「天文・写真」カテゴリーの投稿アーカイブ

最近撮った天体写真いくつか

去年はblogを再開はしたものの、あまりたくさん記事は書けていなかったが、記事にした以外にもいくらかは天体写真を撮っていたので、いちおう記録のために、昨秋あたりからの分を少しまとめて載せておこう。

最初は北天の秋の天の川。何というほどでもないが、すばる、カリフォルニア星雲、ペルセウス座、二重星団、カシオペヤ座、アンドロメダ銀河あたりを全部入れました、みたいな写真。知人の望遠鏡を見せてもらいに行ったついでに撮ったもの。

Autumn Milkyway 2020/10/25 02:38 Canon EOS 60D(mod), EF-S17-55mm F2.8 IS USM (17mm F2.8), PROSOFTON Clear, ISO3200, 15sec×11, Dark×6, StellaImage8, FlatAide, PhotoShop2021

次はアンドロメダ座にある青い雪玉星雲 NGC7662。上の写真でぎりぎり山に隠れてしまっているあたり。シュミカセは焦点距離が長いので、あまり大きく広がった星雲などは画面に入り切らなかったりするので、こういった見かけの大きさの小さい惑星状星雲などの方が得意。といっても、本当に惑星くらいの大きさなので、いくら焦点距離が長いといってもたかが知れていて、縦横1/4にトリミングしてこの画像。惑星撮影用のカメラで撮った方がいいのかもしれないが、導入が大変そうだ。また、みかけの大きさが小さいことから、同じ等級なら、面積あたりの明るさは明るくて、あまり長時間露光しなくてもよく写る。

NGC7662 Blue Snowball Nebula 2020/11/21 23:00~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10) prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO1600, 30sec×31, Dark×12, StellaImage8, PhotoShop 2021, Topaz DeNoise AI, 1/4 Trimmed

続いて撮影日が前後するが、同じ惑星状星雲ということで、うみへび座の木星状星雲 NGC3242。春に撮った土星状星雲も含めて、どれも水色っぽくて内側に明るい楕円状の構造があって似たような感じだ。名前も、土星状だったり木星状だったりだが、どのへんが取り立てて土星だったり木星だったりするのかよくわからない。ちなみにこれは日本語では単に木星状だが、英語では「木星のゴースト星雲」。「CBSアイ」というニックネームもあり、米国のCBS放送のマークの目の絵に似ているということのようだ。

NGC3242 Ghost of Jupiter Nebula 2021/02/08 23:50~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10) prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO3200, 30sec×23, Dark×8, StellaImage9, PhotoShop 2021, 1/4 Trimmed

こちらは、ウルトラマンの光の国で有名なM78星雲。本当はM87星雲 (銀河) のつもりだったのが、どこかで間違って78になってしまったのだとか。下の大きい方がM78で、左上の小さい方はNGC2071。オリオン座の三つ星の近くにある。

NGC2071 & M78 2020/11/22 01:58~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO12800, 180secx20, Dark×4, StellaImage8, FlatAide, Topaz DeNoise AI, Photoshop 2021

最後は有名なばら星雲。オリオン座の隣、いっかくじゅう座にある。上の方で書いたように、これは私のシュミカセにAPS-Cサイズのカメラでは、レデューサを入れて1,400mmにしても全くもって大きすぎて、中央部分しか画面におさまらないのだが、案外、この構図はこれはこれでアリな気もするので撮ってみた次第。

NGC2237 Rosette Nebula 2021/02/04 23:41~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), 0.7x Reducer, prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO3200, 120sec x 31, Dark × 8, StellaImage9, Topaz DeNoise AI, Photoshop 2021, Photoshop Express

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2020年の火星準大接近まとめ

昨年、2020年は、2018年の火星大接近の一周後に再び火星の接近があった年で、2018年の大接近が地球の軌道と火星の軌道が最も近づいている点よりもかなり手前での大接近だったため、2020年の接近は最接近点からあまり行き過ぎていないところでの接近となり、2018年の5,759万kmに対して、2020年は6,207万kmと、1割増にもならないほどしか違いがなく、準大接近と呼べるものであった。これが、軌道の最接近点にとても近いところでの大接近だった2003年とその次の2005年とでは、5,576万kmと6,942万kmと、ずいぶん違ってくる。2018年の大接近は、残念なことに大規模な砂嵐が発生して、せっかく接近している時期に模様があまりよく見えないという状況が発生してしまった。今回は最接近したしばらく後に少し部分的な砂嵐の発生はあったが、全体をおおってしまうほどではなく、むしろ砂嵐の発生状況の変化も見て楽しめる程度でよかった。一方、地上の天候がよくなくて観測できない日が結構あったのは残念である。

火星が未明の東の空に見えだしたものの、まだ地球との距離が離れている4月頃に撮影したものから、10月6日の最接近を過ぎて、昨年いっぱいまで撮影した火星の画像をまとめてみた。まだ火星が遠い最初のうちはあまり頻繁に撮影していないし、7月は長梅雨のために一度も撮影できずに大きく撮影日が飛んでいたりと、間隔が一定ではないし、まだ4月の頃の大きさまでは離れていないが、年が変わったところで切りがいいので、ここまで、撮影できた分を全部まとめて順に詰めて並べた。

火星順大接近まとめ 2020/04/25~2020/12/27

こうやって並べてみると、模様がくっきり写っているものもあれば、ボケボケのものもあって、日によってシーイングがずいぶん違うのがわかる。

最接近の日近くではあまりいい画が撮れていないが、今回の準大接近の中で比較的よく撮れた画像をいくつか大きく載せておこう。

太陽湖、マリネリス渓谷 2020/09/04 02:34 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed. Duration=180s, Shutter=10.5ms, Gain=300 (50%), 25% of 17,031frames
大シルチス、ヘラス盆地 2020/10/20 20:19 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed. Duration=180s, Shutter=17ms, Gain=300 (50%), 50% of 10,589frames
シレーンの海、オリンポス山 2020/11/05 21:31 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed. Duration=180s, Shutter=12ms, Gain=300 (50%), 25% of 15,000frames
オーロラ湾、真珠の海 (砂嵐発生中) 2020/11/17 21:51 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron X-Cel LX 3x Barlow Lens, ZWO ADC, ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Trimmed. Duration=180s, Shutter=9ms, Gain=350 (58%), 25% of 19.997frames

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木星と土星の大接近

今年2020年は、終わり間際になって色々とめぼしいものが集中した感じがする。前2つの記事に続いて、滑り込みだが、こちらも年内に記事にしておかないといけない。

木星と土星の会合は20年ごとに起こるが、その中でも今回は約0.1°と非常に接近して、望遠鏡で高倍率の視野でも両方が一度に見えるというので、前から楽しみにしていた。まだ少し離れたうちから近づいていって離れていくところをずっと観測できればいいが、木星と土星は観望の好期をずいぶん過ぎて、夕方西の空低くにわずかな間にしか見られない。しかも日の入り時刻が早いこの時期ということで、平日は仕事をしているとなかなか見るのが難しい。しかも、お天気も必ずしもいい日が多くはなかった。

そんな中で、最接近より少し前だが、接近している木星と土星の近くに細い月が巡ってくる12月17日はお天気がよさそうだったので、コロナ対応で時差通勤しているのを利用して、早い時間に仕事を終えた後、帰宅する足で、出掛けに駅のコインロッカーに預けておいたカメラと三脚だけで急いで撮影に向かった。前の記事の夜光雲と同様、南西方向に障害物のない場所で見る必要があるということで、実は夜光雲を見るのに当初予定していた場所というのは、この木星と土星の接近を見るためにいい場所はないかと事前に探してあった場所だった。

Moon, Jupiter and Saturn 2020/12/17 18:06 Canon EOS 60D, EF-S55-250mm F4-5.6 IS II (70mm F4), ISO800, 2sec, Photoshop CC, Topaz DeNoise AI
Moon, Jupiter and Saturn 2020/12/17 18:09 Canon EOS 60D, EF-S55-250mm F4-5.6 IS II (250mm F5.6), ISO800, 2sec, Photoshop CC

