NexStarを赤道儀モードで使ってみる

昨夜は室内でPCからの制御を試した後、また数日ぶりに夜に空が晴れていたので、望遠鏡をベランダに持ち出して、今回は、赤道儀モードでの使用の練習をしてみた。

NexStar 5SEの三脚には架台の取り付け部を傾けることのできるウェッジと呼ばれる機構がついていて、これを使って本来経緯台式の架台を簡易的ながら赤道儀として用いることができる。コントローラのアライメントのメニューにも、赤道儀モードで設置した場合に対応したモードが用意されていて、北半球では EQ North Align を選ぶと、その下に経緯台用のときと同じく、どれだけの天体を使ってアラインするかのモードの選択が並んでいる。違いは、Sky Alignの代わりにEQ AutoAlignとなっていて、少し手順が違う。

設置

まずは設置だが、あくまでも簡易赤道儀なので、本式の赤道儀のように極軸を極軸望遠鏡で北極星をのぞいて合わせるといった必要はない、というかそういうふうに厳密に合わせる方法がない。逆にこれはベランダ天文家にとってはありがたく、我が家でもベランダ側から観測するときは、ベランダが南向きなので、そもそも北極星が見えない。

ではどうやって向きを合わせるかというと、まず方角は、ウェッジの金具がついているのと反対側の三脚の足ができるだけ正確に北を向くように三脚を置くという以外ない。何もないところであれば、方位磁石をもとに (偏角を考慮に入れて) 設置するしかないが、鉄骨や色々なものがまわりにある建物では方位磁石はあまり信用できない。きっちり東西南北に合わせて建物が建っていれば簡単だが、うちの近所は全体に鉄道と道路が東西方向からかなり振れた角度で走っているものの、一帯の道路はきれいな格子状になっており、建物もそれに合わせた向きに建っている。地図から道路の角度を求めて、それを基準に建物に対して何度の方向が北かを割り出して、その角度に従ってバルコニーに床面に三角比から寸法を勘定して三脚を置いた。まあおおむね誤差は1~2°度程度で合わせられているのではないかと思う。

仰角はその地の緯度に合わせるわけだが、ウェッジの金具に一応簡単な目盛が振ってあり、それを目安に合わせるしかない。まずは、三脚そのものを水平になるように調節してから、ウェッジを傾ける。ウェッジの金具は三脚の台の部分を貫通していて、目盛は上側で読めばいいのか下側で読めばいいのか一見まごつくが、目盛が上の端からひとつ目の筋の上に85、次の筋に80と数字が書かれているので、それより上に数字を書くことのできない金具の一番上の端の部分が90ということで、ウェッジの金具を完全に閉じたときにその部分の接する、三脚の台の上面のところが目盛を読むべき位置とわかる。といっても、そんなに正確に合わせられるわけでもなく、なんとなく目分量だ。やはり誤差は1~2°くらいか。

ウェッジを正しく緯度に合わせると、かなり傾いた感じになり、重心が三脚の中心からかなりはずれた状態になって、安定が悪くなるのではないかと心配したが、傾ける方向がちょうど三脚の足のある方向になっていること、三脚自体が結構な重さがあることもあって、案外しっかりしていて、今回は三脚の足を一番縮めた状態であったが、それでもそれほど簡単に倒れてしまったりはしなさそうである。ただし、写真撮影のためにカメラを取り付けたりすると更に重さが増してバランスが悪くなるので、そういう場合はやはり気をつけるに越したことはないだろう。

アライン

設置ができたらアラインを行う。先に少し触れたが、星を3つ使ってアラインする方法は、経緯台の場合は、何の星かわからなくても見える星3つを選んで設定すれば自動的に判別してアラインの行われるSky Alignというものなのに対して、赤道儀モードのときのEQ AutoAlignでは少し手順が違う。まず最初に仰角を架台のマークのついた位置に合わせ (赤緯0°を向く)、次に回転方向を子午線を指す方向に向けるという指示が順に出る。子午線に向けるというのは、どうやったらいいのか、ちょっと難しい気がするが。その後、目標にする星の候補が示されて、順次3つの星の位置を設定する手順になる。これ以外の、EQ Two-Star Align、EQ One-Star Align そして EQ Solar System Align は、経緯台の場合と同じで、最初に鏡筒の向きを合わせたりする必要はない。ちなみに、日本語のマニュアルには、経緯台式の説明の最初に、EQ AutoAlignの最初と似たような、鏡筒を水平にして北に向ける、という記述があるが、英語マニュアルにはそんな記述はなく、実際はそんなことをする必要はなくて、架台の水平さえ出ていれば、適当な方向から初めても構わない。どうも、古いNexStarの時代の方法の名残りらしい。

今回はEQ Two-Star Alignでアラインしてみた。ベランダから見えていたリゲルとシリウスで設定。ここでちょっとトラブルがあったが、それはまた記事を改めて。トラブル解消の後、アラインをやりなおしてみると、その後他の星を指定して向けてみると、正しくその星が導入された。これでセッティングの方法や使い方は間違っていないようだ。北極星を導入すると、建物で見えないが、ちゃんと鏡筒はほぼ天の北極の方向になった。

