2019年1月 のアーカイブ

燃える木星雲と妙なゴースト

Flame Nebula w/ CLS FilterFlame Nebula 2019/01/03 00:33~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO3200, 120sec x 37, Dark x 8, StellaImage8, Photoshop CC

前の記事の、オリオン座のランニングマン星雲、馬頭星雲に続いて、同じ時期で近くで撮りやすかったので、またもオリオン座中央付近にある、「燃える木星雲」を撮ってみた。場所は馬頭星雲のすぐ近くで、目印は三ツ星の一番左端のアルニタクのすぐそば。このような長焦点で撮っても同じ視野に入ってくるくらい近くなので、フレーミングには困らない。

ところが、燃える木星雲そのものはまあそれなりに撮れたのだがそのアルニタクが星雲に比べてあまりに明るいために、余計なものが出てきてしまった。アルニタクそのものの周囲の格子状の位置にドーナツ型のゴーストのようなものがたくさん写っている。一体これは何だろうか? まるでタコの吸盤のように見える。

確かにこの領域は、こうやって明るい星が写野に入り込むのでゴーストが発生しやすく、結構みなさん困られているという話はきくが、ゴーストといってもこれはずいぶん妙なものだ。ドーナツ状なのは、ゴーストはピントが合っていない状態で写っているので、シュミカセ望遠鏡の副鏡のところが影になったドーナツ形状になるのはわかるが、格子状に並んでいるのは一体どういうことだろう。

そういえば、昔、iPhone 4 を使っていたときは、空を撮るのに太陽が画面に入ると、なんとなく似たようなゴーストの並びが発生していた。発生原理はこれと同じだろうかどうだろうか。

iPhone 4 のゴースト
iPhone 4 で撮影

格子状にたくさん出ていることから、考えつくのは何か格子状のものによる回折現象くらいだが、格子状のものといっても、撮影光学系の中にあるのは、カメラのCMOS撮像素子かその色フィルタか。その画素の並び自体が回折格子の働きをしてこういう並びの像を発生するのではないだろうか。しかし、撮像素子の部分そのまので回折現象が起きるのなら、自分に写ることはないから、どこかで反射して戻ってくるのがゴーストの原因である。

そこで気になったのが、この撮影でも使用していたクリップタイプの光害フィルタ。撮像素子のすぐ前に置いてあるので、悪影響がありそうである。他に反射するくるものといえば望遠鏡の副鏡や主鏡、そして補正版の裏側くらいだが、そういうものでは拡散してしまってこんなふうには写らなさそうだ。

そこで、フィルタなしで撮影してみてこのタコの吸盤ゴーストは発生しないかどうか確かめようとしたが、なかなかうまく撮る時間がとれず、月が間近で空が明るいところにフィルタなしという状況でしかもあまり枚数を撮れなかったのだが、とにかく比較用ということでできたのが、次の画像。

Flame Nebula w/o CLS FilterFlame Nebula w/o CLS Filter 2019/01/18 23:27~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO1600, 60sec x 13, StellaImage8, FlatAide, Photoshop CC

画像処理するまでは、これはゴースト出てないや、と思ったのだが、星雲の像がわかるように深く画像処理をかけてみると、やはり格子状のゴーストが出ている。ということは、クリップフィルタはシロであった。疑って悪かった。

ということは振り出しに戻って、一体どうやってこの像は写っているのだろうか。撮像素子とその保護板の間ではこんなに離れた位置に像はできないだろうし。また、色が赤いのも気になる。ゴーストの光源の恒星の色は白いのに、赤い色だけ選択的にゴーストが発生している。単に長い波長ででだけ起きるということかもしれないが。

原因不明なままなのは気持ち悪いが、ともあれ、こんなゴーストが発生しては見栄えが悪いので、あまり明るい星を写野に入れた構図は避けるしかなさそうだ。

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ランニングマン星雲と馬頭星雲

旧来ずっと天体写真撮影に使ってきたNexStar 5SEとEOS 60Dのみの構成から、昨年夏までに追加して主に惑星撮影に供していた新規機材、AVX赤道儀、HdgeHD 800鏡筒、ASI290MC、に加えて、昨年終わり頃に加わった前の記事までの機材、すなわち、ガイド鏡によるオートガイド、赤外改造カメラ、そして光害フィルタも加えて、これまでうまく撮れなかった星雲類がまがりなりにも撮れるようになった。年末年始にかけて2点ほど撮ってみたものを載せておく。実際のところはノイズだらけでとても人に見せられるレベルの画像でもないが、とりあえずここまでできるようになりましたということで。