最も接近するのは12月21日だが、前日の20日の日曜日は天気がよかったので本番の練習ということで望遠鏡も出して撮影。

Jupiter and Saturn 2020/12/20 18:07 Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO1600, 2sec, Photoshop CC

この日はガリレオ衛星が全て西側に並び、しかも一見ひとつ多くて5つ並んでいるように見えるが、一番外側にあたるのは、たまたまこの位置にあるやぎ座の恒星。ステラナビゲータによると3重星らしいが、分離しては見えなかった。その内側から木星に向かって順にカリスト、ガニメデ、イオ、エウロパ。エウロパはほぼ木星にくっつきそうに見えるが、これは衛星がよく写るくらいの露出にすると、惑星本体は露出オーバーになって実際よりも大きく写ってしまっているため。土星も環と本体の隙間も見えず単なる楕円形に見えている。土星の衛星は右側にタイタン、そしてレアがその肥大した土星像の上端、中央から少し左寄りにかすかに飛び出ているように見える。

翌21日の本番は、平日で仕事だが、17日のように時間ギリギリでは望遠鏡を用意できないので、お天気が大丈夫そうなのを確認して午後半休をとってしっかり準備。まずは、前日の写真との比較のために、望遠鏡に一眼レフの直焦点で撮影した画像を。

Jupiter and Saturn 2020/12/21 17:31 Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO1600, 2sec, Photoshop CC

前日と位置が変わって、木星系は、カリスト、ガニメデ、木星、イオ、エウロパの順。そして、前日は並びの一番外側にいたやぎ座の恒星が、イオのすぐ近くに見えている。木星系の方がこちらに移動してきたと言った方がいいのかもしれないが。この恒星とイオの位置関係は、この日見え始めてから沈んで見えなくなるまでの間でずいぶん変わる。木星に対する衛星の動きより早いようだ。また、色がずいぶん違って見える。土星の衛星は、前日と同じタイタンと、土星の左側に外れてわかりやすくなったレア。そして、右側のすぐ近くにはディオネもかすかに見える。

しかし、この撮り方だと、衛星と、木星、土星の明るさが差がありすぎるために、前述のように、衛星がよくわかるような露出で写すと像が肥大してせっかくの木星の縞模様や、土星の環がわからなくなってしまう。ちょっとHDRもどきで、別露出で撮った画像を組み合わせてこんな感じにできなくもないが、露出差の縮め方はちょっと控え目にたらいまひとつ中途半端だし、いずれにせよインチキである。

前日の練習でそう感じていたので、本番では惑星の拡大撮影に使っている天体用カメラでの動画撮影、スタッキングも試した。こちらのカメラは視野角が非常にせまいので、木星と土星がいくら接近しているといっても一度に入らないのではないかと思ったが、惑星の拡大撮影をするときのようにバローレンズを入れず、ROIも切らず、衛星系全体を画面におさめるつもりでなければ、画面の長手方向を使えば2つの惑星はなんとかおさまるのだった。

Jupiter and Saturn 2020/12/21 18:00 ZWO ASI290MC, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), ZWO UV/IR Cut Filter, FireCapture2.6, AutoStakkert!3, Registax6, PhotoShop CC, Duration=60s, Shutter=6ms, Gain=300 (50%), 25% of 4,922frames

これで、土星の環も木星の縞模様もわかり、木星と土星の明るさの差も実際こんなもんだろう。だが、衛星はよくわからなくなっている。まあしかし、今回の現象は、写真で何やかややるよりも、やはり眼視で鑑賞するのがいちばんよかったように思う。暗い衛星から、明るい木星の模様まで同時によく見られるのだから。

ここまで、拡大画像ばかりだったが、全体の景色の中で大接近した二大惑星はどんなふうに見えたかというと、こんな感じ。

Jupiter and Saturn 2020/12/21 17:40 Canon EOS 60D(mod), EF-S55-250mm F4-5.6 IS II (55mm F4), ISO800, 4sec, Photoshop CC

非常に接近しているといっても、肉眼で十分に分離して見えた。何も知らずに目に入っただけならひとつの星と思ってしまうかもしれないが、それとわかって注視すれば、木星の隣に暗めの土星が見えているのがはっきりわかった。しかし、肉眼で見たときは木星と土星の明るさの差は望遠鏡で見たよりも顕著で、明るい星が2つあるというよりは、明るい星の脇に暗い星が寄り添っているという感じだった。ベツレヘムの星はこういう現象であったかなどとも言われるが、そこまでのインパクトのある光景というほでどもないように思った。今回の木星と土星の間隔は、おおぐま座のミザールとアルコルの間隔 (0.2°) よりもずっと近いのだが、ミザールとアルコルはいまだかって識別できたことがない。明るさの問題なのか。

最初から仕掛けておけばよかったのだが、だいぶ沈みかけてから、比較明の軌跡の写真にすれば、明るい軌跡が2本非常に近くに寄り添った画になるなあと思って撮り始めた。地平線まで残りわずかだったので、通常よりかなり望遠な画角になっている。位置の関係でマンションの建物の角で一旦隠れて、側面から出てきてからまだずっと沈んでいくのが見えるかと思ったら、上のまだ空の明るいときの写真を見てもらえばわかるが、山の稜線はマンションとたいして変わらない高さにあって、すぐに見えなくなってしまった。他の恒星は皆地平線近くになって夕日が赤くなるのと同じ原理で赤く見えているが、木星・土星の軌跡は明るすぎて白飛びしてしまって赤くなっていたのがわからない。

Jupiter and Saturn 2020/12/21 18:15~18:32 Canon EOS 60D(mod), EF-S55-250mm F4-5.6 IS II (135mm F7.1), ISO800, 4sec×230, KikuchiMagick,Photoshop CC

この日の木星と土星の距離は0.11°、翌日も0.12°とほぼ違わないくらいの接近距離だが、2日続けて午後半休を取るのも気が引けるし、前日と当日続けて見られたのでこれで十分ということにしておいた。

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H-IIAロケットによる夜光雲を撮影

なかなかblogに書くのが遅く、時系列的にも前の記事と半分前後するが (リュウグウの撮影よりは後、はやぶさ2の撮影より前)、2020年11月29日に種子島から打ち上げられたH-IIAロケット43号機の打ち上げによって発生した夜光雲を平塚の海岸から撮影することができた。

H-IIAロケットによる夜光雲
H-IIAロケット43号機による夜光雲 2020/11/29 17:25 Canon EOS 60D, EF-S55-250mm F4-5.6 IS II (109mm F5), ISO800, 4sec, Topaz DeNoise AI, Photoshop CC

関東地方からはるか離れた種子島から打ち上げられるロケットだが、特定の条件を満たすと、その航跡にできる雲が夜光雲として見えることがある。2017年の1月の32号機でも同様の現象が見られたが、この日は平日で普通に仕事をしていたので見ることができなかった。条件とは、まず、打ち上げるロケットの軌道が東方向に向かって打ち上げられ、関東南方上空を飛んでいくものであること。極軌道という地球を縦に周る軌道の衛星を打ち上げる場合などには、こちらから見える方向に飛んでこないので見られない。もうひとつは、地上では日が沈んでいて暗く、上空高くでは太陽の光が当たっているという状況になる夕方の日没後か未明の日の出前であること。これは人工衛星が見える条件とも似ている。

今回の打ち上げが、そういう条件に合いそうだということで事前に情報が飛び交っていた。運良く日曜日でもあるので、ぜひ見ようと思い、最近自宅の近くに開拓した南西方向が比較的地平線近くまで見える場所で見ようと思っていたが、当日になってみると天気があまり思わしくなく、見られなさそうであった。SCWを見ると、西の方なら曇ってなさそうである。小田原あたりまでいけば天気は大丈夫そうだが、地形的に西方向が山になってくるのでうまくない。酒匂川河口あたりならどうだろうかと思ったが土地勘のない場所なのでどうしたものかとか考えていたが、遠くに行くには時間がかかる。悩んでいるうちに、打ち上げ時刻に到着するには間に合わなさそうになってきた。方針を変えて、お天気は少し微妙でももう少し東で早く行けて南西方向がよく見通せる場所で、たまたま今年一度行ったことがあって勝手のわかる場所ということで、平塚の海岸にあるひらつかビーチパークに向かうことにした。

