2015年8月 のアーカイブ

正立天頂プリズム購入

さて、そんなわけで自分も正立天頂プリズムが欲しくなったので購入してみることにした。前の記事で調べたのは望遠鏡にセットになって売っているものだったが、単品で売っているものにはどんなものがあるか。

ビクセンは望遠鏡に付属させてはいるが、単品ではオプションのラインナップに見当たらない。

ケンコー・トキナーは自社ブランドのスカイエクスプローラーには付属させていないが、単品で売っている! かといって正立天頂プリズムが付属しているミードのものではなさそうだ。しかも、オプション品には正立天頂プリズムだけがあって、通常の天頂プリズム/ミラーや、45°正立プリズムはないというのも妙だ。品名には「正立」と入っておらず、説明でも正立であることを特に強調するでもなく、さらっと「スリーブ径31.7mm(1.25インチ)の正立天頂プリズム」と書いてあるだけ。通常の天頂ミラーと間違えそうだが、アマゾンのコメントを見ると、間違いなく正立のようだ。

笠井トレーディングでは、安価なものデラックス版の2通り、そして2インチ版もある。更に、アミチプリズムではなく、ペンタプリズムを使ったものまである。

他にはアマゾンで見つかるWilliamOpticsのもの

こんなところか。正立天頂プリズムに用いられるダハ面のあるプリズムは、双眼鏡で使われるのに比べて高い倍率で見られることもあって、相当な精度が必要で、安物ではダメで高級品でないといけないという話もあるが、まあ知らずに覗いてみたら正立だったさほど高級品でないもののはずな正立天頂プリズムでも、さすがにぱっと見てプリズムの稜線が見えて気になるというほどのこともなかったので、最初から値の張る高級品には手を出さず、まずは笠井の安い方のものを試してみることにした。

それで購入したのが写真右側、31.7mm 90°正立プリズム ¥3,500。左側は、元々NexStar 5SEに付属してきたセレストロンの通常の天頂プリズム。外見的にはそんなに変わらない。

天頂プリズム

早速望遠鏡で月でも見てみたいところだが、毎日天気が悪くてなかなか見られないので、まずは室内で見比べてみる。望遠鏡で倒立した像を見ているのを模して、向こうに逆さまにした文字を置いてみた。左が通常の天頂プリズム、右が正立天頂プリズム。

天頂プリズム覗き比べ

像の向きが正しくなっているのがわかる。しかし、正立プリズムは視野がずいぶん狭いのもわかる。まあ、アイピースで見られる範囲より広ければ問題ないのだが、実際どうなのかは望遠鏡にセットしてアイピースでのぞいてみないとわからない。

それで、とりあえず室内で、NexStar 5SE付属の25mmアイピースで、廊下の端を覗いてみて比べたところ、正立天頂プリズムを使った方がほんのわずかに視野が狭いようだが、これは光路長の違いでシュミカセの合焦位置がズレるせいで倍率が違ってしまうために思える。

普通に見た分にはダハプリズムの稜線が気になるとかいうことはないようなので、LEDライトを光らせたのを置いて見てみたが、やはり稜線はわからないが、ライトの光から稜線と垂直方向に光条が見える。稜線での回折によるものと思われる。ライトの光が強烈だからよく見えるのだと思うが、実際の天体の明るさではどの程度だろうか。また、全体の像の見え味が通常の天頂プリズムとどのくらい違うかも、実際の天体で比べてみたい。

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正立天頂プリズム

最近、正立天頂プリズムが気になりだした。きっかけは、観望会の際に知人の持ってきた比較的安価な自動導入経緯台に載った屈折望遠鏡に装備されていた天頂プリズムが正立タイプなのに気づいたこと。