ド定番のM42オリオン大星雲は、テスト撮影には使ったがとりあえず置いておいて、まず最初は、その少し北に離れたところにある、通称ランニングマン星雲 NGC1973/1975/1977。人が走っているような形に見えるというが、ベネッセのロゴの一部といった方がいいかもしれないと思う (笑)。これまで、この星雲の位置は漫然とM42の少し北の方と思っていたが、星雲の中に結構明るい星がいくつかあって、これが実はちょうどオリオン座の小三つ星の北の方の星に相当するのだということは、今回撮影しようとしてみて初めて気付いた。M42は小三ツ星の真ん中の星というのは広く知られているが、それと同じような状況である。いずれも、小三ツ星の星のひとつと数えられるわけだが、実際は星雲の中にあるいくつかの星の集まりでひとつと数えられている。

Runningman Nebula
Running Man Nebula 2018/12/31 00:51~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO3200, 120sec x 19, Dark x 4, StellaImage8, Photoshop CC

次に馬頭星雲 IC434。これは暗黒星雲としてはあまりにも有名な星雲で、天体写真といえばこの馬頭星雲は定番中の定番だろう。馬の形がまっすぐに見えるように紹介されることも多いが、北を上にすると、横倒しの状態になる。馬頭星雲とは別に画面の左上の方で恒星のまわりが雲をかぶったようになっているのがNGC2023。場所はやはりオリオン座で、小でない方の三ツ星の東端のアルニタクの少し南側という、これもわかりやすい場所にある。

この写真をスタックするときに、なぜかステライメージ8の自動処理ではうまく自動位置合わせができず、画面内の明るい星2つをどういうわけか取り違えて画像を180°回転させてマッチングしてしまったりして失敗していたので、ステライメージの代わりにDeepSkyStacker (DSS) というソフトを使ってスタッキングしてみた。これもCLSフィルタの場合と同じく、以前使ってみようとしたが、どうもうまくいかくなてあまり使っていなかったものだが、今回は、すんなり行った。

Horsehead Nebula
Horsehead Nebula 2019/01/01 01:01~ Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, Astronomik CLS Filter, ISO3200, 120sec x 36, Dark x 4, DeepSkyStacker, Photoshop CC

上記2つの写真、いずれも星雲の形はよくわかるくらいにはなったが、とてもノイズだらけである。光害の中で撮影して背景に埋もれたかすかな画像を浮かび上がらせるために極端に画像処理をしている結果だが、もっと時間をかけて多数枚撮影してなめらかな画像にしないといけなさそうだ。

また、現在揃った機材では焦点距離の長い鏡筒しかないため、基本的に小さめの天体しか撮影できなくて、広い範囲に広がった星雲など撮ることができない。それで、今回は季節的にもちょうどよいオリオン座の中に、単独では小さめな星雲があるのを選んでみた。他には、小さく淡い天体としては、赤外改造の効果はあまり出ないが、系外銀河なども狙っていきたい。

 

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Astronomik CLSフィルタ

これは、昨年末に買ったものシリーズではなく、もっとずっと以前に買ってあったものなのだが、これまでうまく活用できずに、このblogで紹介することもなくお蔵入りしていたもの。今回、他の機材の導入によって役立つようになったぽいので、今さらながら、ここでご紹介。

Astronomik CLS Filter

このフィルタはいわゆる光害フィルタで、CLSはCity-Light-Supressionの略。都市部の光害による光の波長の成分を除去して天体のコントラストを高めるためのフィルタ。色のついた星雲などには、特定の波長の成分で光っているので、それらの波長は通過させて、そのような成分のない波長で、都市の照明によく用いられる水銀灯やナトリウム灯などの波長成分を重点的に遮断するようにつくられたもの。実は昨年末あたりに、クワッドバンドパス (QBP) フィルタというのが脚光を浴びていたが、それはもっと通過帯域を狭めて、天体に必要な波長成分のみ残すようにしたもので、まあ考え方は結構近い。そんなわけで、流行りにちょっと遅れながらも半分だけ乗っかったような感じだ。フィルタの通過波長などに関して、ちょうどQBPに関するこの記事がとても参考になる。CLSフィルタはこの中で『従来の「強い光害カット」フィルター』と言われているものに相当する。