到着時の空

高速を飛ばして無事打ち上げ時刻前に現地に到着し、ネット中継を聞きながら、すでに店じまいした建物の壁の前でカメラをセッティングした。種子島も天気は曇りで、打ち上がったロケットはすぐに雲に突っ込んでしまった。こちらは現地到着時にはすでに日は沈んではいるもののまだまだ空は明るかったが、空は結構雲で覆われているものの、多少晴れ間は見える。実際は打ち上げ時刻に間に合う必要はなくて、ロケットは飛んでいった後だが、空が暗くなってこないと見えないので、そのくらいの時刻には酒匂川にも到着できたかもしれないが、まあやはり時間の余裕もあった方がいいので、ここにしてよかっただろう。

あとは、暗くなって夜光雲が見えてくるのを待つだけだが、なかなか見えてこない。天体現象のように、ピンポイントでどの場所に見えるというのがわからないので、おおむね南西方向を探しているが、なかなかみつからない。雲はどんどん増えてくるが、地平線との隙間には晴れ間が残っている状態。17:05に種子島からのツイートで現地で夜光雲になっている雲が見えているという情報が入ったがまだこちらでは認められず。17:18に思っていたよりも少し西よりの位置にやっと見えだした。そこからだんだんはっきり見えるようになってきて、17:25に撮った一番よく写っていると思えるのが最初に載せた写真。空はかなり雲で覆われていたが、南西の方の伊豆半島の稜線との間にわずかな晴れ間にちょうど夜光雲が見えて実に幸運だった。高度にしてほんの数度である。

その後しばらくしてからだんだん空に溶け込み始めて、17:38頃にほぼ見えなくなっている。駐車場の時間が18:00までだったので、ちょうどタイミングがよく、そこで撤収して車に戻り、帰途についた。

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リュウグウとはやぶさ2を撮影

探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウで採取したサンプルを地球に持ち帰ってくるのに合わせて『2020年12月6日の【リュウグウ&「はやぶさ2」おかえり観測キャンペーン】』というのが実施され、小惑星リュウグウや探査機はやぶさ2の撮影を募っていた。ただしいずれも地球から見ると非常に暗くしか見えず、最初に見たときは説明に口径30cmの望遠鏡が必要と書かれていて、(私の持っている最大口径の) 20cmじゃ無理かぁ、とtwitterでつぶやいていると、以前プラレアリウム33箇所巡りでお世話になったFさんに、リュウグウなら写ると思います、とそそのかされ、まずはチャレンジしてみることにした。その後、キャンペーンのサイトのその説明はいつの間にか20cmに書き換わっていた (笑)。

これまでにそのような暗い天体の撮影といえば、探査機ニューホライズンズの到着にちなんで冥王星を撮影したことが思い出されるが、冥王星は14等程度だが、リュウグウは16.6等と書いてあって、また一段と暗い。とはいっても、当時は口径127mmのNexStar 5SEしか持っていなかったし、自宅からの撮影だったが、口径20cmのEdgeHD 800を持って、最近ちょくちょく利用している近くのちょっとした山の上の場所に行けば、2~3等級の差はなんとかなるんじゃないかと思った。

たまたま、後に「令和2年11月快晴」と呼ばれることになる11月14日の夜、いざ撮影にチャレンジした。この場所は街に近いので街のある東側の空は全然暗くないが、西側の方はそこそこ暗い。リュウグウはペガススの首と前足の間にあって、この時期はもう遅くなると西に傾いてきているので好都合だが、あまり遅くなると高度が低くなってきてしまうので、あまり遅くならないうちに撮影する。AVX赤道儀にEdgeHD 800を載せる。最近はblog記事をあまり書いていなくて紹介していなかったが、DSOの撮影などにはASiairにiPad miniでSkySafari Plusを連携させてオートガイドと星図画面からの自動導入をしているが、SkySafari Plusにはリュウグウは出てこなかったので、事前にステラナビゲータで確認しておいた位置にファインダーと試し撮りで導入して、オートガイドだけASiairで行った。

リュウグウは、はやぶさ2が探査を行っているときは地球からみると太陽の向こう側、はるか3億kmの彼方にいたが、帰路について地球に戻ってくる間に、地球が軌道をめぐって追いつき追い越す形になって、何のことはないリュウグウとはやぶさ2の距離もたいして離れていないのだった。そんなわけで地球に近づいているからこそ、それでもやっと撮影できるかという明るさになっているわけだが、地球の近くにいるということは相対的に見た目の動きもそれなりにあって、彗星の撮影のときのようにメトカーフコンポジットをする。すると、とても小さい点ながらも、無事リュウグウの姿が捉えられているのがわかった。ちょっと運の悪いことに、ちょうど経路上にひとつ恒星があって、位置が重なってしまうので、連続して撮影した写真全部ではなく、重なってしまう部分はコンポジットから外さなくてはならないのが少しもったいなかった。できた写真がこちら。小さな点ながらも無事写っていてよかった。

162173 Ryugu 2020/11/14 21:44~ Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10) prime focus, ISO6400, 120sec×8, Dark×4, StellaImage8 Metcalf composite, FlatAide, PhotoShop 2021, Topaz DeNoise AI 2.3.3, Trimmed

この時点で地球とリュウグウとの距離は約0.1au。年末に地球に最接近するようだが、ステラナビゲータの光度表示によると、地球と太陽との角度の関係か、ちょうど撮影した頃が一番明るく見える頃だったようだ。

リュウグウの撮影に成功したので、調子に乗ってはやぶさ2の撮影にも挑戦してみることにした。こちらは正確な軌道情報はセキュリティ上非公開になっていて、とても地球に近くて観測場所によって見える位置が違ってくるので、申し込んだ人だけに、その観測地から見た赤経赤緯のデータが送られてきて、それも他人に見せたりしてはいけないということである。このデータを元に、ステラナビゲータの追加天体の.adfファイルを作成して読み込ませてステラナビゲータ上に時々刻々の位置を表示させる。

さて、撮影機材だが、相変わらず自分の持っている性能のいい望遠鏡はEdgeHD 800であるが、はやぶさ2のみかけの移動量はリュウグウの場合とは比べ物にならないくらい大きい。リュウグウでは暗いから長時間露光してなんとか撮影しても、1コマ撮影している間では日周運動を追尾していればほぼ点像に写ったが、こちらは暗いからといって悠長に長時間露光していると、その間に動いてしまって線になってしまい、ひとところに光が重ならずに薄い像になってしまう。EdgeHD 800は焦点距離も長いのでその分拡大して見え、画面内でのみかけの動き量も大きなものになる。最初に紹介したサイトの撮影ガイドのページにおおまかな時刻と移動量などが書いてあるので参考にしてもらうといいが、早い時間のうちはまだ地球から離れていて動き量が少ない。この間はシュミカセでもなんとかなるのではないか。逆に距離が遠くて光度が暗いので、焦点距離の長いものの方が背景が暗くなって暗い星までよく写るはずで有利とも考えられる。口径もそれなりにあることだし。

一方、地球に近づいてくると光度は明るくなるが、動きが急激に大きくなってくる。焦点距離の短い鏡筒を使えば画面内の動き量は小さくなって光が引き伸ばされてしまいにくくなる。更に、1コマの軌跡を長くしないためには、できるだけシャッター速度を短くすればいいが、それを補うためにはISO感度を上げるかF値を小さくするかである。手持ちの機材では適当なものがないので、ここはこの日だけ性能のよい機材をレンタルするということを考えた。カメラを高感度の性能のよいものにするという手もあるが、慣れないカメラで当日操作を誤ったらいけないので、これは少々心許ないが現用のEOS 60Dで我慢しておくことにする。望遠鏡のレンタルというのもあまりないと思うが、F値が小さいほどいいなら、カメラレンズでF値の小さい望遠レンズということで、いわゆるサンニッパ、300mm F2.8のレンズあたりがよさそうと考えた。普通に買うにはとても手が出せない価格のものだが、レンタルなら1日だけだしまあそれなりの値段で借りられる。