赤道儀モードの利点

架台を赤道儀モードにして使用することのメリットは何か。通常の経緯台と赤道儀の違いは、経緯台では日周運動の追尾が難しいのに対して、赤道儀では極軸まわりの回転だけで日周運動の追尾ができることだが、コンピュータ制御の自動導入経緯台では、単純な追尾については問題なく行える。問題は画像の回転で、「天体写真の向きが気になる」の記事で書いたように、経緯台で追尾しても、天体は見える場所によって回転して見える。単に斜めに見えるだけならそれでもいいが、長時間露光の写真を撮ろうとすると、時間の経過とともに回転していってしまうので、同じ星が一定位置にとどまらなくなるので都合が悪い。それが、赤道儀にすると解消される。

しかし、NexStarの赤道儀モードは、あくまでも簡易的な赤道儀で、設置の精度があまり高くないので、追尾の精度もそれほど高くないと思われる。とはいえ、設置の精度は非常にいい加減なので、日周運動を極軸まわりの回転だけで追尾すると、設置のズレがそのまま出てしまうが、さすがにアライメントによってズレも検出して、それを補正しつつ追尾するのだろうとは思う。それでも、精度が悪いのは悪いだろうが、経緯台で画像の回転が表面化しない程度の露光時間よりは、ずっと長い時間の露光に耐えるだけのことはあるだろう。設置のズレに対する補正に関しては、実際にどのくらいの設置ズレまで大丈夫なのだろうか。一度、わざと5°とか10°とかズラして設置してみてどうなるか試してみたい気がする。

長時間露光の際の画像回転回避以外に、もうひとつ私の思うメリットは、カメラ取り付けの際に架台にぶつからないことかと思う。惑星や月を短時間露光で撮影するような場合には画像回転の問題は気にならないが、対象が天頂近くにあるときは、天頂プリズムを使わないでカメラを取り付けたとすると、カメラが架台の台座の部分にぶつかってしまって、向けられなくなりそうだ。そんな場合に赤道儀モードで設置すると、カメラが架台にぶつからない角度で狙うことができる。逆に、天の北極近くの天体は、赤道儀モードでカメラを付けた状態では狙えないことになるが、その範囲は経緯台モードでなら大丈夫だ。両方の方式をうまく補い合って使えばうまくいきそうだ。ということは、しかし、天の北極近くの長時間露光撮影はできないということだ。

  1. #1 投稿者: nabePla (2018年8月24日 - 22:53)

    初めまして、nabePlaと申します。
    ブログを時々拝見させていただております。

    最近、私はNexStar 8SEを購入しまして使い方で試行錯誤をしております。
    ところで、ALL-Star Polar Alignment(オールスターポーラーアライメント)機能を
    ご存知ではないでしょうか?
    これはCelestron NexStarでのみの機能で、極座標を得るための北極星を使わない
    方法らしいです。

    • #2 投稿者: Erlang (2018年8月24日 - 23:11)

      nabePlaさん、コメントありがとうございます。
      All-Star Polar Alignmentとは、(北極星でなく)どんな星を使ってでも赤道儀の極軸を合わせることができる機能です。おおまかにしか極軸を合わせていない状態で通常のアライメントを行い、その後でこの機能を使って、まずひとつの星を導入した後に、極軸が正しく設置されていれば本来望遠鏡が向くはず、の向きに望遠鏡が動きます。それでズレた分を、架台の向きを調整して視野中央に元の星が戻るようにすると、それで極軸が正しい方向を向いたことになる。という機能です。
      以上のように、これは赤道儀のための機能ですが、お使いのNexStar 8SEは経緯台式で、5SEや4SEの様に架台を傾けて簡易的に赤道儀にする機構も備えていませんので、All-Star Polar Alignmentの機能はお使いになれませんし、使う必要もないと思います。

  2. #3 投稿者: nabePla (2018年8月25日 - 10:25)

    こんにちはErlangさん、早速の返信ありがとうございました。

    失礼しました、NexStar 8SEにCelestron Wedgeを装備済みです。
    ALL-Star Polar Alignmentについて、実行手順の詳しいガイドの
    ようなものを探しております。

    • #4 投稿者: Erlang (2018年8月26日 - 02:24)