AstronomikのCLSフィルタには単なるCLSとCLS-CCDというタイプがある。CLSは通常のデジタルカメラ用、CLS-CCDは赤外改造をしたデジタルカメラ用ということだ。フィルタとして何が違うかというと、長い方の波長の透過率が、CLSではHα線以上が全部通しになっているのに対し、CLS-CCDではSⅡを超えた先はまた遮断するようになっている。

非改造カメラではもともと内蔵されている赤外線成分用のフィルタでHαの波長を含むあたりから先は遮断されているのでこちらのフィルタの方で遮断する必要がないのに対して、改造機では改造方法にもよるがその先の波長の長い赤外線も全部通してしまうので、天体の光の成分の含まれない部分をカットするようになっている。改造機によっては、もともと内蔵の赤外線フィルタを外した代わりに、Hαは通すがもっと先はカットするフィルタを装着しているものの場合はCLSでもよさそうだが、私が先日入手した改造カメラはどうも全部通しタイプらしいので、本当はCLSではなくCLS-CCDを使うべきところである。しかし、このフィルタを購入した当時はまだ改造機を持っていなかったので、非改造カメラで使うにはCLSフィルタの方が適切であろうとこちらを購入していた。

CLSCLS-CCD
CLSフィルタとCLS-CCDフィルタの通過波長帯域 (横軸の目盛りの幅が違うのに注意)

また、これらのフィルタには取り付け寸法などによって色々なサイズや形状のものがあり、主に円形のネジ込式のタイプだが、私が購入したのは、キヤノンのAPS-CサイズのEOSカメラのミラーの前の部分に取り付ける、Clipタイプ。カメラ側に取り付けるため、カメラの機種は限定されるが、レンズや望遠鏡は色々なものでも対応できる。ただし、APS-C用のEF-Sレンズで、カメラ側の先端が出っ張っているものはダメで、フルサイズ用のEFレンズでないとダメだが、EF-S仕様のレンズでもフルサイズ用と同じ位置までしかないものなら大丈夫で、他メーカー用と設計を共用しているサードパーティーのレンズでは、APS-C用のレンズでも大丈夫なようだ。

取り付けは下の写真のようになる。下の写真では斜めから見たときの反射の加減でフィルタが黄色く見えるが、透過時の色は最初の写真のように青っぽい色をしている。

取り付け前取り付け後
フィルタの取り付け前と取り付け後

購入当時なぜうまく活用できなかったかというと、このフィルタはかなりの帯域を遮断するために、通常よりも露光時間がたくさん必要になる。しかも、赤色の部分はHαに近い部分から長い側しか通さないので、非改造のカメラでは透過する光の成分がとても少なく、普通に撮影するととても青っぽい色に写ってしまう。赤色の成分も十分な光量になるようにするには通常の4倍くらいは露出をかけないといけない。

一方、私の撮影環境はというと、光害の多い街中で、NexStar 5SEでの、オートガイドなしでの撮影なので、追尾精度の問題ですぐにブレてしまうのとすぐに背景が明るくなってしまうからという点との両方の理由で長時間露光はできないが、まあある程度そのバランスが取れていたので、その範囲の露出での撮影をしていた。ところがこのフィルタを使うと、光害地といえども上記のように多くの露出が必要なのでどうしても露出が足りなくて赤の光が少なすぎる状態か、ISO感度を無理に上げてノイズっぽくなってしまうかということになってしまい、撮れた画像を処理にかけても、なかなかフィルタの効果のある画像が得られなかった。もっと高感度ノイズの少ないカメラならそれでもなんとかなったのかもしれないが。

ところが、ここにきて、架台はAVX赤道儀になってガイド撮影もできるようになって十分な長時間露光ができるようになり、カメラも赤外改造のものが用意できたところで、やっとこのフィルタの出番がやってきたということになる。実際、改造カメラを手にして撮った写真は、そのままだと確かに真っ赤に写るが、色バランスを整えてみると、期待し過ぎていたのかもしれないが、思ったほどには赤い天体がすごくよく写っているというわけでもなかった。そこで、このフィルタを使えば赤がよく写るようになっているのだから、効果がよく現れるのではないかということで、このフィルタに再登場いただくことになった。本来は改造カメラには赤外線のずっと波長の長い部分をカットするCLS-CCDタイプでないといけないのだろうが、ないよりはずっと効果があるはずである。