カメラ機材のレンタル屋というのは初めて利用したので、利用しようとするとまず保証人として勤務先の連絡先まで書かされた。それで審査があってから会員登録完了となったが、そこでwebから申し込もうとすると、あまりぎりぎりに申し込んだせいで、webからは3日先の分からしか申し込めないとなっていて、電話して申し込むことになった (電話なら受け付けてくれる)。それで電話でキヤノンのサンニッパを借りたいと言うと、残念ながら全部予約済だという。何かイベントですかねぇと言われたが、まさかみんなはやぶさ2を撮るために借りに来ているわけではないと思う。品揃えの中から他にはシグマの120-300mm F2.8というのがあったので聞いてみたがこれもやはりないとのこと。Fのもっと大きいレンズならあるようだが、そこは譲れない。ヨンニッパ、400mm F2.8ならあるというので、値段が倍近くに跳ね上がるが、もうここは仕方ないのでそれを予約した。

サンニッパであってもそうだったのだが、高額商品ということで、会員登録時の保証人とは別に、あらためて親族に保証人になってもらって直接連絡して確認することが必要という。これも仕方ないので実家の親の連絡先を届けて、事前にレンタル屋から保証人の確認の電話があるから大丈夫と返事してくれと頼んでおいた。すんなり了解してくれたが、考えてみたらなんだか怪しい詐欺電話のようである。翌朝にすぐに電話確認されたようで、OKのメールが来たが、実家からは後になって、言われた通り電話がかかってきて返事はしたが、変な詐欺じゃないだろうなと、心配して私の携帯に電話がかかってきた。まあ確かに100万円以上もする商品を借りるわけで保証人の確認が要るというのはわからないでもない。しかし、書面の取り交わしが必要とかではなくて電話で確認するだけということで手続きが間に合ってよかった。確認が取れたのは撮影日の前日。配送では間に合わないのとレンタル日数が増えてしまうので、翌日撮影当日の日中に受け取りに行って、その夜から翌日未明にかけて撮影である。

レンタル店に行くと、はじめての利用でいきなりこんな高額商品の利用だからか、何撮るんですか、スポーツか何か、と聞かれたので、天体写真を…と言うと、ああこの時期空がきれいになってきますからねぇ、というので、や、そういうことではなくて、はやぶさ2という探査機が帰ってきて、などという会話をして、ずいぶん変わった客だと思われたかもしれない。ヨンニッパのレンズというのは実際にさわるのは初めてだったが、これはなかなか巨大である。うちのNexStar 5SEの鏡筒 (D=127mm) より口径がある。まあ計算してみれば確かにそうなのだが。しかも、普通のレンズならAF/MFの切り替えと手ブレ補正のON/OFFくらいだが、撮影距離範囲の切り替えやら、プリセットやら、手ブレ補正モードの切り替えやらいっぱいスイッチがついている。こちらはマニュアル撮影なので全部OFFにする。

さて、これを赤道儀に載せないといけないが、適切なアリガタレールを持っていなかったので、これはレンタルの手続きの前に、いずれにせよ必ず必要と思って、よさそうなものを見繕ってネットで注文してあった。天文機材屋からも色々出ているが、ケンコーのミルトル用のオプションとして出ているKF-RMというのが都合がよさそうだったのでこれにした。ヨンニッパの三脚座の底には1/4と3/8の2つのカメラネジが縦に並んでいて、3/8の穴には1/4のアダプタが最初から嵌っていて、この2ヶ所にちょうどKF-RMの付属のネジを前後で固定してしっかり取り付けることができた。ネジ穴がひとつだとさすがにこの大きなレンズを赤道儀に取り付けて傾けたら自重で回転して緩んでしまったりしたら大変だが、2ヶ所で止まっていれば安心だ。ネジを締めるのには、六角レンチで回すキャップボルトとかではないので、ずいぶん前に買ったコインドライバーが活躍した。

撮影当日、昼間にはやぶさ2はリュウグウで採取したサンプルの入ったカプセルを切り離し、その後、自身はそのままだとカプセルの大気圏突入するのと同じ軌道のままなので地球を離脱するコースに乗るための軌道変更を行った。軌道変更が予定通り行われたということで、撮影するはやぶさ2は事前にもらった予報通りの位置に見られるはずということになる。暗くなった頃から、既に大きな望遠鏡のある天文台からは撮影成功どころか、本体だけでなくカプセルまで写ったという報が流れてくるが、こちらはもう少し遅くなってから撮影場所にでかける。

撮影は予定通り、最初の光度が暗くて動きが小さい間は、シュミカセで長時間露光で。といっても、少しでも有利になるようにISO感度をこのカメラの最大にしたのでそれほど長時間でもない。このカメラの最大はISO12800だが、常用は6400までで、12800は画像がひどく荒れてしまうので、普段は構図合わせのための試し撮りを短時間で済ませるためとかにしか使わないが、今回はそんなことは言ってられない。そのISO感度で背景が明るくなってしまわないシャッター速度にすると、15秒とかになってしまう。そのくらいの時間ならオートガイドの必要もないのでASiairは使わないことにして、AVX赤道儀はステラナビゲータからの自動導入だけにした。最初はカシオペヤα星の近くにいるので、アライメント星のひとつをカシオペヤα星にしておけばそこからほとんどズレなしで自動導入できた。ステラナビゲータに表示した追加天体の各時刻の位置と周囲の星の並びを確認しながら、はやぶさ2の現在位置が画面に入る位置に合わせて撮影するが、まるで写っている気配がない。いくらかパラメータを調節しながら撮ってみたが全然わからない。とはいっても、後で画像処理すればなんとか浮かび上がってくるかもしれないから、わからないながらも撮影を続けた。画面を軌跡がきれいに横切り現在の位置が画面の端近くになるようにしてしばらく連続撮影。はやぶさ2が画面の反対の端に近づいたら位置をあわせ直す、を繰り返した。

だんだん画面内の移動量が大きくなってきた0時半くらいから、シュミカセをやめてヨンニッパのカメラレンズに切り替え。こちらはシュミカセのF10に比べてF2.8とはるかに明るいので、最初はISOを少し下げてみたが、やはり写っている気配がないので、ISO12800に上げた。こうなるともうシャッター速度は2秒である。それでもその場で確認している分にはまるでわからなかったが、まあだんだん近づいて明るくなってくると写るようになるかもしれないし、シュミカセのときと同様に少しずつ位置をずらして追いかけながら撮影を繰り返した。

ちなみに、この日は月齢20過ぎの月が、撮影方向とは逆の東の空にだが煌々と輝いていた。撮影風景が下の写真だが、星がよく写る明るさで撮ると月明かりで山の木々もよく見え、地面には三脚の影が映り、空は青空に写っている。暗い空でも星景写真などでは空の色は青めに調整する向きも多いが、これは色味を振っているわけではなくて、いつものように太陽光固定で撮っていて、月明かりがなければどちらかというと光害でオレンジ色ぽく写っているところである。月の光が明るいせいで、昼間の空が太陽の光を散乱して青空になるのと同じ原理で、昼間よりは暗いながらも空の色が青くなる。

結局、はやぶさ2の姿は写っている気がしないまま、地球の陰に入る時刻に達して撮影終了。わざわざ高いレンズをレンタルまでしたのにダメだったかと気落ちした状態で、オーストラリアのウーメラにカプセルが大気圏突入するののネット中継を眺めながら機材を片付けて帰宅した。

帰宅後も撮影した画像をパソコンの画面でざっと見てみたがやはりどうも写っている様子がなく、とりあえずちょっとだけ寝ようと思って寝たが、目が覚めたらもうお昼過ぎだった。ネットには成功裏に撮影された画像も色々アップされていて更に落ち込む。各地の撮影報告を見ると、この日は運良くほぼ日本中お天気がよかったようだ。そんな中、国立天文台三鷹の50cmの公開望遠鏡では動画で撮影されたものがあったが、それを見ているとあまり周囲の暗い星まで写っているわけではないのにちゃんとはやぶさ2が写っている。これで写っているのなら私のにも写っていないはずがない気がした。撮影時刻がきっちり入っていたので、撮影場所はそんなに離れていないのでほぼ同じ位置に見えているはずだから、自分の写真と星の並びを照らし合わせてみれば、機材の能力が足りずに本当に写っていなかったのか、自分の座標のプロットの仕方が間違ってたのか、もしかしたら、少しズレたところに写っていたりするのかとかを確認できるのではないかと思って、国立天文台の動画に写っているのと同じ星の並びのパターンを照合し、その位置にいたのは間違いないという確信をもって階調強調した画像を見てみると、なんと短い線状の像が写っているのが見つかった。プロットは間違っていなかったし、機材も能力を発揮していた。前後のコマにもきちんと移動しながら写っている。

