ。しっかり固定されているわけではないので、付け外ししているうちに微妙に狂ってきそう。

ファインダーファインダー

NexStarではドットファインダーだったから、こちらでは倒立像なのと覗き込まないといけないのとで、だいぶ使い勝手が違うが、逆に、肉眼では見えない暗い星が見えるので、ファインダーを覗きながら星をたどって対象をみつけるという、普通のファィンダーの使い方ができる。本当なら正立ファインダーの方がうれしい。セレストロンのオプションで同じく9×50の正立ファインダーがあるが、これは正立天頂プリズムを利用したもので、のぞく向きが90°折り曲がるが、使い勝手はどうだろう。

ピント合わせは接眼付近に回転部がなくてどうするのかと思ったら、対物側のギザギザのついたリングを緩めると対物レンズ部がネジの回転で前後し、リングを締めて固定する方式。

付属アイピース

NexStar 5SEには25mmのPlösslアイピースがついていたが、こちらに付属するのは40mmのPlössl。f=1,250mmに25mmでちょうど50倍だったのに対して、こちらはf=約2,000mmに40mmでやはりちょうど50倍となる。ちゃんと考えてあるのかと思ったが、NexStar 8SE (やはりf=約2,000mm) についているのは25mmのアイピースのようだ。

同じ倍率だが、NexStar 5SEで25mmで見るのと比べて少し覗きにくい感じがする。

実は、NexStar 5SEを使っているときに、もっと倍率低くで広い視野が見られたらと思って、オークションで出ていたセレストロンの40mmPlösslという同じスペックのアイピースを入手していて、ちょっとダブってしまっている。オークションにたくさん出ているところや、白い紙箱の梱包だったことなどから、きっとこういう鏡筒にセットでつけるもので、何らかの事情でセットにつけずに余ったものがオークションに流れているのか何かで、EdgeHD800についてくるのは全く同じものじゃないかと思ったりしていたのだが、比べてみると、外見のデザインだけでなく、長さも少し違い、似て非なるもののようにも思えるが、覗き込んでみるとレンズの位置は同じようにも見える。オークションに出ているのはどういう由来のものなのだろう。

写真は左が今回EdgeHDに付属のもの。右が以前にオークションで入手したもの。

接眼レンズ 接眼レンズ

付属天頂プリズム

付属の天頂プリズムは、NexStarについていた (が、今は使っていない) のと同じ、Star Diagonal-1 1/4″ #94115-A。なのだが、裏面の銘板の文字の向きが逆である。まあ長方形の板をネジ止めしてあるだけなので、組み立てるときにどちらを向いても正しく取り付けられるし、性能に影響のあるものでもないのだが、果たして無頓着にどちらの向きも混在しているのか、いつかの時点で何らかの理由があって向きを変えたのか?

アイピースの固定ネジの位置も違っているが、これは筒のねじ込みがどこで止まるか次第か。また、接眼レンズ側の蓋の形状が全く違うものだ。

写真左が今回EdgeHDに付属のもの。右がNexStarに付属していたもの。

付属天頂プリズム 付属天頂プリズム

口径と焦点距離

アイピースのところで、「約2,000mm」と書いたが、正確には2032mmとなっている。口径も約20cmだが、正確には203mm (203.2mmではない) とある。これは、基本インチ単位の寸法で、型番に数字の8が入っている通り、口径が8インチ=203.2mm。光学系がF10の設計でf=2032mmということである。メートル法できっちりの値で設計して、おおよそ近い値のインチ数で名前として呼んでいるというわけではなさそうだ。(まあ、細かい話だが。)

ところが、鏡筒の対物側の口の周囲に書かれているのは、8″(203mm) FL 2000mm F/10 となっている。なぜ同じ場所で統一がとれていないのか。これでは計算が合わない。

対物側C5

8インチの場合はその鏡筒の表記を除いて端数まできちんと表記するので統一されているようだが、NexStar 5SEの場合は、f=1270mm, D=127mmではなく、f=1250、D=125mmと表記されているのが多いようだが、やはり鏡筒の表記は、5″ (127mm) FL 1250mm F/10 という混成になっている。

そういえば、HdgeHDの機種名も、ここではずっとEdgeHD 800と記載しているが、EdgdHD 8とか、EdgeHD 8″ という表記もみかける。どれが正しい名前なのか。

光軸

反射系の望遠鏡では必ず光軸合わせの話が出てくる。シュミカセの場合は基本的に調整する場所は副鏡の傾きだけだが、調整用のネジをツマミのついたものに取り替えるものが売られていたりする。そんなにしょっちゅう調整するものか。NexStar 5SEを使っている分には、それほど気にしたことはなかった。ピントズレの像を見る限りはそんなにひどくズレているということはないように思う。

こちらも購入したばかりで最初からズレているようではダメだが、いちおうピント内外像を確認しておくと、まあシビアなことを言わなければ問題なさそうに思う。これが、時間とともにすぐにズレてきてしまうのかどうかだ。

ミラーシフト

ミラーシフトはシュミカセでよく言われること。シュミカセでは一般にピント合わせは、ケプラー式やニュートン式で一般に用いられているようなラック・ピニオンなどの仕組みで接眼部を前後させるのではなく、接眼部は固定して主鏡自体の位置を鏡筒の内部で前後に動かすことよって行う。移動の操作は鏡の中心軸から外れたところにあるツマミで内部につながっているシャフトを回転させることによってシャフトのネジで鏡が前後するようになっている。中心軸から外れたところを押し引きして移動させるため、その際に鏡が少し傾いてしまう。