あまりに前置きが長くなったが、ここでとりあえず試し撮りで撮り比べた写真を。画像処理はせずに、1枚撮りでJPEGの撮って出しのまま。色別のヒストグラムを添付しておく。JPEG撮って出しなので撮影時のホワイトバランス(WB)設定がそのまま効いてくるので、WB設定も併記している。

まず1枚目は、赤外改造カメラそのままでフィルタなしの状態。2枚目がそのままCLSを装着しただけの場合で、WBもそのままなので、純粋にフィルタでカットされた分の色の光量が減った状態。全体にかなり暗くなる。非改造カメラよりは赤成分が多いとはいえ、WBで色バランスをとるようにしてあるため、フィルタをかけるとやはり赤成分が特に少なくなる。が、絵としてみると、背景は相当暗くなっているのに対して、星雲の部分も暗くなってはいるものの、ある程度明るさを保っており、全体としては暗くなっているものの、コントラストとしては確かによくなっているように見える。しかし、全体に暗くなっているせいで、星雲周辺の淡い色の部分はよくわからなくなってもいる。

3枚目はフィルタで狂ってしまっている色バランスをできるだけととのえるために、色温度10000Kの設定で撮影したもの。本来、マニュアルWBでフィルタ装着時に最適な設定にすればいいのだろうけれど、カメラのマニュアルWB設定は一通りしかないので、そちらを設定してしまうとフィルタなしのときの設定がなくなってしまうので、とりあえずこちらで。これでもまだ赤がだいぶ足りないが、前のものに比べると色の間の差がかなり少なくなっている。絵を見ると、背景の色もニュートラルに近くなり、星雲の本体がずいぶん赤く浮き上がるようになった。

しかし、やはりフィルタの減衰のせいで全体に光量が足りないので、4枚目はWB設定は同じままで露出を一段増やしたもの。画像処理の元画像に使うにはこのくらいの方がいいだろう。オリオン大星雲は明るいので、明るいほうが飽和気味になっているが、そこまで明るくない天体ならもう一段増やすくらいでもいいかもしれない。

フィルタなしフィルタなし
フィルタなし (改造機用マニュアルWB)

CLS マニュアルWBCLS マニュアルWB
CLSフィルタあり (改造機用マニュアルWB)

CLS 10000KCLS 10000K
CLSフィルタあり (色温度10000K)

CLS 10000K 露出多CLS 10000K 露出多
CLSフィルタあり (色温度10000K、露出1段増)

いずれも 2018/12/21 Canon EOS 60D(mod), Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), prime focus, ISO400, 120sec 4枚目のみISO800

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William Optics ヘリコイド付き 90° 正立天頂プリズム

昨年末に買ったものシリーズその5。William Optics社製のヘリコイド付き90° 正立天頂プリズム。

90°正立天頂プリズムはNexStar 5SEで以前から使っているが、EdgeHD 800を買って付いてきたのはやはりNexStar 5SEに付いてきたのと同じ通常の鏡像になる天頂プリズムなので、正立天頂プリズムを使うにはNexStar 5SEにセットにしてあるものを外して持ってこないといけない。かといってNexStar 5SEで使わないわけでもないので、それぞれで使うたびに取り替えないとけないのがわずらわしいと感じていた。それで、それぞれにセットしておけるように、もうひとつ正立天頂プリズムを買おうと思った。全く同じものを買うのも芸がないので、鏡筒もグレードアップしたのだから、正立天頂プリズムも1クラス上のものを買おうかと思った。選択肢は、笠井のDX版かこのWilliam Opticsのもののどちらかというところだった。William Opticsのものは以前はなんでわざわざ天頂プリズムにヘリコイドがついているのかと思っていたが、EdgeHD 800でピント合わせ時のミラーシフトに悩まされてからは、なんとこれを使えば別に合焦装置を買わなくてもミラーシフトに悩まされずにピント合わせができるではないか (天頂プリズムを使う眼視のときに限られるが) と思ってこちらを購入してみるることにした。

接眼レンズを取り付ける側にヘリコイドがついていて、その分だけ見た目がずいぶん太くなっている。全体がスリーブ部とあまり太さの変わらないアイピースを装着すると、見た目上少しアンバランスな感じがする。セレストロンの鏡筒に付属してきたアイピースは滑り止めのゴムの模様がこの天頂プリズムのヘリコイド部についているものと見た目全く同じで、デザイン的には揃ってはいるのだが。この太さにふさわしいのは、やはり首から先が太くなったタイプの接眼レンズだろう。