結局、よくわかるくらい写っていたのははやぶさ2が地球に近づいてきて明るくなってきた最後の方だけだった。いちばんよくわかるひと続きの撮影分を比較明合成したのが下の写真。よく撮っているISSの軌跡写真などに比べると間隔がずいぶん空いているが、これはホットピクセルのノイズなどがひどいので、通常のDSOの撮影などのように多数枚撮った後にダークを複数枚撮ってダーク処理するのではなく、その場で1枚ごとにカメラ内で「長秒時露光のノイズ低減」を行う設定にしたために、撮影後に同じ時間だけカメラ内でダークを撮る時間だけBUSYになって次の撮影がされないためである。その他の処理時間もかかって、2秒撮影、およそ3秒休み、くらいの間隔で撮影されている。また、背景が全体に青っぽいのは、先に書いたのと同様に月明かりがある空を明るく撮ったせいである。通常の天体写真なら背景をニュートラルグレーに調整するところだが、ここでは敢えて青味を残したままにした。

Hayabusa2 2020/12/06 01:54~55 Canon EOS 60D, Canon EF400mm F2.8L IS II USM (F2.8), ISO12800, 2sec×9, lighten composite, FlatAide, PhotoShop 2021, Trimmed

ともあれ、まがりなりにもはっきりそれと判別できるだけに写っていてよかった。実家の親にも面倒をかけてまでレンズをレンタルした甲斐もあったというものだ。リュウグウ、はやぶさ2ともに撮影できてとてもうれしい。

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ネオワイズ彗星 (C/2020 F3)

blogを再開してからも、どうも一旦落ちたペースはあまり戻らず、ほとんど記事が書けていなかったが、これはすぐにでも書いておかないわけにはいかない。

ヘール・ボップ彗星以来といわれる明るい彗星、ネオワイズ彗星 (C/2020 F3) が現れているが、ちょうど梅雨の最中でなかなか見られない。天気予報を見る限り、梅雨の中休みのような晴れの日も期待できず、このまま暗くなるまで毎日悪天続きのようである。きれいな彗星の画像の送られてくる北海道がうらやましい。そんな中、運よく土曜日の未明に、すぐに行ける範囲でわずかに晴れ間の出そうな予報があったので、この機会を逃したらもう見られないかもしれないと、行ってきた。

ネオワイズ彗星が見られるのは今のところ未明の午前3時頃。GPVの詳細の予報で土曜日の午前3時の予報が見られる木曜の昼間に千葉方面が雲が薄そうになっているのを見て、できれば行って観測しようと考え始めた。行ったことのない場所なので土地勘がないが、夜中に車が止められて、彗星の高度は10°以下と低いので見える北東方向が開けている場所を考えると、九十九里浜のどこかということになった。九十九里浜の海岸はカーブしていて、北寄りの方では北東方向が陸に寄って来る。南寄りなら海面上に見えるはずなので、そちらの面での条件はいいが、雲のかかり方の予報では南の方はあまりよくない。とりあえず、いくつか候補場所を選んでおいた。

当日夜にやはり予報で千葉方面が雲が薄目なのを確認して出発を決意。千葉だけでなく東京湾の上も晴れてそうである。海ほたるで観測するという情報も聞こえてくる。出発前に、GPVの20:30の更新画像をみると、時間によっては自宅付近も雲が少ない予報になっており、それならわざわざ出かけなくても、自宅から北東方向は都心の光害はあるもののの見通しはよいし、機材も手持ちのものを自由に使って落ち着いて撮影に臨める。だが、一瞬予報がよくなっただけで当たる保証はないので、やはり予定通り出かける。九十九里に向かうのにアクアラインを通って行くので、海ほたるで一旦休止し、23:30のGPVの更新を見て、自宅付近の予報がよさそうならそこで引き返す、九十九里より東京湾がよさそうならそのまま海ほたるで、やはり九十九里がよさそうならそのまま九十九里まで、という予定で出発した。

果たして、海ほたるに到着して確認してみると、やはり自宅付近は論外になっていて、海ほたるか九十九里かというとやはり九十九里まで行った方がよさそうだったので、そのまま足を進めた。しかし、千葉県に入ってからも、時々雨が降ったりで、これで星空が見えるのかと思う一方、前方の空に雲間から月が見えたりもしていた。最初に目的地にしていた釣ヶ崎海岸に行ってみるが、どうもカーナビが違うところを案内したようで、右往左往したあげく、正しい場所に行きつきはしたが、到着した時点で雨がザーザー。まあ通り雨のようなもので、その止んだ後は晴れるのかもしれないし、実際、雨がやんだら雲間から月と火星は見えたが、やはりあまりの雲のどっぷりさに、予報では雲の少ないもう少し北の方に移動することにした。九十九里ビーチタワーという小さな展望塔のようなもののある不動堂海岸についてみると、まだ雲はあるものの、きれいな星空が広がっていて、夏の大三角がきれいに見えていた。しかし、北東の空は、カシオペヤやペルセウスは見えるが、地平線近くには雲があった。

九十九里ビーチタワー九十九里ビーチタワー

ちょっとどうしようかと考えあぐねていたが、現地には自分以外にも車が何台か来ていて、単に夜中に海を見に来たカップルもいたが、やはり彗星狙いらしい二人組が、タワーの下のところで設営を始めていた。さらにもう1名機材を持った人がやってきて、こちらはタワーの上に陣取ったようだ。まあ、ここまで来ておいて何もしないで帰るというのもないので、ダメ元でも機材設営はするかと、自分もタワーの上で先に来ていた人の脇の空いているスペースに機材を運び込んで設営開始。

彗星の尾は長く伸びていて、望遠鏡では画面からはみ出てしまうくらいなので、今回はカメラレンズでの撮影で、広角と望遠でそれぞれ撮る計画。まずは、広角用のカメラをセットアップして撮影してみるが、もう地平線から出ているはずだが、まだ高度が低いせいかよくわからない。とりあえず、時折撮影して写っていないかながめながら、望遠用の方をセットアップ。こちらは固定撮影だと星像が流れるか微妙なところだが、念のためポラリエに載せる。ドイツ式赤道儀型強化版にしたので、天の北極が画面の上向きになる。雲がなければ不自然ではないのだが、地平線に沿ったような層をなす雲が、斜めに見えてちょっと変な感じだ。彗星は見えてこないが、近くのぎょしゃ座の星を頼りに彗星の見える位置を狙って試し撮りを繰り返しているうちに、なんとなく筋状の光が写るようになった。しかし、まだ肉眼はおろか、双眼鏡で見ても全くわからない。

やがてだんだんはっきり写真に写るようになってくると、双眼鏡でもよくわかるようになってきた。広角の方でも写るようになった。しかし、肉眼ではどうもよくわからない。雲のもやもやにまぎれてなんとなく核の部分がぼんやり光ってるように思える程度の見え方だった。自信をもって肉眼彗星を見たと言うには少々心もとない。

常に雲がかかっていて、なかなか尾全体がきれいに見えることがなかったが、まあ一番よさそうな写真がこれ。多数撮ってスタックしたかったが、とても連続して雲のかからない写真は撮れなかった。

C/2020 F3
Comet NEOWISE (C/2020 F3) 2020/07/11 03:22 Canon EOS 60D, EF-S55-250mm F4-5.6 IS II (171mm F5.6), ISO3200, 8sec, StellaImage8, Topaz DeNoise AI, Photoshop CC,