天頂プリズム

「正立」天頂プリズムの話に入る前に、まずは天頂プリズムとは何かという話から。望遠鏡で天体を見るとき、地平線に近い高度のものを見るときはそのまままっすぐ覗いても苦にならないが、高度の高いものを見るときは下から覗き上げるようになって、観察者がつらい体勢をとらなくてはいけなくなる。これを回避するために、接眼レンズの手前で光軸を90°折り曲げて、上から覗き込むようにして見られるようにするためのものが、天頂プリズム、あるいは天頂ミラーである。プリズムだったりミラーだったりするのは、単に使っている素材の違いで、原理は同じ。ミラーはちょうど45°の角度に鏡を置いて反射させるもの。プリズムというと、光を7色に分ける用途を思い浮かべるが、ここではそうではなく、直角プリズムの一方の短辺の側の面から垂直に光が入射し、ミラーの場合と同様45°傾いた長辺の側の面でプリズムの内部で全反射し、反対の短辺の面から垂直に出て行く。プリズムとミラーがあるのは、一眼レフカメラのファインダーのところにも、ペンタプリズムが使われているものと、ペンタミラーが使われているものがあるのと同様のことだ。外見も、覗き込んでみなければ天頂プリズムと天頂ミラーの区別はあまりつかない。

観望会などで見ていると、結構この天頂プリズムにとまどう人も多い。望遠鏡を覗くのに、見る星のある方向でない方向を覗き込まないといけないのは直感的に不自然だからだろう。しかし、色々な人に望遠鏡を見てもらうのに、天頂プリズムが便利なのも事実である。単に体勢が楽というだけでなく、大人から子供まで色々な身長の人が見る場合に、上を覗きながら中腰になったりして目の位置を調整するより、下に覗き込むようにして体をお辞儀する深さを調整する方が対応できる範囲が広くて楽である。更に、もっと身長の低い子供には、天頂プリズムを回転させて横から覗くようにして見てもらうこともできる。観望会でなくとも、覗く体勢が楽だから、写真撮影でなく眼視の場合には、たいていは天頂プリズムを使って見ていることが多いだろう。

なお、この天頂プリズムの話はケプラー式の屈折望遠鏡やカタディオプトリック式の望遠鏡の場合の話で、横から覗くニュートン式反射望遠鏡では当たらない。

像の見え方

一般的な天頂プリズムは、像が一度だけ鏡面で反射されるため、見える像は鏡像、つまり裏返しの像になる。天体望遠鏡では一般的に、地上用望遠鏡や双眼鏡と違って、わざわざ像を正立にするための余計な仕組みを持たないので、そのまま覗くと、望遠鏡の原理上の理由によって像は180°回転した倒立像となる。天体は上下ひっくりかえっていてもそれほど困らないから、それよりも余計な光学系を挿入して少しでも像が劣化することがない方がいいというわけである。この場合は180°回転しているのであって、鏡像になっているのとは違う。何か描いた紙を手に持って見ているとしたら、それを同じ面を手前に向けたまま、くるりと180°回転させた状態である。これは、上下と左右をそれぞれ入れ替えた状態とも言える。一方、鏡に写った像というのは、紙を裏返して反対側から透かして見た状態になるので、天頂プリズムを通した場合、望遠鏡本来の倒立像とはまた別のひっくり返り方が加わる。鏡は像を上下方向で反射させるように置いているので、像は上下に反転する。紙を裏返するのに、縦にひっくり返した状態になる。そこで、元々の望遠鏡の倒立像と、天頂プリズムでの鏡像とが組み合わさると、上下は2回反転して元通り、左右だけが逆になった像になる。つまり、鏡だけを横に置いて見た場合と同じである。

さて、なんだかこんな説明しているとこんがらかってしまいそうなことが起こっている結果、天頂プリズムのついた望遠鏡をのぞくと、実際に見ているのとは左右逆の鏡像を見ているということになる。天体を見るには像が逆になっててもそれほど困らないだろうとはいいながらも、実はやはりこれは結構困ったことである。最も顕著なのが月を見た場合で、月は肉眼で形状が確認できるのに、望遠鏡で覗くとその欠けている方向が逆に見えるわけだし、月面上のうさぎが餅をついていると言われる模様も裏返しに見えるのはどうも具合が悪い。もっと詳しく拡大してクレーターの形状を観察しても、写真などと見比べると、倒立像になっているだけなら写真をひっくり返して見ればまあなんとかなるが、鏡像になっていたのでは、なかなか頭のなかでマッチングさせることが難しい。月でなくても、星の並びを星図と見比べる際にもやはり同様に脳内マッチングがとりにくくて困る。この鏡像に見える問題はどうにかならないものかと常々思っていた。