Plössl 25mm 装着時 X-Cel LX 7mm 装着時
Plössl 25mm 装着時 と X-Cel LX 7mm 装着時

ヘリコイド部は全部で約1⅔回転し、光路長は実測で15.2mm変化する。EdgeHD 800本体のピントノブの回転でのピント合わせに比べると非常にゆっくりした動きになり、動く範囲は狭いので、大まかには本体で合わせておき最後の微調整をヘリコイドで行うという操作形態になる。

Willam Optics ヘリコイド付き 90°正立プリズム Willam Optics ヘリコイド付き 90°正立プリズム
ヘリコイドを縮めたところと伸ばしたところ

実際に使ってみると、ミラーシフトから開放されると思ったが、接眼レンズ近くのヘリコイド部を手で持ってねじるという動作をしないといけないが、回転摩擦は結構重くて割と力を入れて回さないといけないので、そのせいで鏡筒を揺らしてしまってミラーシフトはしなくても、非常にスムースにピントが合わせられるかというと、そうでもない。ピントの動き自体は非常にゆっくりなので、ゆっくりすぎてどこがピントの山か、少しぐらい回しても変わらないんじゃないか、くらいの感じである。

見え味の方はというと、正立タイプ対通常タイプの比較の場合もそうだったように、普通に見ている分にはどうもそれほどよくわからない。しかし、よくわかる点はひとつある。1等星くらい以上の明るい星を見ると、プリズムの稜線に垂直な方向、つまり普通に見ている場合は左右方向に光条が出て見える。これが、これまで使っていた正立天頂プリズムに比べて激しい。これまで使っていたものでは視野の数分の一の長さくらいにしか出ないのに、こちらでは視野の端から端までに達するくらいに見える。光条が強く出るということは、値段の高い製品ゆえ、プリズムの稜線がよりシャープに加工されているからということになるのだろうか、よくわからない。しかし光条が見えるのは邪魔だ、といっても明るい星が視野にある場合だけだが。

眼視で見ている感じとはずいぶん違うが、天頂プリズムに、お気軽撮影ズームアイピースアダプタを付けて、PowerShot S120を使ったコリメート撮影で恒星像 (リゲル) を写したのを比較してみた。

β Ori
William Optics のヘリコイド付き正立天頂プリズム

β Ori
笠井の安価な方の正立天頂プリズム

β Ori
通常タイプの天頂プリズム

Canon PowerShot S120 7.48mm F3.5, ISO1600, 8sec, Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), Celestron 8-24mm Zoom Eyepiece (@24mm), Afocal Method

左右に伸びる鋭い光条以外にも、全ての天頂プリズムで6方向に幅の広い光条が出ているのもわかる。これは、プリズムの反射面が正方形や長方形ではなく、丸い光路にあわせて角を落とした六角形状になっているためだろう。光条以外の暗い星の像や背景はどうだろう? やはりあまり大きな違いはないように見える。ヘリコイドが必要なければ、光条のことを考えると、笠井の安いものの方で十分だった気がする。ちなみに、笠井で買ったから笠井のと言っているが、他から出ている同クラスのものはだいたい外見がそっくりでこれと同じもののように思われる。

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2019年1月部分日食

昨年末に買ったものシリーズはちょっとお休みして、(日付変わって) 昨日、2019年1月6日の部分日食。日食の撮影は、2002年の金環食(サイパン)、2008年の皆既食(シルクロード)、2009年の皆既食(上海)、2012年の金環食(自宅)で、実は単なる部分食を撮ったことがなかった気がする。

事前のGPVの予報では日食前半は比較的雲が少なく、後半に雲が増えてくるような予報だった。日食経過の連続写真を撮るために、その背景用にまだその画面内に太陽がいない間の空と地上の写真をフィルタなしで撮っておくために、開始1時間前に現地に行って準備をはじめたが、その時点で太陽の見える南東の空は雲が多く、北の空はかなり晴れているのにと恨めしい感じでのスタートとなった。