広角で撮った方の写真はこちら。少し広角で撮りすぎたか、海岸より陸地側の画面で左側には強烈なライトがあって画面が見苦しいので、横位置で撮っていたものをトリミングして、上下幅はそのままで縦長画面になるようにした。ぎょしゃ座の五角形が画面におさまっているがθ星だけ雲に隠れてよくわからなくなってしまって残念である。固定撮影なのだから、連続でインターバル撮影にしてたくさん撮っておけばよかった。

C/2020 F3
Comet NEOWISE (C/2020 F3) 2020/07/11 03:12 Canon EOS 60D, SIGMA 10-20mm F3.5 EX DC HSM (20mm F3.5), StellaImage8, Topaz DeNoise AI, Photoshop CC, trimming

まあ、お天気は厳しい状況でそれほどには上手く撮れなかったが、そうはいっても本格的に天体写真を撮り始めて以来はじめての立派な彗星の写真を撮れて、遠出をした甲斐があった。

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StellaShot2試用とM75, NGC7009

以前からStellaShotは気にはなっていたのだが、赤道儀、撮影用カメラ、ガイド用カメラを接続しないといけないのに、前に天文用に使っていたWinタブレットはUSB端子が1つしかなかったとか、StellaShot1.5ではオートガイドはできるもののガイドカメラの機種が限定されていて、惑星用のASI290MCをガイド用に使おうとしても対象機種ではなかったとかということもあって、導入には至っていなかった。

一方、当blog休止中で記事にしていなかったが、多少形態が違うので対抗馬というわけでもないが、天体撮影の統合システムとして、ASiairというのがあって、こちらは上記の制約が問題にならなかったし、StellaShotのソフトウェアの価格より、ASiairのハードウェアの価格の方がずっと安かったということもあって、既に導入済みである。ただし、最近PROバージョンが出たがアップグレードはしていない。

StellaShotの方は、バージョン2になって、このASiairを意識してか、GearBoxという外付けハードウェアもオプションとして出して、ケーブルの接続はこちらが一手に引き受けて、パソコンは無線LANだけで接続ということも可能になった。しかし、逆にこちらのパソコンが買い替えてUSB端子が3つあるものになったので、GearBoxのお世話にならなくても大丈夫になった。対応ガイドカメラも、2.0では「ZWO ASIシリーズ」となっていて特定の機種だけの対応ではなく全部OKになったようである。

そんなわけでGearBoxのハードがなくても大丈夫な環境は整っているので、とりあえず体験版を入れて試してみることにした。

まず最初に失敗したのが、StellaShot 体験版 で検索してあまりよく見ずにダウンロードページに行って落としてきたものをインストールしたところ、どうも様子がおかしいと思ったら1.5の体験版だった。Stellashot 1.xまでとStellaShot2は別モノという扱いなのか、1.5のサイトはそのままで、別に2のサイトがあって、2の体験版はそちらから落としてこないといけなかった。

もうひとつの失敗は、パソコン (IdeaPad S540) にUSB端子が3つあるといっても、USB-A端子が2つとUSB-C端子なこと。これまで使っていた手持ちの接続ケーブルは全部A端子なので、USB-C端子には直接つながらない。これもまだ記事にしていないが、先日買った耳かき付きUSBカメラに付属品でUSB-C変換コネクタが付いてたからそれを使えばいいやと思っていたのだが、それはmicro-USBからUSB-Cに変換するものなので、ここでは役に立たないのだった。とりあえず、必要なケーブルはヨドバシカメラの通販で注文を入れておいて、ガイドカメラは使わず、赤道儀と撮影用カメラだけの接続で試してみることとなった。

機器の認識はすんなり行って、赤道儀にCelestron Advanced VX (経緯台のNexStar SEは対象機種になっていないので選択肢に出てこなかった)、カメラはCanon EOS 60D、今の所3つ同時に接続はできなかったが個別に接続してオートガイダーにZWO ASI290MCもちゃんと認識された。

StellaShotは、タブレットPCでの利用も考えてボタンなどのUIが全部大きくかったり、数値入力は入力用パッドが表示されたりして、タッチで操作しやすいようになっている。前のWinタブレットのときは、結局使用するWindowsアプリがキーボードマウス操作が前提になっているので、常に無線接続の外付けキーボードと一緒に使用しなければならず、知らない間に充電切れになっていたり、色々苦労していたが、これならそんなこともなかったのかもしれない。が、もう大きいパソコンになったので、別に関係なくなった。

実際にベランダで望遠鏡を空に向けて使ってみるが、自動導入もウリの導入補正もすんなり行った。導入補正はとてもありがたい機能だ。ASiairにもプレートソルビングという同様の機能があるのだが、これまで使っていてどうも失敗することが多く、なかなか頼りきれない感じだった。もちろん導入する対象領域にもよるだろうから一概にはいえないが、今回試したところでは、たまにしか失敗しなかったし、だいたい露出が適正でなかったとか原因はわかる。成功するときはあっという間にマッチングされる。失敗するときは失敗が確定するまでにずいぶん時間がかかる。操作も、ASiairではいろいろひとつのタブレット画面に詰め込んである上に、SkySafariと行ったり来たりする必要があるのに比べると、パソコンの大きな画面でやりやすい。

StellaShot2の新機能として極軸補正の機能がついた。北極星の見えない南向きのベランダで使用するときはありがたい機能なので試してみようと思ったが、どうも極軸補正のボタンが見当たらない。PDFマニュアルを見ても設定パネルの極軸補正ボタンを押すとしか書いていなくて、よくわからない。結局極軸補正を試すのもあきらめた。まあ、ベランダでは方角ははっきりわかっているので、いつも三脚の置き方でだいたい北は正しく向いているはずなので、極軸補正なし、ノータッチガイド (という言葉は常々おかしいと思っているのだが) で撮影することとした。

未明に木星、土星、火星を撮影するついでに試そうと思ったので、その時点でベランダから見える天体ということで、木星、土星付近にあった、球状星団 M75と、土星状星雲 NGC7009を撮影してみた。どちらも視直径の小さな天体で、モニタ画面では小さな光の塊にしか見えなかったが、画像処理した結果はM75はきちんと球状星団に見えたし、NGC7009は内部の輪のような構造がいちおうわかるように写っていた。それにしても小さいので、画像は写野の中央部だけをトリミングしてあるが、それでも小さい。

M75 M75 Globular Cluster 2020/05/02 03:16~ Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO3200, 15sec x 34, Dark x 11, DSS, FlatAide, Topaz DeNoise AI, Photoshop CC, 1/2 trimming

NGC7009NGC7009 Saturn Nebula 2020/05/02 03:29~ Canon EOS 60D, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO3200, 15sec x 40, Dark x 11, StellaImage8, Topaz DeNoise AI, Photoshop CC, 1/4 trimming

後でわかったのだが、極軸補正ボタンが見当たらなかったのは、Windowsの表示設定の関係であった。最近のWindowsパソコンは、画面のドット密度が高くなって、従来のようにドット数固定サイズのアイコンや文字の大きさで表示すると、実表示サイズが極端に小さくなってしまうため、適切な割合を設定して拡大して表示するようになっている。このパソコンでは150%が推奨値として最初から設定されていた。その状態でStellaShot2を動かすと、設定パネルに表示される項目が画面の縦いっぱいに表示しきれずに、はみ出た分は見えなくなってしまうというわけだった。上から順番に表示されて一番下ではみ出て切れれば気付いたのかもしれないが、操作パネルは上のタブで切り替えても固定表示される項目が下端に固定されていて、タブ項目ごとに異なる操作ボタンではみ出たものは、その固定表示の上の部分で切れることになる。ところが、パネル内の項目の区切り線が固定部分との区切りも同じデザインで並んでいるため、そこにそういう境目があるのに気付かなかった。確かに、よく見ると補正/設定グルーブの上の極軸パターンのボタンの下端が少しだけ切れている。

結局、これは150%だった拡大率を125%に変更することで表示されて操作できるようになったが、そうするとシステム全体でアイコンや文字の大きさがひとまわり小さくなってしまって、近くに焦点の合いづらい眼には少しつらい状況になる。タブレット操作のときも、ボタンは大きめに表示された方が操作しやすいだろう。はみ出た分は、FireCaptureやSharpCapのように、スクロールするようになっていればいいのにと思った。

