見えない天体にカメラを向ける

先日、肉眼で見えない天体の双眼鏡での探し方を記事に書いたが、カメラで撮影する場合はどうだろう。広角の場合は周囲の明るい星と一緒にフレーミングするのであまり問題ないが、望遠でラブジョイ彗星を撮りたいと思ったら、闇雲にカメラを向けようとしても簡単には対象をとらえられない。

天体望遠鏡にカメラをセットして撮影する場合は、望遠鏡のファインダーを使ったり、自動導入ができたりといった、望遠鏡で天体を導入するための方法が使えるが、ここではカメラ単体で、ポータブル赤道儀に載せたりして撮影する場合の話である。

例えばキヤノンの入門用一眼レフのダブルズームキットについている望遠ズームレンズの望遠端、250mmで撮る場合で考えてみる。35mm換算だと約400mmの望遠だ。実はこの場合の画角は、一般的双眼鏡の視野より少し狭い程度なので、天体を探すのも双眼鏡の場合と似たような方法が使えるわけだが、カメラの場合と双眼鏡での眼視の場合とで違う点もある。

まず、双眼鏡はその集光力によって暗い星まで見えていて、最終的に見たい状態も天体を探している状態も同じだけの暗さの天体まで見えている。一方、カメラの場合は長秒露光によって暗い星まで写すので、撮ってみないと最終状態は見えない。レンズ自体は双眼鏡と同じくらいの口径があって光は集めているが、ファインダーで見た場合は双眼鏡で直接見るのと違って、ファインダースクリーンに投影された像を見るのであまり暗い星まではよく見えない。ライブビューの場合も、撮影時と違って常に画面の変化を反映するために短時間の露出を繰り返して表示しているので、やはりあまり暗い星は見えない。

双眼鏡でなら、簡単に見つかる明るい星から目標の星まで、星の並びをたどって視野を移動していくのと同じことをカメラでやろうとしても、経路上にカメラで見える明るさの星がないと、双眼鏡の場合のようにいかない。

生でたどれないとなると、試し撮りをして写っている星を確認することになる。試し撮りをして写っている画像を見ては少しカメラの向きを手探りで動かしてはまた試し撮りしてまた確認するといったことを繰り返して、星の並びをたどって目標の天体を探す。試し撮りでは、暗い星が写ればいいだけで、画像の美しさは問わないので、本番のように長秒露光していると時間がかかってまどろっこしてから、画像が荒くなるのは構わずISO感度を最大にしてできるだけシャッター速度は短く済ませる。そうやって、目標をとらえてから正しい位置に持ってきて、本番の設定にして撮影である。

ズームレンズなのだから、ズームを広角側にすれば対象がもっとみつけやすくて、そこで画面中心にもってきてズームすればいいのではないかとも思われるが、ズームレンズは画角を変えるとピント位置がズレてしまう。目標をとらえてからズームアップしたところでピントを合わせなおそうとしても、明るい星が画面内にないと、ピントを合わせることができないので、この方法はうまくいかない。ピントは最終的に撮るズーム状態にして、星をたどっていく前に、明るい星で合わせておかないといけないのである。

ところが、この問題を逃げる方法を2つ、最近知った。まずは、先日、ラブジョイ彗星の撮影に同行させてもらった知人がやっていた方法。ズームを引いた状態で天体をとらえて画面真ん中にもってきた後、カメラをクイックシューで雲台から取り外し、別の同じクイックシューベースのついた三脚に載せて、ズームを望遠端にしてから明るい星を狙ってピント合わせをする。そこでズームとピントを固定して元の三脚にカメラを載せ直すと、目標の天体に望遠端でピントの合った状態になる。カメラの付け外しの際に動かさないように注意が必要だが、まあそおっとやれば大丈夫だろう。ただしこの方法は三脚が余分に必要になる。

もうひとつは、微動雲台TK-ALZM2のテレスコ工作工房さんのblogで 「ラブジョイ彗星の見つけ方、撮り方」という記事に書かれていたもの。詳しくはリンク先の記事を読んでもらえばいいが、簡単に言うと、先の方法のようにカメラを三脚で載せ替えるのではなく、レンズを広角のものに取り替えて狙いをつける方法。前もって望遠レンズは明るい星を狙ってピントを合わせておいた後に一旦外して、広角レンズで対象を画面中央に持ってきて、望遠レンズに戻して撮影するというもの。こちらは三脚ではなくレンズが必要だが、望遠で撮影中は広角のレンズは余っているだけだろうから、三脚をひとつ余分に用意するよりはいいかもしれない。こちらもレンズの交換の際に動かしてしまわないように注意が必要だ。

私は同じクイックシューを2組は持っていないので、もしうまく導入できないときには後者の方法を試してみようか。

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