北の空 南東の空
北の空と南東の空

今回の機材はこちら。

日食撮影機材

向こうから、

  • 連続写真撮影用 EOS 60D + カメラレンズ + ND400フィルタ×2
  • 拡大写真撮影用 EOS 60D改 + NexStar 5SE + アストロソーラーフィルタ
  • 眼視用 コルキットスピカ + アストロソーラーフィルタ

のラインナップ。これまでだと連続撮影はコンデジのS120の出番だったが、今回は一眼レフが1台増えたので、この布陣となった。連続撮影にはバッテリの心配がないように先日購入したバッテリグリップを使おうかとも考えたが、縦位置で撮ろうと思ったので、ちょっとバランス悪くなるのでカメラ単体で。長時間露光の連続撮影と違って、1分間隔で撮影するとしても、撮影と撮影の間はカメラはフリーになっているので、その間に三脚に固定したままバッテリを取り替えれば大丈夫だ。NexStarで眼視もしたいところだが、さすがにカメラとアイピースをつけたり外したりは大変なので、カメラ優先。まあ、カメラのモニタで画像が見えるので、実は一番見やすいのがこちらだっかもしれない。コルキットは自分だけでなく、通りがかりの方々にも見ていただく用。今回は公園の一角で行ったので、ジョギングなどしている人たちなどにたくさん立ち寄っていただいた。

結果はというと、前半は時々雲の薄くなったところから太陽が見える感じ。ちょっと見えたと思ったらまた見えなくなっているという状態が繰り返していた。ありがたいことに、中盤になって、最大食分が近づいた頃に、太陽の高度も上がってきて上方には雲が少ない状態で、比較的よく見える状況が続いた。その後、また雲が増えてきて、やがて上の方まで厚い雲でいっぱいになり、もう回復の見込みがなさそうなので、食の終了を待たずに撤収した。

結局、途切れ途切れにしか見えていないので、連続写真はとても見られたものではないので割愛。以下は、拡大撮影の、食が半分くらい進んだところで雲がかかっている様子と、最大食分付近 (こちらもまだ薄く雲がかかっている)。

食分0.22
部分日食 (食分0.22) 2019/01/06 09:12 Canon EOS 60D(mod), Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10) prime focus, ISO400, 1/500sec, Astro Solar Filter, Trimming

食分0.42
部分日食 (食分0.42) 2019/01/06 10:05 Canon EOS 60D(mod), Celestron NexStar 5SE (D125mm f1250mm F10) prime focus, ISO400, 1/1000sec, Astro Solar Filter, Trimming

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国際光器正立ファインダーEF-508

昨年末に買ったものシリーズその4。正立ファインダー 国際光器EF-508

EF-508

EdgeHD 800を買ってから、換装したいと思っていたのがファインダー。同じセレストロンの8インチシュミカセでも、C8では6×30のファインダーがついているのに比べたら、9×50と大きなものが付いているのはいいのだが、通常の倒立像タイプのものなのが少し不満。天頂プリズムも正立派の私としては、(鏡像なわけではないが) ファインダーも正立タイプの方がうれしい。倍率も9倍とちょっと高めで、そのため実視野角は5.8°と少し狭めなのもうれしくない。

口径50mmの正立ファインダーは、結構出ているが、正立天頂プリズムを使って正立像にしているものが多い。しかし、主鏡のシュミカセには正立天頂プリズムをつけっぱなしで見るのだから、ファインダーも90°曲がっていればいいかというと、そうでもない。90°曲がったファインダーを実際に常用したことがないのでなんとも言えないが、ファインダーはまず実際に肉眼で見える星を狙うためのものだから、実際と同じ方向に見えた方がいいのには違いない。私の使っているビデオカメラのHV-10はビューファインダーがなぜか15°くらい斜めに取り付けられられていて、これは長いこと使っているがどうしても違和感があるままだ。よくある45°の正立プリズムのついたフィールドスコープなどを覗く人はどんな感じに思っているのだろうか。望遠鏡の主鏡で90°の天頂プリズムを使うのは、ファィンダーで視野に導入した後なので、特に問題にはならない。

AVXの架台では、電動オンリーのNexStar SE架台と違ってクランプフリーにすると自由に手で動かせるので、ISSを拡大撮影する際に、ファィンダーを覗きながら手動で追尾して撮影するのにも、真っ直ぐに目標を見られる正立ファインダーは威力を発揮すると思う。

