2020年7月 のアーカイブ

ネオワイズ彗星 (C/2020 F3)

blogを再開してからも、どうも一旦落ちたペースはあまり戻らず、ほとんど記事が書けていなかったが、これはすぐにでも書いておかないわけにはいかない。

ヘール・ボップ彗星以来といわれる明るい彗星、ネオワイズ彗星 (C/2020 F3) が現れているが、ちょうど梅雨の最中でなかなか見られない。天気予報を見る限り、梅雨の中休みのような晴れの日も期待できず、このまま暗くなるまで毎日悪天続きのようである。きれいな彗星の画像の送られてくる北海道がうらやましい。そんな中、運よく土曜日の未明に、すぐに行ける範囲でわずかに晴れ間の出そうな予報があったので、この機会を逃したらもう見られないかもしれないと、行ってきた。

ネオワイズ彗星が見られるのは今のところ未明の午前3時頃。GPVの詳細の予報で土曜日の午前3時の予報が見られる木曜の昼間に千葉方面が雲が薄そうになっているのを見て、できれば行って観測しようと考え始めた。行ったことのない場所なので土地勘がないが、夜中に車が止められて、彗星の高度は10°以下と低いので見える北東方向が開けている場所を考えると、九十九里浜のどこかということになった。九十九里浜の海岸はカーブしていて、北寄りの方では北東方向が陸に寄って来る。南寄りなら海面上に見えるはずなので、そちらの面での条件はいいが、雲のかかり方の予報では南の方はあまりよくない。とりあえず、いくつか候補場所を選んでおいた。

当日夜にやはり予報で千葉方面が雲が薄目なのを確認して出発を決意。千葉だけでなく東京湾の上も晴れてそうである。海ほたるで観測するという情報も聞こえてくる。出発前に、GPVの20:30の更新画像をみると、時間によっては自宅付近も雲が少ない予報になっており、それならわざわざ出かけなくても、自宅から北東方向は都心の光害はあるもののの見通しはよいし、機材も手持ちのものを自由に使って落ち着いて撮影に臨める。だが、一瞬予報がよくなっただけで当たる保証はないので、やはり予定通り出かける。九十九里に向かうのにアクアラインを通って行くので、海ほたるで一旦休止し、23:30のGPVの更新を見て、自宅付近の予報がよさそうならそこで引き返す、九十九里より東京湾がよさそうならそのまま海ほたるで、やはり九十九里がよさそうならそのまま九十九里まで、という予定で出発した。

果たして、海ほたるに到着して確認してみると、やはり自宅付近は論外になっていて、海ほたるか九十九里かというとやはり九十九里まで行った方がよさそうだったので、そのまま足を進めた。しかし、千葉県に入ってからも、時々雨が降ったりで、これで星空が見えるのかと思う一方、前方の空に雲間から月が見えたりもしていた。最初に目的地にしていた釣ヶ崎海岸に行ってみるが、どうもカーナビが違うところを案内したようで、右往左往したあげく、正しい場所に行きつきはしたが、到着した時点で雨がザーザー。まあ通り雨のようなもので、その止んだ後は晴れるのかもしれないし、実際、雨がやんだら雲間から月と火星は見えたが、やはりあまりの雲のどっぷりさに、予報では雲の少ないもう少し北の方に移動することにした。九十九里ビーチタワーという小さな展望塔のようなもののある不動堂海岸についてみると、まだ雲はあるものの、きれいな星空が広がっていて、夏の大三角がきれいに見えていた。しかし、北東の空は、カシオペヤやペルセウスは見えるが、地平線近くには雲があった。

九十九里ビーチタワー九十九里ビーチタワー

ちょっとどうしようかと考えあぐねていたが、現地には自分以外にも車が何台か来ていて、単に夜中に海を見に来たカップルもいたが、やはり彗星狙いらしい二人組が、タワーの下のところで設営を始めていた。さらにもう1名機材を持った人がやってきて、こちらはタワーの上に陣取ったようだ。まあ、ここまで来ておいて何もしないで帰るというのもないので、ダメ元でも機材設営はするかと、自分もタワーの上で先に来ていた人の脇の空いているスペースに機材を運び込んで設営開始。

彗星の尾は長く伸びていて、望遠鏡では画面からはみ出てしまうくらいなので、今回はカメラレンズでの撮影で、広角と望遠でそれぞれ撮る計画。まずは、広角用のカメラをセットアップして撮影してみるが、もう地平線から出ているはずだが、まだ高度が低いせいかよくわからない。とりあえず、時折撮影して写っていないかながめながら、望遠用の方をセットアップ。こちらは固定撮影だと星像が流れるか微妙なところだが、念のためポラリエに載せる。ドイツ式赤道儀型強化版にしたので、天の北極が画面の上向きになる。雲がなければ不自然ではないのだが、地平線に沿ったような層をなす雲が、斜めに見えてちょっと変な感じだ。彗星は見えてこないが、近くのぎょしゃ座の星を頼りに彗星の見える位置を狙って試し撮りを繰り返しているうちに、なんとなく筋状の光が写るようになった。しかし、まだ肉眼はおろか、双眼鏡で見ても全くわからない。

やがてだんだんはっきり写真に写るようになってくると、双眼鏡でもよくわかるようになってきた。広角の方でも写るようになった。しかし、肉眼ではどうもよくわからない。雲のもやもやにまぎれてなんとなく核の部分がぼんやり光ってるように思える程度の見え方だった。自信をもって肉眼彗星を見たと言うには少々心もとない。

常に雲がかかっていて、なかなか尾全体がきれいに見えることがなかったが、まあ一番よさそうな写真がこれ。多数撮ってスタックしたかったが、とても連続して雲のかからない写真は撮れなかった。

C/2020 F3
Comet NEOWISE (C/2020 F3) 2020/07/11 03:22 Canon EOS 60D, EF-S55-250mm F4-5.6 IS II (171mm F5.6), ISO3200, 8sec, StellaImage8, Topaz DeNoise AI, Photoshop CC,

広角で撮った方の写真はこちら。少し広角で撮りすぎたか、海岸より陸地側の画面で左側には強烈なライトがあって画面が見苦しいので、横位置で撮っていたものをトリミングして、上下幅はそのままで縦長画面になるようにした。ぎょしゃ座の五角形が画面におさまっているがθ星だけ雲に隠れてよくわからなくなってしまって残念である。固定撮影なのだから、連続でインターバル撮影にしてたくさん撮っておけばよかった。

C/2020 F3
Comet NEOWISE (C/2020 F3) 2020/07/11 03:12 Canon EOS 60D, SIGMA 10-20mm F3.5 EX DC HSM (20mm F3.5), StellaImage8, Topaz DeNoise AI, Photoshop CC, trimming

まあ、お天気は厳しい状況でそれほどには上手く撮れなかったが、そうはいっても本格的に天体写真を撮り始めて以来はじめての立派な彗星の写真を撮れて、遠出をした甲斐があった。

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