      おや、Wedgeもお持ちなんですね。何もご存知なくてのご質問かと思いました。
      NexStar SEシリーズのAll-Star Polar Alignmentは基本的にはAdvanced-VX赤道儀の同機能と同じと思います。ただし、最初のアライメントが、North EQ Alignmentの下に出てくる選択肢のうち、EQ AutoAlignの場合のみ有効なようで、他の選択肢を選んだ場合は、極軸のズレ情報がいつもゼロの状態になっているようなので、実質何も変わらないということになるように思います。
      最初にEQ AutoAlignを選ぶとまず架台のインデックスを合わせるよう指示されますので、合わせます。AVX赤道儀では赤経赤緯ともにインデックスがあるので、両方合わせればいいのですが、NexStar SE架台には水平方向にはインデックスはありませんので、代わりに、次に子午線に向けるように指示されます。そこで左右の矢印だけ操作して、鏡筒が天の赤道上の真南の位置を向くように動かします。その後は、基準星候補が出てくるので、選ぶと自動的にだいたいその星の方に向くので、基準星に合わせます。他の星に変更してから合わせることもできます。これを2回繰り返すと、アライメントが完了します。
      ここからがAll-Star Polar Alignmentですが、まず事前に地平線や天の北極にあまり近くない星を選んで導入しておきます。最初にアライメント後何もしていなければ、最後の基準星に導入されていることになります。
      そこでALIGNボタンを押して、メニューからPolar Alignを選んでAlign Mountを選ぶと、その最後に自動導入した星を今一度導入しなおします。Synced to: xxx と出た後に次に進むための確認にENTERを押します。すると、もう一度鏡筒が動きますが、今度は「もし極軸が正しく設置されていたら鏡筒が向いているはず」の向きに動きますので、実際に見えている星の位置が視野中央に来るように、ウェッジの微動ツマミを動かして調節すると、極軸が合った状態になるはずです。ここでコントローラ操作でモーターを動かしてはいけません。
      星が視野中央に来たらENTERを押すと、これで極軸調整が完了です。
      私のコントローラのファームウェアは英語モードなので、もし日本語表示でお使いでしたら、LCDの表示内容は日本語では何と表記されているのかはわかりませんがまあそれらしいのを選んでください。

  3. #5 投稿者: nabePla (2018年8月25日 - 10:52)

    <追信>

    私の観測環境は、南向きに限定されています。
    数か月前から”Celestron StarSense Autoalign”(専用のHC)で悪戦苦闘していましたが
    指向精度が改善する見込みがないため、残念ですがこれを使うのを断念
    しました。それで通常のHCに切り替えてやっています。

  4. #6 投稿者: nabePla (2018年8月26日 - 12:22)

    Erlangさん、大変ご丁寧な説明をありがとうございます。
    次の好天日に、実際に手順を確認したいと思います。
    何分昨年から天体観測を始めたシニア世代の初心者です。
    また何かとお尋ねすることがあるかと思いますので
    その時は宜しくお願い致します。
    では失礼します。

  5. #7 投稿者: nabePla (2018年8月26日 - 19:24)

    Erlangさん、今晩は
    その後、当地(北陸地方)の天候は当分の間、好天が望めないので
    海外の情報を調べて見ました。
    そうしましたら早速或る方から、情報提供をしてくれました。

    クリックしてNexStarHandControlVersion4UsersGuide.pdfにアクセス

    の11ページ All-Star Polar Alignmentの項を翻訳したのが次の内容です。
    (筆者から後で補足説明を受けた部分有り)

    All-Star Polar AlignmentはWedge Alignに似ていますが、それは置き換えられますが、いくつかの違いがあります。 All-Star Polar Alignmentでは、ウェッジアラインメントがPolarisまたはSigma Octanisに限定されている間に、スターの使用が許可されています。 また、All-Star Polar Alignmentを使用した後は、電源をオフにする必要はなく、Wedge Alignで必要な別のEQアライメントを行う必要もありません。
    手順
    •EQアライメント(EQノース・ツー・スター・アライメント)を完了します。

    •名前付き星の星に移動する(LISTボタン)。

    •ALIGNを押し、上下のボタン(キーパッドの6と9)を使ってPolar Alignまでスクロールし、ENTERを押します。
    上下のボタン(キーパッドの6と9)を使用して、「Align Mount」までスクロールし、ENTERを押します。
    •この時点で、マウントはあなたが選択したスターに再び移動します。ファインダー内の星を中心にして、Enterキーを押します。

    •アライメント時に使用したのと同じ矢印ボタンを使用して、アイポイントに星の中心を合わせ、ALIGNキーを押します。星は現在同期しています。

    •ディスプレイの指示に従って、ENTERキーを押して、手順の最終ステップを開始します。マウントは、正しい極アライメントに対応する向きに若干回転します。

    •ハンドコントロールの矢印ボタンではなく、ウェッジ調整のみを使用して、星をレチクルまたは高倍率アイピースの中心に合わせます。終了したらENTERを押します。

    •UNDOを1回押してから、上下のボタン(キーパッドの6と9)を使用して同期を元に戻し、ENTERを押します。メニューシステムから脱出した場合、ALIGNボタンメニューでUndo Sync(同期を元に戻す)を見つけることができます。(Undo Syncは、スコープの使用を続ける前に必要な、MENU上の機能です。 前項の手順を完了するとウェッジが揃えられますが、元に戻すときはGoToが正確になりません。)

    •名前付き星を選択し、その星にGoToを押してGoToの精度を確認します。必要に応じて、本書の後半で説明するAlignment Stars機能を使用してaccurac(正確さ)を改善してください。

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