さて、そんなわけだが、ストレートタイプ (なんていい方があるのかわからないが) で口径50mmクラスの正立ファインダーとなると、あまり見当たらなくて、このEF-508かその同等品が唯一の選択肢と思える。唯一の選択肢というと、何か嫌々選んでいるように聞こえるが、全くそんなことはなくて、これはとてもよさそうという意味でこれしかないと思える製品である。倍率8倍で、実視野は7°と標準的な双眼鏡の広さ。暗視野照明のレチクルは、十字の中央が円形になっていて目標の星を中央に入れてもレチクルに重なってわからなくならない。(写真はオリオン座の三ツ星。手持ちなのでブレているのはご容赦)

暗視野照明レチクル

購入しようと思ったときには、国際光器のwebサイトでは品切れになっていて、この冬に再入荷する際には値上げになると書かれていた。これにセットで使用するオリジナルファインダークランプ (OFC) についても先の記事で触れた通り。ファインダー本体 (+ブラケット) については、スターベース東京さんの店頭に在庫があって、在庫分は元の値段だということで、そちらで購入した。

ということで、EdgeHDに元からついてきたものを含めて、口径50mmの鏡筒が3本になってしまった。

実際に望遠鏡に取り付けてみると、シュミカセに取り付けるにはブラケットの脚がこんなに長くなくてもいいのにというのが感想。もちろん汎用にできているので、屈折望遠鏡などの場合には接眼部近くの、対物側より細くなった部分に取り付けるし、ファィンダーより手前にドローチューブもあるので覗くのに邪魔ということもあって、ある程度脚の長さが必要だが、シュミカセの場合は接眼部まで鏡筒が太いので、鏡筒の先は邪魔にならないし、接眼部ともそれなりに離れているので、鏡筒のすぐ近くに添わせる感じで取り付けられればよくて、脚が長いのはむしろ邪魔に思える。実際、標準でついてくるファィンダーブラケットは低くなっている。ガイド鏡についてきたブラケットは同じビクセンファインダー座に取り付けるタイプながら脚が伸びていないので、そういうのであればよかった。ただし、ガイド鏡のブラケットには6本の向きの調整用のネジにはロックリングがついていないのだが、こちらのファィンダー用のブラケットにはちゃんとついている。また、このファィンダー用のブラケットには、これよりも更に足の長いバージョンがあるようだが、むしろ逆に脚の短いバージョンがあればよかった。

脚の裏の引っかかり

ブラケットの脚は、後ろ端に引っかかりが付いていてすっぽ抜けないようになっている(?)が、望遠鏡は上を向けるものだから、逆に前の方に引っかかりがついていればいいのにと思ったが、ビクセンの望遠鏡の本体に一体化しているファィンダー取付部を見ると、屈折鏡筒ではちょうど鏡筒が細くなる部分にあるために、後ろから前に向かって挿入して、前は行き止まりになっていたりするので、前側に引っかかりをつけるわけにはいかない。前が行き止まりなら後ろに引っかかりもいらないじゃないかと思うが、反射鏡筒では、ここで使っているOFC同様、前後筒抜けになっているので、逆に引っかかりがないとどの位置で固定していいかわからなくなる。両方に対応できるように後ろ側に引っかかりを設けているのではないかと推測される。

レチクルの暗視野照明は電源にLR41のボタン電池2個を使い、単純なスイッチ付きのボリュームで電源ON/OFFと明るさ調節をする。NexStarについていたドットファインダーの場合と同じく、スイッチの切り忘れで電池を消耗し切ってしまうことが多発しそうな予感がするので、まとめ売りの電池を買っておいた。

あと、ちょっと気になるのが、見口がゴムとかプラスチックとかではなくて、金属製で、周囲が少し鋭角にせり上がった形状になっているので、メガネをぶつけると傷がついてしまうのではないかなということ。何か対策をしたいところだが、あまりいい方法が思い浮かばない。

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天体改造Canon EOS 60D

昨年末に買ったものシリーズその3。天体改造カメラ。

赤い色をした星雲などの天体に特有のHα線の波長の光を、通常のデジカメでは色が不自然にならないように可視光から外れた赤外線をカットするフィルタがついているが、それによってこのHαの波長も遮られてしまってよく写らなくなるのを、そのフィルタを外して赤い色の天体がよく写るように改造するというもの。その代わり普通の写真を撮るには色バランスがうまくとれないこともある。

