Advanced VX 赤道儀諸々

このところほとんど惑星の撮影ばかりで、Advanced VX (AVX) 赤道儀もほぼそれに使っていだけなので、まだあまり赤道儀としての細かいところは使い込んでいない感じではあるが、これまでのところで使っていて諸々気付いた点などを少し書いてみる。

設置

経緯台のNexStarの場合は三脚は水平をとればどのように置いても構わなかったので、ベランダに設置する場合は水はけ用の傾きがあるので、だいたい2本の足を高い側に窓に平行に置き、1本の足だけを外側に向けて、少しだけ伸ばして高さを調節するという置き方をしていた。

赤道儀では極軸を北に向けないといけないのでそうはいかない。ベランダは南向きなので、極軸望遠鏡は使えない。建物は真北に対して30°余り振れているので、ちょうど上記とは90°回転させた状態、2本の足を窓側と外側を結ぶ直線上に並べて、残り1本を横向きに出るように設置し、「余り」の分の角度を床面の模様の数を目安に少し調節する。足の長さは、窓よりのものを除いてそれぞれに調節する。一度水平を確認すれば、以後はだいたいその長さを見当をつけて伸ばすぐらいでよい。そのぐらいの目安でだいたい極軸の方向はおおまかには合う。

惑星の撮影の場合は追尾中ビクリとも外れてはいけないわけではなく、画面におさまっている範囲で揺れていてもスタッキング時に位置合わせをするため構わないので、追尾が多少ズレても、眺めながらちょこちょこと合わせ直していれば十分である。なので、アライメントもだいたい惑星アライメントで合わせただけで済ませる。ポーラーアライメントをするには事前にTwo-Starアライメントをしないと正確に合わせられないと思うが、ベランダからではなかなかうまく2つの基準星をとらえることができない。

NexStarよりも三脚の開きが大きく、さらに縦方向に広げるわけで、外側の足は外側の壁ぎりぎりということで、排水溝の中に置いていた。三脚の足の先端は、NexStarではゴムがかぶさっていたので、AVXも同じだろうとあまり気にしないでいたが、明るいときによく見ると、排水溝の防水膜がちょっと傷んでいるようだった。NexStarでも場合によって排水溝の中に足の先を置くことはあったがそんなことはなかったのでよく見ると、AVXの三脚の先端は尖っているわけではないが硬い金属製のままであった。排水溝に直接三脚の足を置かないように気をつけないといけない。ベランダの床面の部分の防水シートはしっかりしていて、そのくらいでは傷ついていなくて大丈夫だ。

アライメント

アライメントのやり方は経緯台のNexStarの場合と同じようなものか思っていたが、実は結構違う。経緯台では、設置した状態で方位がどちらを向いているかは全くわからないので、そもそも全くわからない状態から始める。最初の基準星はまずは自力で直接合わせる。一方赤道儀では、正確に合っていないにしろ、北の方角は正しく向けて設置していて、極軸の高度もほぼその地の緯度に合わせて向けてあるはずという前提がある。赤道儀の回転部にも向きがあるので、インデックスの印がついていてそれを最初に合わせておけば、アライメントをせずともおおまかには座標軸は合っているはずで、アライメントの作業はそれを正確に追い込んでいく作業でしかない。なので、インデックスを合わせてからアライメントの基準星をコントローラのメニューから選ぶと、まずはマウントが自動的にだいたいその星のある方向に向いてくれる。そこから正確に基準星に合わせるだけだ。そこがNexStarとの大きな違い。実は、NexStarで自動導入だというと、望遠鏡の経験者からは、自動導入って最初に鏡筒の向きを合わせて云々でしょ、とか言われることがよくあったのだが、なるほどこのことかと今さら納得した。

そして、NexStarにはお手軽かつ正確な、SkyAlignというモードで、星の名前はわからずとも2等星以上程度の星を3つ選んでアライメントすると、自動的にどの星かを認識してアライメントしてくれるというものがあったのだが、AVXにはそのモードがない。もともと極軸がだいたい合っているならTwo-Starで十分で、必要なら基準星を追加して精度を上げるという考え方だろうか。しかし面倒なのは、これから入れる基準星をいちいちメニューから選ばないといけない点。基準星候補は全部固有名で出てくるが、1等星ならともかく、2等星の固有名はなかなか聞き慣れないものが多く、どこにある星なのかわからない。しかも、これはNexStarの場合も同じだが、基準星候補には惑星は含まれない。これも基準星選びに困る理由のひとつだ。NexStarのSkyAlignの場合には3つの星に惑星が含まれても構わないというのに。しかも、今そこに見えている1等星の名前さえも候補リストに出てこなかったり、どういうわけかよくわからない。視界の狭いベランダやマンションの非常階段からでは、これがとても困る。

極軸合わせ

極軸合わせはまあまだあまりそれほど真剣にやっていない。

AVXにはポーラーアライメントという機能があって、北極星が見えなくても極軸が正確に合わせられるという。基準星でTwo-Starアライメントした後、何かの星を自動で導入した後、ポーラーアライメントを選ぶと、鏡筒が「極軸が正しければ向いているはずの角度」に動くので、そこでコントローラの操作ではなく架台の極軸調整のツマミを動かして架台の向きを合わせると、極軸が正確に合っているはず、ということ。

これを確認のために、北極星が見えるところで試してみたのが、これまでのところでは、

・極軸望遠鏡で正確に北極星を入れた後、普通にアライメントをした後、ポーラーアライメントをすると、マウントの向きを合わせよと言われるところで最初からズレは全くなかった。当然か。