アップデータのリリースノートを見ると、2020/3/26の2.0aで『「極軸補正」ダイアログの表示を改善』という項目があるが、これはボタンを押した後に出てくる画面の話のようだし、体験版は2.0aアップデータ相当となっているのでこれは既に含まれているようだ。それ以降のアップデータでこの件が直っているかどうかわからないが、リリースノートにそれらしい項目は見当たらない。

ディスプレイの設定
ディスプレイの設定

150パーセント150%表示で、極軸補正ボタンが見えない

125パーセント125%表示で、全体にボタンが小さくなり、補正/設定グループのボタンが表示されている

150パーセント 125パーセントボタン部拡大 左: 150%表示、右: 125%表示

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燃える木星雲と妙なゴースト

Flame Nebula w/ CLS FilterFlame Nebula 2019/01/03 00:33~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO3200, 120sec x 37, Dark x 8, StellaImage8, Photoshop CC

前の記事の、オリオン座のランニングマン星雲、馬頭星雲に続いて、同じ時期で近くで撮りやすかったので、またもオリオン座中央付近にある、「燃える木星雲」を撮ってみた。場所は馬頭星雲のすぐ近くで、目印は三ツ星の一番左端のアルニタクのすぐそば。このような長焦点で撮っても同じ視野に入ってくるくらい近くなので、フレーミングには困らない。

ところが、燃える木星雲そのものはまあそれなりに撮れたのだがそのアルニタクが星雲に比べてあまりに明るいために、余計なものが出てきてしまった。アルニタクそのものの周囲の格子状の位置にドーナツ型のゴーストのようなものがたくさん写っている。一体これは何だろうか? まるでタコの吸盤のように見える。

確かにこの領域は、こうやって明るい星が写野に入り込むのでゴーストが発生しやすく、結構みなさん困られているという話はきくが、ゴーストといってもこれはずいぶん妙なものだ。ドーナツ状なのは、ゴーストはピントが合っていない状態で写っているので、シュミカセ望遠鏡の副鏡のところが影になったドーナツ形状になるのはわかるが、格子状に並んでいるのは一体どういうことだろう。

そういえば、昔、iPhone 4 を使っていたときは、空を撮るのに太陽が画面に入ると、なんとなく似たようなゴーストの並びが発生していた。発生原理はこれと同じだろうかどうだろうか。

iPhone 4 のゴースト
iPhone 4 で撮影

格子状にたくさん出ていることから、考えつくのは何か格子状のものによる回折現象くらいだが、格子状のものといっても、撮影光学系の中にあるのは、カメラのCMOS撮像素子かその色フィルタか。その画素の並び自体が回折格子の働きをしてこういう並びの像を発生するのではないだろうか。しかし、撮像素子の部分そのまので回折現象が起きるのなら、自分に写ることはないから、どこかで反射して戻ってくるのがゴーストの原因である。

そこで気になったのが、この撮影でも使用していたクリップタイプの光害フィルタ。撮像素子のすぐ前に置いてあるので、悪影響がありそうである。他に反射するくるものといえば望遠鏡の副鏡や主鏡、そして補正版の裏側くらいだが、そういうものでは拡散してしまってこんなふうには写らなさそうだ。

そこで、フィルタなしで撮影してみてこのタコの吸盤ゴーストは発生しないかどうか確かめようとしたが、なかなかうまく撮る時間がとれず、月が間近で空が明るいところにフィルタなしという状況でしかもあまり枚数を撮れなかったのだが、とにかく比較用ということでできたのが、次の画像。

Flame Nebula w/o CLS FilterFlame Nebula w/o CLS Filter 2019/01/18 23:27~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO1600, 60sec x 13, StellaImage8, FlatAide, Photoshop CC

画像処理するまでは、これはゴースト出てないや、と思ったのだが、星雲の像がわかるように深く画像処理をかけてみると、やはり格子状のゴーストが出ている。ということは、クリップフィルタはシロであった。疑って悪かった。

ということは振り出しに戻って、一体どうやってこの像は写っているのだろうか。撮像素子とその保護板の間ではこんなに離れた位置に像はできないだろうし。また、色が赤いのも気になる。ゴーストの光源の恒星の色は白いのに、赤い色だけ選択的にゴーストが発生している。単に長い波長ででだけ起きるということかもしれないが。

原因不明なままなのは気持ち悪いが、ともあれ、こんなゴーストが発生しては見栄えが悪いので、あまり明るい星を写野に入れた構図は避けるしかなさそうだ。

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ランニングマン星雲と馬頭星雲

旧来ずっと天体写真撮影に使ってきたNexStar 5SEとEOS 60Dのみの構成から、昨年夏までに追加して主に惑星撮影に供していた新規機材、AVX赤道儀、HdgeHD 800鏡筒、ASI290MC、に加えて、昨年終わり頃に加わった前の記事までの機材、すなわち、ガイド鏡によるオートガイド、赤外改造カメラ、そして光害フィルタも加えて、これまでうまく撮れなかった星雲類がまがりなりにも撮れるようになった。年末年始にかけて2点ほど撮ってみたものを載せておく。実際のところはノイズだらけでとても人に見せられるレベルの画像でもないが、とりあえずここまでできるようになりましたということで。

ド定番のM42オリオン大星雲は、テスト撮影には使ったがとりあえず置いておいて、まず最初は、その少し北に離れたところにある、通称ランニングマン星雲 NGC1973/1975/1977。人が走っているような形に見えるというが、ベネッセのロゴの一部といった方がいいかもしれないと思う (笑)。これまで、この星雲の位置は漫然とM42の少し北の方と思っていたが、星雲の中に結構明るい星がいくつかあって、これが実はちょうどオリオン座の小三つ星の北の方の星に相当するのだということは、今回撮影しようとしてみて初めて気付いた。M42は小三ツ星の真ん中の星というのは広く知られているが、それと同じような状況である。いずれも、小三ツ星の星のひとつと数えられるわけだが、実際は星雲の中にあるいくつかの星の集まりでひとつと数えられている。

Runningman Nebula
Running Man Nebula 2018/12/31 00:51~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO3200, 120sec x 19, Dark x 4, StellaImage8, Photoshop CC

次に馬頭星雲 IC434。これは暗黒星雲としてはあまりにも有名な星雲で、天体写真といえばこの馬頭星雲は定番中の定番だろう。馬の形がまっすぐに見えるように紹介されることも多いが、北を上にすると、横倒しの状態になる。馬頭星雲とは別に画面の左上の方で恒星のまわりが雲をかぶったようになっているのがNGC2023。場所はやはりオリオン座で、小でない方の三ツ星の東端のアルニタクの少し南側という、これもわかりやすい場所にある。

この写真をスタックするときに、なぜかステライメージ8の自動処理ではうまく自動位置合わせができず、画面内の明るい星2つをどういうわけか取り違えて画像を180°回転させてマッチングしてしまったりして失敗していたので、ステライメージの代わりにDeepSkyStacker (DSS) というソフトを使ってスタッキングしてみた。これもCLSフィルタの場合と同じく、以前使ってみようとしたが、どうもうまくいかくなてあまり使っていなかったものだが、今回は、すんなり行った。

Horsehead Nebula
Horsehead Nebula 2019/01/01 01:01~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO3200, 120sec x 36, Dark x 4, DeepSkyStacker, Photoshop CC

上記2つの写真、いずれも星雲の形はよくわかるくらいにはなったが、とてもノイズだらけである。光害の中で撮影して背景に埋もれたかすかな画像を浮かび上がらせるために極端に画像処理をしている結果だが、もっと時間をかけて多数枚撮影してなめらかな画像にしないといけなさそうだ。

また、現在揃った機材では焦点距離の長い鏡筒しかないため、基本的に小さめの天体しか撮影できなくて、広い範囲に広がった星雲など撮ることができない。それで、今回は季節的にもちょうどよいオリオン座の中に、単独では小さめな星雲があるのを選んでみた。他には、小さく淡い天体としては、赤外改造の効果はあまり出ないが、系外銀河なども狙っていきたい。