他にも色々買い物を物色している際に、オークションで中古品が安く出ているのをみつけて、前の記事のガイド鏡で長時間露光で淡い天体も狙うにあたって、更にそういう天体がよく撮れるカメラがあった方がうれしいというか、これがなければ始まらないといってもいいかもしれないので購入した。これまでは、そもそもそういう天体を狙わなかったので手を出していなかったのだ。

カメラは改造済みの新品も売られているし、自分のカメラを渡して改造してもらってもいいが、ここでは改造済の中古品での購入。カメラの機種も色々出ていたが、ちょうど自分が現在使っているEOS 60Dの改造機が出ていたのも購入の契機。使い勝手が全く同じ方が面倒がないし、バッテリが使い回しできたりするのも便利だ。入門機に比べて元のカメラの値段は高いが、既に発売からずいぶん経っている機種なので、少し新しい目の入門機の改造機よりも安くかった。今さらこんな古い機種よりも新しい性能の上がった機種の方がいいのかもしれないが、改造費用くらいの値段で出ていて、他に入札者もなく初期価格のままで購入できたので、まあ練習用くらいに考えても十分だろう。

改造60Dとノーマル60D

全く同じ機種で、改造済シールのようなのが貼付してあるわけでもないので、底面のシリアルナンバー以外本当に外観では区別がつかない (左が改造機、右がノーマル機)。

今回、改造機を購入するまでは、天体改造についてそれほど詳しかったわけではなく、改造業者によってや同じ改造業者でも改造のやり方に何通りかある。今回購入したのは、そういう違いを比較検討したわけではなく出てたいものを買っただけなわけだが、スターショップ(旧誠報社)の「新改造」というものとのこと。スターショップはもうなくなってしまっている。今さらネットで調べてみると、表向きに謳われている改造内容と実際の改造内容が違うといった記事もみかけるが、まあ、とりあえず細かいことは気にせずに、Hαがよく写ればいいということにしよう。

中古なこともあり、改造業者からの説明書のようなものは特についていない。色バランスについては、とりあえずホワイトバランスのマニュアル設定の項目に、改造後のホワイトバランスが適切になるような設定をしてある模様。間違ってこの設定を上書きしてしまったら元に戻せないので自分でうまく設定しなおさないといけないのか。

で、とりあえず撮影画像の比較。実際の天体写真撮影ではRAWで多数枚撮ってスタックして画像調整をするわけだが、調整してしまうと違いがよくわからないので、一定のホワイトバランス設定でJPEGで記録した画像を見てみる。

ノーマル60D (太陽光)
ノーマル60D (太陽光)

改造60D (太陽光)
改造60D (太陽光)

改造60D (マニュアル)
改造60D (マニュアル(プリセット))

いずれも1枚撮りで、Celestron EdgeHD 800 (D203mm f2,032mm F10), 0.7x Recucer Lens, prime focus, ISO3200, 4sec

とまあこんな感じ。まあ、ちゃんと改造機なのは間違いない。

さて、買ったものシリーズなので、ついでに他にこれに関連して買ったもの。

60Dの液晶保護フィルム

買った改造機に貼るのとあわせて、元から使っていたものの上面液晶のフィルムがシワになっていたのと、モニタ画面のフィルムの端のほうが少し傷んでいたので貼り直しのため、2セット購入。結構古い機種なのに売っているのが見つかってよかった。

タイマーリモートコントローラTC-2001

カメラが2台になったので、同時に使うこともあるだろうから、追加購入。1台だけで使うときにも予備になるので。最初に買ったものと基本同じだが、一度具合が悪くなって修理した後、更にどうしようもなくなって買い直しているので、これで3個目。最初のにはなかったROWA・JAPANのロゴが2個目には描かれていたのが大きな違いだったが、今回は同様にロゴが描かれているものの少しだけ字体が違うので区別はつく。それ以外は全く同一のように見える。左が前回のもの、右が今回のもの。

TC-2001TC-2001

バッテリーグリップBG-E9

オークションを見ていると、これも今さら古い機種のオプション品を買う人もいないのか、びっくりするくらい安くメーカー純正品の60D用のバッテリーグリップが出ていたのを購入。他に入札はなく初期価格のままで購入できた。超長時間の連続撮影に役立つかと。縦位置グリップとして使う機会はあるかどうかわからないが、意味なく取り付けても、少し上級機のようにも見える (笑)。

BG-E9

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