低倍率の眼視なでどはあまり気にならないのだろうが、惑星撮影のために超拡大していると、わずかの傾きでも視野が大きく移動してしまう。最初はADCを入れているせいで光路がわずかに折れ曲がるのがピンのズレによって変化するのかな、などと思ったが、そうではなく、ミラーシフトなのだった。

ピントを合わせようとすると対象が画面から移動してしまうのでとてもピントが合わせにくい。また、行きと帰りで逆に傾くので、普通のカメラのピントを合わせるときのように、合焦点の両側を等間隔になるように前後させながら中央で止めるというピントの合わせ方ができない。

NexStar 5SEでアイピース拡大撮影をしていたときは全然気にならなくて、シュミカセではミラーシフトが云々の話をきいても、そんなにたいしたものでもないだろうと思っていたが、たいしたものだった。基本的に構造は同じなので、NexStar 5SEでも起きていたのかもしれないが、鏡筒が小さいからか、拡大率が小さかったからか、架台が安定が悪くてそもそもピントツマミに手をかけているだけで振動してしまっていたせいでミラーシフトのズレがわからないくらいだったのか。

こんなにひどいのであれば、みなさん別のフォーカサーを取り付けたりするのもわかる。とはいっても結構いいお値段するものだし、とりあえず現状のままなんとかうまく使っていくことにしておく。

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ASI290MCで惑星撮影 (その7) ― IR850nm Pass Filter

IR 850mn Pass Filter

さて、ここからは鏡筒がEdgeHD 800に変わってからの、ASI290MCでの惑星撮影の話に戻る。またオプションをひとつ追加購入した。UV/IRカットフイルタの記事の最後にいつか試してみたいと書いた通り、赤外線のみを通過するフィルタ、ZWO IR 850nm Pass Filterを試してみることにした。ASI290MCの赤外波長部分の特性を利用して、赤外線領域のモノクロカメラとして利用するためのフィルタである。特性のグラフはその記事に載せた通り。

本来なら大接近で大きく見えて火星表面の模様も仔細にくっきりと見えるようになるはずだったところ、火星上で発生している砂嵐によって、眼視ではもうほとんどわかるかわからないかくらい、カメラで撮影して画像処理しても、いまひとつ眠い画像にしかならない。IR画像ならばもうちょっとくっきり見えるのではないかと期待した。このフィルタも、UV/IRカットフィルタや、レデューサと同じく1.25″とサイズが小さいからかお値段もあまり高くないので、割と気軽に購入できる。このフィルタを購入するだけで、手持ちのASI290MCで赤外線撮影ができるとは、なんだかお得な感じだ。

晴れて火星が見える日を待って早速テスト撮影。火星大接近の2日前だ。FireCaptureの設定で、通常のカラー撮影時は、もともと可視光領域では青色の感度が少し低いので、青色を強くする設定になっているのを、赤外線撮影時には赤・緑と同じ設定にしておく (90→50)。保存画像形式は、もともとデベイヤーしないで保存する設定にしているのでそのままでOK。AutoStakkert!3で読み込むときに自動的にモノクロ画像だと判断してくれた。

赤外線部分に感度があるといっても、本来の可視光部分の感度よりは低いので、このフィルタ経由ではかなり画像が暗くなる。可視光では Shutter=15ms, Gain=280 (46%) だったところ、赤外では Shutter=60ms, Gain=370 (61%) で撮影した。

これまで通り可視光RGBで撮影した画像と、IRフィルタで撮影した画像がこちら。

可視光RGBIR850
Mars (Visible RGB) 2018/07/29 23:35 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed. Duration=180s, Shutter=15ms, Gain=280 (46%), 50% of 4,857frames

Mars (IR) 2018/07/29 23:29 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO IR850nm Pass Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed. Duration=180s, Shutter=60ms, Gain=370 (61%), 25% of 3,001frames

画像処理のさじ加減にもよるのかもしれないが、IRの方がコントラストがよく見えるし、細かい模様もよく写っている。画面左で上に突き出ている暗い部分が大シルチス。その下方の丸っこい明るい部分がヘラス盆地だが、ここは他の明るい部分よりも更に明るい。それが、IRだともっときわだって明るく見える。右の端近くに小さく上に飛び出ているキンメリアのしずくは、IR画像では確かにわかるが、可視光ではあまりよくわからない。

IRの方がよく見えるのは、コントラスト的な問題だけなのか、ベイヤー配列でなく全ドットを輝度の解像度に活かせる点から解像度が高くなっていることも寄与しているのかはよくわからないが、まあそこそこ効果はあるようだ。

一方、もちろんIRのみだとモノクロ画像になってしまうので、火星という感じがしなくなるのも否めない。LRGB合成をするように、IRをL成分のようにして合成するとおもしろいのかもしれない。

ところで、今の所フィルタを切り替えるには一旦カメラをADCから引き抜いて、カメラのスリーブにねじ込んであるフィルタを取り替えて、またADCに挿入するという作業をしている。このADCにカメラを再度差し込むのがきつくて少し苦労する。ねじりながら入れようとするとADC側の受け口とADC本体をつないでいるTネジの方が緩んでしまったりする。先端さえ通ればあとはすんなりいくのだが。

また、そうやって取り付け直しているので画像の向きが取替前後でぴったり一致しない。カメラの向きを変えないでフィルタを取り替えるにはフィルタホイールを使う必要がある。するとまた光路長が変わってしまう。まあ、今の所、そこまですることもないか。

ちなみに、このようにコントラストよく見えるようになるのなら、普通のアイピースに取り付けて眼視で使ってみたらどうだろうと一瞬思ったが、人間の目に赤外線は見えないので真っ黒なだけだった。

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