正立像で見るために

鏡像を直すというよりはどちらかというと倒立像を直すのが目的と考えられるが、正立像を得るための仕組みはいくつかある。双眼鏡にはポロプリズムやダハプリズムが使われている。望遠鏡の接眼部に取り付けるものとしては、望遠鏡の原理でもう一度像を倒立させて見る地上用アイピースといったものや、天頂プリズムに似ているが曲がる角度が45°になっていて正立像を得る45°正立プリズムはよくある。45°正立プリズムは、天頂プリズムのように光軸を曲げるのが目的ではなくて、できれば真っ直ぐに見たいのだが、プリズムで簡単に正立像にするには45°曲がってしまうのを我慢していると考えた方がいいように思う。像が倒立すると不便な地上用に使うフィールドスコープなどでもよく使われる。45°正立プリズムには、ダハ式の双眼鏡一部分に使われるのと同じダハ面を使ったシュミットプリズムというものを使って正立像にしている。

90°光軸を曲げて鏡像にしないためには、シュミットプリズムと似ているが、通常の天頂プリズムに使われる直角プリズムの反射面のところをダハ面にしたアミチプリズムというものを使うことによって、ダハ面で左右が入れ替わり、上下方向に反射させることで元々上下が入れ替わっているので、合計して倒立像となり、元の望遠鏡の倒立像に組み合わせると、元通りの正立像になる。というわけだが、あまり需要がないのか、はずかしながら、これまでそういう天頂プリズムに実際にお目にかかったことはないと思っていた。

正立天頂プリズムの付属した望遠鏡

そんなわけで、90°に曲げるプリズムで正立像にするものというのはあまり一般的でないのかと思っていたが、そこで冒頭に紹介した知人の望遠鏡についていた天頂プリズムである。あれっ、90°に曲がる天頂プリズムなのに鏡像になってないではないか、と驚いた。しかも、それが特に特殊な望遠鏡でもなく、セレストロンのLCMという比較的入門向けの望遠鏡である。

そこでちょっと調べてみると、よく入門用でちゃんとした望遠鏡としておすすめされるビクセンのポルタII A80Mfのセットにも、正立天頂プリズムが付属しているということである。宇宙かふぇにあったのがこれで、実際に何度か使っていたが、鏡像かどうか気にしたことがなかった。ところが、たまたま以前の記事を読み返していると、この記事の中で、ちゃんと正立であることに気付いたことを書いていたのを見つけた (そんなことは自分ではすっかり忘れていた)。ところで、A80Mfよりわずかながら上級機のA80Mには、写真撮影を意識してか、正立天頂プリズムではなくフリップミラーが付属している。

更に調べてみると、ビクセンではミニポルタA70Lfにも正立プリズムが付属しているが、もっと安価なスターパルのシリーズは通常の天頂ミラーだ。他に量販店の店頭に並んでいるものをチェックしてみると、ケンコー・トキナー扱いのミードの入門向けの屈折望遠鏡には正立天頂プリズムがついていた。しかし、ケンコー・トキナー製品のスカイエクスプローラーは通常の天頂ミラー。

いずれにしても、案外比較的入門向けの望遠鏡に正立天頂プリズムがセットにされていて、これはメーカーが初心者が鏡像で混乱しないようにと考えてのことなのだろうか。しかし、もっと安価なモデルではコストを切り詰めるために正立はあきらめて最も安価な単純なミラーが使われてるといったところか。