・極軸は正確でないままアライメント後、ポーラーアライメントをしてマウントを調整してから、極軸望遠鏡を覗いてみると、全然合っていなかった。これじゃダメではないか。最初のアライメントで精度が出ていなかったのか、架台の水平は正確には確認していなかったが、正確でないといけないのか。

といったところ。まだもう少し色々やってみないといけなさそう。

もっと簡便には、他所のどこかのblogで読んだのだが、惑星アライメントやOne-Starアライメントで合わせる際に、最初に自動的にその星の方向に向いたところで、実際の星とのズレを、コントローラで合わせるのではなくマウントの極軸調整ツマミで合わせてやれば、極軸が正しく合っている状態に近づくはず、というもの。最初のインデックスの位置が正確でないとうまくいかない気もするが、確かにコントローラでズレを合わせただけよりは追尾ズレが少なくなるような気もする。

また、最近は電視極軸望遠鏡といった製品もあるようだが、惑星撮影ではなく電視観望に使ったSharpCapには、極軸合わせの機能もあるようなので、せっかく惑星用カメラがあるのだから、それも試してみたい気がするが、適当な焦点距離の対物レンズをつけないといけなさそう。同じく惑星用カメラを使ったガイド撮影用の鏡筒などもあるので、そういうのを使えばいいのか。

クランプ

赤緯軸のクランプレバーが、鏡筒の方向によって、モーターケースがでっぱっている付近に来ると、しっかり締めた状態では、レバーとモーターケースの隙間がなくて指が入らず、とてもクランプが緩めにくくなってしまう。コントローラを使って別の場所に回転させてからクランプを緩めればいいのだが、それでは本末転倒だ。

クランプ
元のクランプを締めた状態

クランプレバーのネジを緩めて外してみると、中の軸は写真のような四角形で、90°ごとにしか向きを変えられないのかと思ったが、レバーの裏側は細かくミゾが切ってあって、18°ごとに向きが変えられる模様。

クランプ クランプ
クランプレバーを外した状態と、外したレバーの裏側

一段ズラして止め直すと、ちょうど指が入るようになって使いやすくなった。緩めた側は、レバーのでっぱりが本体の盛り上がったところに当たって止まるようになっているので、同じところまでしか動かない。結果、レバーの動く範囲が狭くなったことになるが、緩めた方はそこまでいくまでに十分緩んでいるので、まあ問題ない。

クランプ クランプ
調整後のクランプを締めた状態と、緩めきった状態 (調整前後同じ)

三脚

三脚の真ん中の赤道儀の取り付け用兼アイピーストレイ固定用のシャフトが、赤道儀を取り外した後は外れないようにひっかかってはいるが固定はされていないので、ぶらぶらしてしまう。三脚を畳んで運ぶときに、これが揺れて三脚のパイプに当たって、カランカランと大きな音を立ててしまう。片付けるときに100円ショップのマジックテープのベルトで三脚の脚の1本に縛りつけて音が出ないようにすることにした。

PowerTank Lithium

赤道儀本体の話ではないがついでなので。PowerTank Lithiumの蓋の部分が、元から妙なつくりだなとは思いながらも厚い軟質プラスチック製の蓋をめくりあげるようにして使っていたが、根本の方の蓋をつなぎとめている細い部分が、2本あるうち片方はすでにちぎれていて、もう一方もちぎれる寸前だ。ここを引きちぎるような力をかけないと蓋は開けられないつくりになっている。細い部分がもっと長くて、蓋が完全に本体から外れてぶらんとした状態になるのならともかく、そうでもなく、一体どうしてこんなつくりなのかよくわからない。そのうち残っている方もちぎれてしまうのは必至のように思えるが、蓋自身は本体上部に結構きつめにはまるので、まあそのまま使っていてもそれほど不都合はないかもしれないが。

PowerTank Professional

  1. #1 投稿者: 木戸 潮 (2018年10月27日 - 12:45)

    Erlangさん、お久し振りです。
    自分は2014年春にカラダ的に天体観測できない状態になってラジオの方の趣味に戻って
    きました。
    Erlangさんの記事拝見させて頂きますとタワマンベランダからAVX写真撮影とのこと。
    羨ましい限りですね。惑星も星雲も画像処理上達されているようでこれからも楽しみです。

    • #2 投稿者: Erlang (2018年10月28日 - 02:31)

      ukiddさん、ずいぶんお久しぶりです! お元気ですか? というのもなんですが、お体大丈夫でしょうか。天体観測できない状態ということで残念です。でも、ラジオの方でお楽しみのようでよかったです。
      ukiddさんはNexStarからすぐにAVXにグレードアップされましたが、私の方はあれから5年も経ってやっと同じAVXになりました。まだほとんど火星を撮るのにしか使ってないので、星雲撮影とかの方はまだまだですね。
      タワマンは私のベランダから見た風景に近所のタワマンはよく登場しますが、うちのマンション自身は特に高層なマンションではないです (笑
      これから、ぼちぼち色々なものの撮影にもチャレジしてみたいと思います。これからだと、まずビルタネン彗星を捉えないといけませんね。こんなに長い焦点距離じゃ視野に入り切らないようになってもらいたいものです。

  1. AVX赤道儀の基準星の選択 | 世事不可强求
  2. 2019年の当blogアクセスランキング | 世事不可强求
  3. 2020年の当blogアクセスランキング | 世事不可强求
  4. 2021年の当blogアクセスランキング | 世事不可强求

コメントを残す