 

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Astronomik CLSフィルタ

これは、昨年末に買ったものシリーズではなく、もっとずっと以前に買ってあったものなのだが、これまでうまく活用できずに、このblogで紹介することもなくお蔵入りしていたもの。今回、他の機材の導入によって役立つようになったぽいので、今さらながら、ここでご紹介。

Astronomik CLS Filter

このフィルタはいわゆる光害フィルタで、CLSはCity-Light-Supressionの略。都市部の光害による光の波長の成分を除去して天体のコントラストを高めるためのフィルタ。色のついた星雲などには、特定の波長の成分で光っているので、それらの波長は通過させて、そのような成分のない波長で、都市の照明によく用いられる水銀灯やナトリウム灯などの波長成分を重点的に遮断するようにつくられたもの。実は昨年末あたりに、クワッドバンドパス (QBP) フィルタというのが脚光を浴びていたが、それはもっと通過帯域を狭めて、天体に必要な波長成分のみ残すようにしたもので、まあ考え方は結構近い。そんなわけで、流行りにちょっと遅れながらも半分だけ乗っかったような感じだ。フィルタの通過波長などに関して、ちょうどQBPに関するこの記事がとても参考になる。CLSフィルタはこの中で『従来の「強い光害カット」フィルター』と言われているものに相当する。

AstronomikのCLSフィルタには単なるCLSとCLS-CCDというタイプがある。CLSは通常のデジタルカメラ用、CLS-CCDは赤外改造をしたデジタルカメラ用ということだ。フィルタとして何が違うかというと、長い方の波長の透過率が、CLSではHα線以上が全部通しになっているのに対し、CLS-CCDではSⅡを超えた先はまた遮断するようになっている。

非改造カメラではもともと内蔵されている赤外線成分用のフィルタでHαの波長を含むあたりから先は遮断されているのでこちらのフィルタの方で遮断する必要がないのに対して、改造機では改造方法にもよるがその先の波長の長い赤外線も全部通してしまうので、天体の光の成分の含まれない部分をカットするようになっている。改造機によっては、もともと内蔵の赤外線フィルタを外した代わりに、Hαは通すがもっと先はカットするフィルタを装着しているものの場合はCLSでもよさそうだが、私が先日入手した改造カメラはどうも全部通しタイプらしいので、本当はCLSではなくCLS-CCDを使うべきところである。しかし、このフィルタを購入した当時はまだ改造機を持っていなかったので、非改造カメラで使うにはCLSフィルタの方が適切であろうとこちらを購入していた。

CLSCLS-CCD
CLSフィルタとCLS-CCDフィルタの通過波長帯域 (横軸の目盛りの幅が違うのに注意)

また、これらのフィルタには取り付け寸法などによって色々なサイズや形状のものがあり、主に円形のネジ込式のタイプだが、私が購入したのは、キヤノンのAPS-CサイズのEOSカメラのミラーの前の部分に取り付ける、Clipタイプ。カメラ側に取り付けるため、カメラの機種は限定されるが、レンズや望遠鏡は色々なものでも対応できる。ただし、APS-C用のEF-Sレンズで、カメラ側の先端が出っ張っているものはダメで、フルサイズ用のEFレンズでないとダメだが、EF-S仕様のレンズでもフルサイズ用と同じ位置までしかないものなら大丈夫で、他メーカー用と設計を共用しているサードパーティーのレンズでは、APS-C用のレンズでも大丈夫なようだ。

取り付けは下の写真のようになる。下の写真では斜めから見たときの反射の加減でフィルタが黄色く見えるが、透過時の色は最初の写真のように青っぽい色をしている。

取り付け前取り付け後
フィルタの取り付け前と取り付け後

購入当時なぜうまく活用できなかったかというと、このフィルタはかなりの帯域を遮断するために、通常よりも露光時間がたくさん必要になる。しかも、赤色の部分はHαに近い部分から長い側しか通さないので、非改造のカメラでは透過する光の成分がとても少なく、普通に撮影するととても青っぽい色に写ってしまう。赤色の成分も十分な光量になるようにするには通常の4倍くらいは露出をかけないといけない。

一方、私の撮影環境はというと、光害の多い街中で、NexStar 5SEでの、オートガイドなしでの撮影なので、追尾精度の問題ですぐにブレてしまうのとすぐに背景が明るくなってしまうからという点との両方の理由で長時間露光はできないが、まあある程度そのバランスが取れていたので、その範囲の露出での撮影をしていた。ところがこのフィルタを使うと、光害地といえども上記のように多くの露出が必要なのでどうしても露出が足りなくて赤の光が少なすぎる状態か、ISO感度を無理に上げてノイズっぽくなってしまうかということになってしまい、撮れた画像を処理にかけても、なかなかフィルタの効果のある画像が得られなかった。もっと高感度ノイズの少ないカメラならそれでもなんとかなったのかもしれないが。

ところが、ここにきて、架台はAVX赤道儀になってガイド撮影もできるようになって十分な長時間露光ができるようになり、カメラも赤外改造のものが用意できたところで、やっとこのフィルタの出番がやってきたということになる。実際、改造カメラを手にして撮った写真は、そのままだと確かに真っ赤に写るが、色バランスを整えてみると、期待し過ぎていたのかもしれないが、思ったほどには赤い天体がすごくよく写っているというわけでもなかった。そこで、このフィルタを使えば赤がよく写るようになっているのだから、効果がよく現れるのではないかということで、このフィルタに再登場いただくことになった。本来は改造カメラには赤外線のずっと波長の長い部分をカットするCLS-CCDタイプでないといけないのだろうが、ないよりはずっと効果があるはずである。

あまりに前置きが長くなったが、ここでとりあえず試し撮りで撮り比べた写真を。画像処理はせずに、1枚撮りでJPEGの撮って出しのまま。色別のヒストグラムを添付しておく。JPEG撮って出しなので撮影時のホワイトバランス(WB)設定がそのまま効いてくるので、WB設定も併記している。

まず1枚目は、赤外改造カメラそのままでフィルタなしの状態。2枚目がそのままCLSを装着しただけの場合で、WBもそのままなので、純粋にフィルタでカットされた分の色の光量が減った状態。全体にかなり暗くなる。非改造カメラよりは赤成分が多いとはいえ、WBで色バランスをとるようにしてあるため、フィルタをかけるとやはり赤成分が特に少なくなる。が、絵としてみると、背景は相当暗くなっているのに対して、星雲の部分も暗くなってはいるものの、ある程度明るさを保っており、全体としては暗くなっているものの、コントラストとしては確かによくなっているように見える。しかし、全体に暗くなっているせいで、星雲周辺の淡い色の部分はよくわからなくなってもいる。

3枚目はフィルタで狂ってしまっている色バランスをできるだけととのえるために、色温度10000Kの設定で撮影したもの。本来、マニュアルWBでフィルタ装着時に最適な設定にすればいいのだろうけれど、カメラのマニュアルWB設定は一通りしかないので、そちらを設定してしまうとフィルタなしのときの設定がなくなってしまうので、とりあえずこちらで。これでもまだ赤がだいぶ足りないが、前のものに比べると色の間の差がかなり少なくなっている。絵を見ると、背景の色もニュートラルに近くなり、星雲の本体がずいぶん赤く浮き上がるようになった。

しかし、やはりフィルタの減衰のせいで全体に光量が足りないので、4枚目はWB設定は同じままで露出を一段増やしたもの。画像処理の元画像に使うにはこのくらいの方がいいだろう。オリオン大星雲は明るいので、明るいほうが飽和気味になっているが、そこまで明るくない天体ならもう一段増やすくらいでもいいかもしれない。

フィルタなしフィルタなし
フィルタなし (改造機用マニュアルWB)

CLS マニュアルWBCLS マニュアルWB
CLSフィルタあり (改造機用マニュアルWB)

CLS 10000KCLS 10000K
CLSフィルタあり (色温度10000K)

CLS 10000K 露出多CLS 10000K 露出多
CLSフィルタあり (色温度10000K、露出1段増)

いずれも 2018/12/21 Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO400, 120sec 4枚目のみISO800

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