続く

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NexStar SE の時刻設定

先日、昼間に金星を撮影したのに気をよくして、また昼間に太陽に近い細い月を撮ってみようかと、昼間に太陽を基準にNexStar SEのアライメントをとって月に向けてみようと思ったが、太陽系天体でのアライメントの候補に太陽が出てこず、それどころかその付近にいるはずの惑星や月も出てこず、“There are no objects available in the alignment zone at this time.” とメッセージが出て、ハタと困ってしまった。後になってその理由が判明したので、記録のためにここに書いておく。

経緯台の場合、天頂は特異点となるせいか、あまり天頂に近い天体は基準星として使えないのは、ベガが天頂近くにいるときに基準星にしようとして出てこないので気付いていたが、いくら太陽が南中近くても、そこまで天頂に近くはならないはずだし、他の天体にはもっと高度の低いものもあったのに全然出てこないのはおかしい。

天体が他の位置にあるとどうだろうと、わざと実時間と違う時刻を入力してやってみると、うまくいく。試しているうちに気づいた。時刻が12時台だといけなかったのだ。このときは太陽と月を指定するだけなので、わざわざタブレット端末を持ち出すこともないと思い、時刻入力はタブレット端末からの同期ではなく、手入力で行っていた。時刻を手入力する際には、「時」が13時以上の場合は24時間制入力なのは自明なのでそのまま次に進むが、12時以下の場合は次にAMかPMかの選択が現れる。デフォルトではAMになっているので、私はいつも24時間制で入力しているから、午前中は選択がデフォルトのままでいいし、午後は選択が現れず、更に続くいくつかの選択肢もデフォルトのままでいいものなので、いずれにせよそのまま何も考えずにENTERを押して進めばいいと考えて、そうしていた。

ところが、NexStar SEは12時に対してはPMを選択しないと、AMの選択では夜中の0時台と解釈してしまう。逆に、0時と入力してもPMを選べば昼間の12時台となる。たまたまこのところほとんどの対象の太陽系天体が太陽の近くに集まっていて、ただひとつ離れた土星も午前0時台には地平線下だったので、no objects となってしまったのだった。午前といっても未明の午前の時間帯なら何も考えずにENTERでよかったのだが、真っ昼間の12時台に行ったのは考えてみれば初めてで、そんな罠があるとは気付かなかった。今後昼間に使うときにはよく気を付けよう。

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金星内合3日前

金星の拡大撮影は一昨年の12月に行っていて、そのときは内合の20日ほど前でそこそこ太陽に近づいて三日月形に見えていたが、今回はもっと近い内合3日前の、更に細長く欠けた姿を撮影した。

ここまで太陽に近づいてくると、太陽が沈んでから西の空に輝いているのを見るというわけにはいかず、白昼に金星に望遠鏡を向けて撮影しないといけない。肉眼では金星の位置が確認できないし、太陽がすぐ近くに (今回は角度にして約10°) 見えるので、やみくもに望遠鏡を向けると危険である。まずは太陽フィルタを望遠鏡に装着して太陽を導入。これを基準星として望遠鏡のアライメントを行う。金星は太陽の近くだから誤差が多少出ても影響は少ないから、1点でのアライメントで十分だ。自動導入で金星に向けてから、太陽フィルタをはずして、代わりに少しでも太陽光の影響を避けるためにフードを装着した。しかし、太陽との角度が浅いので、シュミカセの補正板の面積の半分くらいには直接日光が当たってしまう状態だったが、致し方ない。倍ぐらいの長さのフードを用意すればいいのか。

白昼の金星は、太陽がまぶしくて肉眼ではわからないが、望遠鏡で見れば非常にはっきりわかる。内合ぎりぎりになってくると、地球に近づいて視直径は大きく見えるものの、太陽光の当たって見える部分が非常に細くなってしまうので、もっと暗くなってしまうものかと思っていたが、最大光輝のときの明るさから比べても1等級も落ちていなくて十分に明るい。

さて、いつも他の惑星でやっているように、アイピース拡大撮影のクロップ動画をRegistaxしようと思ったが、動画で撮影した画像はブレまくっていて1コマずつ見ても、細く欠けた金星の姿が何重にも重なったような画になっている。シーイングがひどかったのか、太陽で熱せられているための筒内気流のせいか何かだろうか。その前にスチルで撮っていた1枚の方がまだ幾分かきれいなので、それをそのままトリミングして載せておく。撮像素子のdot-to-dotで切り出したので、クロップ動画をそのまま使っている場合と、大きさは同じである。過去同じようにして撮っている惑星の写真とサイズの比較もできる。トリミングしているサイズは、最初に木星を撮ったときにだいたいおさまって周囲に少し余裕があるくらいに適当に切り出したのにずっと合わせているが、今回はその木星よりも大きく見え、画面ぎりぎりいっぱいになった。

Venus
内合3日前の金星 2015/08/11 13:48 Canon EOS 60D, Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10), 8-24mm eyepiece projection (8mm), ISO100, 1/60sec, トリミング

いつものように、経緯台で撮ったままの向きにしてあるが、南中を過ぎて西に傾いているはずなのに、光っている部分が右上の方を向いているのは、今回の内合では金星の軌道は地球から見て太陽のずいぶん下の方を通っているため。内合の瞬間にも太陽から8°くらい離れているので、そのときには金星の北極側が照らされた細い三日月形に見えることになる。

ステラナビゲータで作った今回の写真の撮影時の様子が下図。格子は赤経赤緯線。

金星の位置

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ISS待ち受け拡大撮影失敗記

天体写真がさまざまな要因によってうまく撮れなくて残念なことはよくあって、何度かこのblogにも残念記を書いてあるが、今回は完全な失敗なので、「失敗記」(笑)。

これまでISS (国際宇宙ステーション) の撮影で、軌跡ではなく形状がわかるような拡大した撮影は、月面通過や太陽面通過を利用したことしかなかった (「ISSの日面通過を望遠鏡で初撮影」など)。月面通過や太陽面通過を利用すると、ISSの軌道を追いかけずに、月や太陽を狙っておいてその前を通過するのを待ち構えて、通過時刻前後に連続シャッターを切ればいいので、狙いやすい。

しかし、これらの場合、ISSはシルエットとなって写り、ISS本体が見えたというにはちょっと足りない気もする (月面通過では明通過の場合もあるが)。太陽の光に照らされたISSを拡大した状態で撮影するには、普通にISSが光って見えるのを眺めるときに、望遠鏡などで拡大して撮影すればいいのだが、月面・太陽面通過のときのように目標がないと、ISSが動いていくのを見ながら狙うことになるが、私の望遠鏡の架台は電動でしか動かせず、コントローラ操作でISSの動きにあわせて追尾することはほとんど不可能だ。むしろ、手動ならなんとかがんばって追いかけられるかもしれないのだが。あるいは、コントローラを改造して、軌道を計算してその通りにきっちり制御するということももしかしたら可能なのかもしれないが、これはさすがに実現させるにはかなりハードルが高そうである。

動きを追いかけるのが無理なら、やはり月面・太陽面通過のように通るとわかっている場所で待ちぶせして撮影すればいいわけである。何もないところで待ちぶせするのは難しそうだが、たまたま昨夜のパスを眺めていると、ちょうど北極星のすぐ近くを通ることに気付いた。

PolarisISS1PolarisISS2

ステラナビゲータで確認してみると、望遠鏡での直焦撮影の視野で、北極星とISSの軌道が一緒におさまるくらいの近さである。これなら、事前に北極星を狙って適切にフレーミングしておけば画面内をISSが通るのを撮影できるはずである。図中のISSの位置は1秒おきなので、秒5コマの連写をすれば、10コマくらい撮影できるはずである。

PolarisISS3

さて、準備万端望遠鏡を用意して撮影に臨んだが、問題はこの回のパスはまだ日没後まもなく薄明がかなり残っている時間帯だったので、北極星が肉眼で視認できないこと。幸い、対象が北極星で、望遠鏡の設置場所から真北の地上の目標物はわかっているので、そこから真上に望遠鏡を向けて、だいたいこのくらいかな、と探すと運良く視界に星が入ってきた。そこでカメラの付け替えて、ピントを合わせ、シミュレーションのように視野を端にずらして待機。

接近してくる間はISSがなかなか肉眼でとらえられなかったので、そのまま北極星通過数秒前から撮影開始しつつ、双眼鏡で北極星を探してみると、とらえられた明るい星に、その下側を思っていたのと逆方向に動いていく暗い光点。あれれ、っと思ったが、実は先にとらえて北極星だと思った方がISSで、動いていると思った方が北極星。手持ちの双眼鏡で見ていたので相対的な動きしかわからなかったせいだった。確かに明るく見えたISSの方が夕陽を浴びてオレンジ色をしていた。実はその頃にはISSはもう双眼鏡をはずして肉眼でもよく見えていた。

ところで、連続撮影中に、どうもシャッター音のする間隔が遅いなと思ったら、連写の設定が高速連写でなく低速になっていた。前に横着をしてレリーズを使わずにセルフタイマーで撮影した後、連写に設定を戻したときに間違って低速連写にしてしまっていたようだ。これが第1の失敗。それでもまあちゃんとISSが画面内を通っていれば6コマくらい写っているはず、と思って画像を確認してみたが、まるで影も形も写っていない。

露出の設定が間違っていたか。望遠鏡はF10。固定撮影なので像が流れてしまわないようにシャッター速度は1/1000秒。そこそこ明るいときの月面と同じくらいならよかろうと、ISO3200としていた。だいたい世間にあるISSの拡大撮影した写真のデータもそれほど違わない値なので、これで適正からは多少外れていたとしても。全く写っていないということはないはず。ISS自体の明るさも天頂通過の最高催行条件ではないにしろ、そこそこ近くて明るさはマイナス2等の予報だったので問題ないはず。そして、事前に位置確認のために長いシャッター速度で撮って確認した北極星さえも写っていないが、これはISSに比べたら暗いので、この露出設定ではそもそも写らなかったのかもしれないが。

まるっきり写っていなかったというのはおかしいので、これは位置確認後、撮影直前に望遠鏡にさわって動かしてしまったかとも思ったが、その事前に明るく撮った北極星のつもりの画像を明るさ調整して一緒に写っているもっと暗い星まで見えるようにして、その配置を北極星周辺の星の配置と比べると、どうもマッチしない。これはもしやと探してみると、こぐま座ε星の周辺のパターンと一致。なんと北極星だと思って狙っていたのが北極星ではなかったというお粗末な失敗! しかも、北極星の隣のδ星ではなくもうひとつ隣のε星。結構角度が離れているはずだが、シュミカセの鏡筒は短いので多少角度が違っていてもあまりよくわからないものだし、まだ空が明るくて肉眼では星が何も見えていないので、望遠鏡で星をとらえた時点で北極星だと信じて疑わず、よもや4等星を見ているとは思わなかった。言い訳じみるが、偶然こぐま座のひしゃくの柄は垂直に立っている位置にいて、ε星もちょうど真北に位置していたのも誤認の原因といえる。

そんなわけで、あまりに間抜けな失敗のせいで、ISSの姿は写真におさめられず。結構いい条件だったので、ちゃんと狙えていればそこそこ撮れていたんじゃないかと思うとちょっと悔しい。北極星を入れたつもりになったところで、それ基準で望遠鏡をアライメントして、(肉眼では見えないが) 他の星に向けてみてちゃんと見えるか確認してみればよかった、などと思っても後の祭り。

まあ、こんなに薄明の時間帯でなくもっと暗くなってからISSが通過するときにならこんな間違いもしないだろう。そして、そんな時間帯なら北極星ほど明るい星でなくても位置の基準に使えそうだし、それならISSの軌道が近くを通ることも結構あるだろう。またあらためて挑戦してみたい。

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